1985年WEC-JAPANについて語る | ヴェルディの星

1985年WEC-JAPANについて語る

明日からいよいよ富士スピードウェイでWEC(世界耐久選手権)開催です。正直F1より楽しみ。

日本人のいなかったF1日本GPと異なり、今回のWEC富士では8人も日本人選手が出場します。

昨年優勝した中嶋一貴(トヨタ)、昨年日本GPで3位表彰台の小林可夢偉、日本で唯一世界3大レース(モナコGP、インディ500、ル・マン24時間)出場経験のある中野信治、唯一の女性ドライバー井原慶子、国内でSGTで日産GT-Rを駆る縁かLMP2クラスで日産エンジン搭載車に乗る松田次生…。トヨタも2台体制で地元必勝態勢で、アウディ対トヨタの対決とF1より見所が多そうです。


9回目となるWEC富士。その歴史の中で私が一番印象に残ってる1985年、日産/星野一義が優勝した大会について語りたいと思います。当時高校3年生。


当時はF1は日本開催も無く、日本のモタスポはマイナーな世界でした。海外ではホンダF1エンジンが勝ちだしたり、セリカがサファリラリー3連覇とそれなりに活躍してたのですが…。

こんなモタスポマイナー時代の日本を支えたのが富士スピードウェイで1982年から開催が始まったWEC-JAPAN(今はこう言わないんだな)。毎年多くのファンを集め、テレビでも地上波ナマ中継が行われていました。このレースのために、オイルショック(1973年)以来モータースポーツから手を引いていたトヨタ・日産もサーキットに帰って来ます。しかしポルシェを破った1960年代に比べると成績は芳しくなく、ポルシェにまったく歯が立ちませんでした。


1984年の第3回大会でも日産は惨敗。ポルシェに負けるのはしょうがないとして、トヨタにも後塵を排します。この模様をテレビ中継で見てた日産自動車の副社長は激怒。このレースの翌日に創立された日産のモータースポーツ子会社ニッサン・モータスポーツ・インターナショナル(ニスモ)の社長に就任する難波靖治に「来年は勝て」と厳命します。


と言われても、いきなり勝てる目途などまるでありません。丁度そのころ、アメリカで行われていたIMSA-GTP(WECによく似たカテゴリー)にエレクトラモーティブと言うチームが、当時フェアレディZに搭載されていたV型6気筒ターボエンジンを使って参戦する計画があるので、日本本国でも使わないかと言う打診がありました。紆余曲折はあったものの、ニスモはこのエンジンを「逆輸入」することを決定。打倒ポルシェを目指します。


翌1985年、アメリカのリバーサイドでシェイクダウン。日産Cカーと言っても、車体は英国のマーチ製だったのですが…。このテストに参加した星野一義は「打倒ポルシェ」に手応えを感じます。

デビュー戦は7月の富士500マイル。予選3位も決勝はリタイヤ。2戦目の8月鈴鹿1000kmでは予選でポールポジション獲得し、序盤を独走します。WECに向けて大きな手応えを掴んでいました。


そして迎えたのが第4回となる1985年WEC-JAPAN。予選初日(当時は金曜、土曜と2回に分けて行われていた)、日産は星野・長谷見で1-2体制をゲット。もはや「指定席」と思われていたワークスロスマンズポルシェを出し抜き慌てさせます。翌日の天気予報は雨。第4回目にしてついに日本車がポールポジションを獲得するのか?このニュースを聞き私もテレビの前でガッツポーズ。そして雨乞いを始めますw

しかし残念ながら雨乞いは通じず、土曜日は曇り。「本気」を出したワークスポルシェに逆転されます。しかしポルシェに「本気」を出させた時点で日産はこの年前年の借りを少しは返したと言えたでしょう。


翌決勝日は朝から雨。土曜日に降ってくれればなあ…、って思ってました。スタートも遅れに遅れ、テレビ中継に合わせ4時間遅れで2時間レースに短縮されようやくスタート。しかし海外勢はスタートと同時にピットインし撤退してしまいます。普段より高いチケット買って見に行ったファンの心境はいかに(私は高校生だったのでテレビ観戦)。

そんな中星野のシルビアターボCニチラはパワーボートのように水煙をあげ独走します。

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途中ピットインしますが、2時間レースに短縮が決定されていたので、交代ドライバーの松本恵二、萩原光に交代せず最後まで星野が走りきります。

そしてチェッカー。海外勢の撤退、2時間レースに短縮と変則レースであったものの、4回目にしてついにWEC-JAPANで日本車/日本人が優勝したのです。私もこんな感動したことないと思うくらい、テレビの前で絶叫しました。1年前のあの惨敗から…。「スクールウォーズ」風に言えば「一年目の奇跡」です。

星野は日本人初の世界選手権ウィナーになったのです。


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このレースの勝利により翌1986年から日産/ニスモのル・マン挑戦が始まります。しかし1998年の3位が最高位で未だ優勝はありませんが…。

昨年の富士、トヨタ/中嶋一貴がドライコンディション・フルディスタンスで優勝しています。日産にも今度はドライでフルディスタンスで、更に言えば日本人ドライバーで実現して欲しいのですが、日産は現在はワークス参戦しておらず…。2015年からワークス復帰の噂もありますが…。


9回目のWEC富士、今年はどんなドラマを見せてくれるのでしょう?

あ、そうそう、このレースの後、星野/日産の優勝を特集した「オートスポーツ」誌を買ったのですが、それ以来28年1号も欠かさず「オートスポーツ」買い続けてます。私のこと表彰してくれてもいいんじゃない?三栄書房さん?