フラワーアーティストの村井千明さんの個展『いける』のためアユミギャラリーに足を運ぶ。この個性的な、特別な時間流れるギャラリーでは、空間や余白、壁がつくる目隠しが、村井氏の生ける花々の、小さく、あるいはささやかな「命」を、最大化していく―。素敵なDMを手掛けた相澤竹氏んによる花器も、会場や花とマッチしていてとても素晴らしい。壁をのたくる花器などは、花を追う蟲のようであり、品のよいエロスを感じるほどだ。
 そうか…村井氏が個展タイトルに込めた想いとは、ただ、花を生ける、ではなく、「生きとし生ける」小さな命の生存表明、命の賛歌であったか…。

 写真は、アンティークに生けられた花。無機物に生けられた花が醸すのは、静かな、異端の美。「死んだ」「西洋の」器物に、まだ命ある花が居場所を得たとき、ああ、なるほど。この両者セットではじめて「活け花」、それも単に「生け花」でなしに、活かし合い、両者一体で主張する命をしばしとどめるところに、その命の素を送受する根や茎や幹から花を切り出してまで、活ける美があるのかもしれない、と、相変わらず理解も知識も足りないながら、そう感じたのである。(了)

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<アユミギャラリー>
162-0805 東京都新宿区矢来町114
■東京メトロ東西線「神楽坂」
 神楽坂口出て右、矢来口出て左それぞれ徒歩1分
■都営大江戸線「牛込神楽坂」
 A3出口出て右 交差点左折 徒歩10分
■JR総武線「飯田橋」西口出て右 徒歩15分、
 地下鉄「飯田橋」B3出口出て右 徒歩15分