イーダ | Untitled



イーダ(’13)ポーランドデンマーク国旗


監督:パベウ・パブリコフスキ


ファースト・ショットだけで、あっ、この映画は間違いないっ!!

っていう確信めいたものを感じたのですが、間違いなく間違いなかった(笑)

すべてのショットが計算された構図で、パーフェクトすぎる美しい映画でした。



’60年代初頭のポーランド。

孤児として修道院で育った少女アンナ(アガタ・チュシェブホフスカ)は

初めて会った叔母ヴァンダ(アガタ・クレシャ)から自分の本当の名前が

“イーダ・ベルシュタイン” であること

そして、ユダヤ人であることを明かされる。

両親はなぜ自分を捨てたのか、自身の出生の秘密を知るため

イーダは、叔母ヴァンダとともに旅に出る・・・・・・。



カール・Th・ドライヤー
のように、硬質的でヒンヤリしていて

ロベール・ブレッソン
のように、無駄な部分を削ぎ落とした禁欲的な描写で

小津安二郎のように、登場人物が不在の光景を捉えた“空ショット”を見せ

ベッド・シーンでイーダを捉えるショットは明らかにゴダール『恋人のいる時間』

そして、イェジー・カヴァレロヴィチの 『尼僧ヨアンナ』 を想起させる

十字架型に寝そべる修道女たちのシーンに象徴されるように

アンジェイ・ワイダ
などの “ポーランド派” にオマージュを捧げた映像。

ほんと、すべてのショットが美しすぎたのですが

1番好きなのは、悲しみに暮れて泥酔した叔母がベッドに倒れこみ

イーダが毛布をそっとかけてあげるのですが、イーダの姿は画面の外

毛布を持った腕が伸びると、白い壁にイーダの影が映り

画面の上から、イーダの首にかかったペンダントがぷら~んとぶら下がる。

もう、完璧! パーフェクト!(同じか。笑)



何より特徴的なのは、ほとんどのショットが人物を画面の中央に据えてない。

人物を敢えて画面の端っこや角に追いやり、空虚のような大きな余白を生み出す。

もしくは、スクリーンの大部分が物体に覆われ、その小さな隙間に

人目をはばかるように、こっそり人物の姿を覗かせる。

これって、大島 渚とともに “松竹ヌーヴェルヴァーグ” の旗手と呼ばれた

『告白的女優論』
 『エロス+虐殺』 などの吉田喜重の得意技なんですね。 

このポーランドの新鋭は、’60年代を舞台にした映画の中で

’60年代に活躍したマエストロたちへの愛情を隠しきれずにいるんです。

私もこの映画への愛情を隠しきれずにいます(笑)

“聖女とアバズレ女” “教会と俗世” “カトリックとユダヤ人” 

“戦前と戦後” “クラシックとモダン・ジャズ” “光と影”

そんな対極にあるものを映し出しながら

イーダは少女から大人へと成長していく・・・・・・。

イーダ役のアガタ・チュシェブホフスカが、ほんと可愛かった。



アカデミー賞外国語映画賞受賞作



1960年代初頭のポーランド、孤児として修道院で育てられた少女アンナはある日叔母の存在を知らされる・・・
ホロコーストの悲劇、共産主義の抑圧といった歴史の波に翻弄された戦後ポーランドの光と影をリリカルなタッチで描く。
イーダ DVD/アガタ・チュシェブホフスカ,アガタ・クレシャ,ダヴィド・オグロドニク

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