19) 竹林の賢者達 | BIG BLUE SKY -around the world-

19) 竹林の賢者達

19) 竹林の賢者達  Sages of the Bamboo Grove

風を受けて竹林が騒めく音を聞きながら、お婆さんのマッサージを受ける。
タイの街ならばどこでも、近所の路地にマッサージ師が住んでいる。
お婆さんは、私がここの家族と同じものを食べて、リラックスしている様子を見ていたく感心していた。
私の娘婿は某国人なのだが、手料理を食べることはなく、一緒に団欒の時を過ごすこともない。
おそらく不衛生だと思っている。
それにひきかえ、あなたは素晴しい。
娘婿が日本人ならばよかったのに。

Erika が苦笑する。
日本で 15年以上過ごして母国へ帰った後、周りが不衛生に感じられて仕方がなかった。
慣れるまではトイレットペーパーを使って、周囲の人を不思議がらせた。
そんな Erika は、殆どの日本人はお婆さんの娘婿と同じようなものだと知っている。
先程の食事は食べられず、トイレや風呂も使えず、ここで居心地の良さを感じることはない。
私も苦笑を返す。


BIG BLUE SKY -around the world--1901_竹林の家
[食器置き場,ヤソートーン] (2012)


竹の敷物を載せた縁台、足元を流れる下水に揺れる極彩色の藻、鶏と犬の糞尿の臭い.....
時折立つ蚊柱、外と内の境が曖昧な建屋、油膜の浮いた飲料水.....
床一面がびっしょりと濡れたトイレを除けば、毎年夏休みを過ごした祖父母の家とそうは変わらない。
環境への適応力は、幼少期に養われたと思う。
お婆さんが婿に来ないかと聞くと、私が答える前に Erika が駄目よと答える。

竹を割る音が聞こえて来た。
竹を割る叔父さん、縁台に腰掛けた叔母さん、従弟と従妹、マッサージのお婆さん、Erika、そして自分.....
お婆さんと一緒に煙草を吸いながら、みんなで七人かと数えて、竹林の七賢を説明するのは難しいと思う。
何を考えているの?
お婆さんと叔母さんと Erika は、見透かしたように笑った。


⇒§20) 母の赦し 路地の見送り


< to INDEX >

 [#0519]