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100%ムックシリーズ『家電名機カタログ―古今東西の傑作家電を完全網羅 』(晋遊舎)

 家電。もちろん今でも使われる言葉だが、なぜか懐かしい響きがある。どこか、日常がいきなりまばゆくなるような、未来への希望を喚起する、明るくて郷愁ある不思議な言葉。
家電に特別の関心があるわけではなかったが、家電を通じて時代の変遷を追いかけていく本書の企画は面白く、立ち読みしてすぐにレジに走ってしまった。
 と同時に、名機として選出されている家電の数々は、ヴィジュアル面でも懐かしくインパクトがあり、そしてやはり、それぞれのアイテムに自分の人生を重ねてしまうのである。ファミコン、ウォークマン、ゲームボーイ、iPod…。挙げていけばキリがない。あるモノは、少年だった私が、大人が持っているのを憧れのまなざしで眺め、あるモノは友達と一緒になって熱狂し、あるモノには新しい家電のあり方を感じたりした。私自身の成長の節目に、私の感性や生活に飛び込んできた家電の数々は、様々な記憶-抽象的な記憶だけでなく、それらを使った身体的記憶まで-を呼び起こしてくれるのである。家電から自分史を眺めるのもまた、興がある。
 ピックアップされた家電のラインナップには、おそらく誰も異論はないだろう。きちんとした硬質な編集・企画方針の下に挙げられた名機の数々は、読者を頷かせてくれる。また、“隠れた名機”、“知る人ぞ知る名機”も多数取り上げられ、過去との新鮮な遭遇も味わえる。
大手家電メーカーの盛衰および傾向変化の分析も、若干の偏りは見られるものの、論調は概ね公平で、クロニクル的な資料としての価値もある。
 改めて、登場当時に名機だったものは、価値としては、いまだに現役で名機なのだ、と感心させられた一冊であった。(了)


家電名機カタログ

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの? 意味を探る旅』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。

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