エレニの帰郷 | Untitled



エレニの帰郷(’08)希ドイツ国旗カナダロシア国旗

監督:テオ・アンゲロプロス


ギリシャのことわざで「子供が寝つかないで困るときはアンゲロプロスを見せろ」

といわれるほど、芸術性の高さゆえに眠くなる映画を作るテオ・アンゲロプロス。

私も、唯一観た 『永遠と一日』 も132分が永遠に思えるほど長く眠かった記憶が・・・・

ただ、イレーヌ・ジャコブの数少ない出演作だし・・・・ takacyのことわざで

「1作観ただけでその監督を評価するな」 という言葉があるので(笑) よし観よう!



1999年、ギリシャにルーツを持つ映画監督A(ウィレム・デフォー)が

母エレニ(イレーヌ・ジャコブ)と彼女を思い続けた男ヤコブ(ブルーノ・ガンツ)

そしてエレニが愛したスピロス(ミシェル・ピコリ)の男女3人の映画を制作していた。

1953年、トシケントで再会したエレニとスピロスは

ソ連当局に捕らえられ、再び離れ離れになってしまうが

その時、エレニはスピロスとの子どもを宿していた。

エレニはシベリアの牢獄に抑留されるが、そこへヤコブも送られてくる。



スターリンが死去し、群衆がぞろぞろとスターリン像の前に集まる。

カメラがゆっくりと引いてスターリン像の前に立ち尽くす群衆の全体像を捉えると

高官らしき人物が、哀悼の意を表する。それが終わると群衆はばらけて去っていく。

残ったのは、雪景色とスターリン像。 このシーンだけでも観た甲斐がある。

シベリアでジグザグ階段をに上っていく群衆も、幾何学的な画でありながら

抑留されている人たちの悲哀みたいなものを感じさせる。

破壊されたテレビが無数に散在する部屋に描かれた“第三の翼”に手を伸ばす天使

パイプオルガンが美しく流れる廃墟などなど、はっと息を呑んでしまうシーンばかり。

どう見てもイレーヌ・ジャコブとウィレム・デフォーが親子に見えない

なんていう致命的なキャスティングなんて、この際どうでもいい(笑)

髪の毛真っ白にして老け役を演じたイレーヌは、それでも若々しく美しい。



スターリンの死去、ウォーターゲート事件、ベトナム戦争、ベルリンの壁崩壊

激動の20世紀に翻弄された男女の姿を、時代を交錯させながら描く手法は

ギリシャの子供を寝かしつけるには、もってこいの難解さですが(笑)

ワンシーンの中で、時代と場所が一瞬で移り変わってしまう演出は鳥肌モノ。

『永遠と一日』 を観た後、相当参ってしまったのか

“私が人生経験を積んで、改めて彼の作品を観てみたいか?” 

“と聞かれたら・・・・できれば遠慮したい。” とまで書いていた当時の私

遠慮なんかするもんじゃありませんっ(笑)

1作観ただけで放置してしまっている監督さんがいらしたら

2作目は、人生がひっくり返るぐらいの傑作かもしれない。





2012年、不慮の事故で突然世を去った世界的な巨匠テオ・アンゲロプロスの遺作となった作品。
20世紀末。映画監督“A”は、ある理由により中断していた撮影を再開しようとしていた。
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