あるじ(’25)
原作:スヴェン・リンドムの戯曲「暴君の失墜」
監督:カール・Th・ドライヤー
ドライヤーといえば、前衛的なイメージが強いですが
「あるじ」は、市井の人々の慎ましい日常生活をきめ細やかに描いた作品です。
コペンハーゲンのアパートに暮らすフランセン一家。
妻のイダ(アストリズ・ホルム)は一日中働きづめである。
失業中の夫ヴィクトル(ヨハネス・マイヤー)は何かにつけて妻に不平不満をこぼしている。
暴君のように振舞うヴィクトルの姿を目の当たりにした、かつてはヴィクトルの乳母であった
マッス婆さん(マチルド・ニールセン)が、ヴィクトルを戒めようとする・・・・。
何でも完璧なリアリズムを求めたドライヤーは、撮影所にアパートを建て
電気、ガス、水道まで引かせ、当時のコペンハーゲンの暮らしを再現したらしい。
また、そのアパート内の撮影で、カメラと被写体の距離を4m以上離さないという徹底ぶり。
前作 『ミカエル』 では、巨大な邸宅のロングショットを映し出して
そのスケールの大きさを、まざまざと見せつけられましたが、今回は、その真逆。
独善的で自分勝手な夫、優しく耐え忍ぶ妻、強情でぶっきらぼうな老女
といった三人の登場人物のキャラ設定もメリハリがあって
特に、婆さんのキャラは強烈で、暴君な夫を差し置いて暴れだす勢いで(笑)
今作は、日本に初めて紹介されたドライヤー作品だそうで
のちの 「ホームドラマ」「小市民映画」 の原点になったのでは・・・・
とも言われているそうです。 小津さんもインスパイヤされたか。
カール・Th・ドライヤー監督作品
家族の日常の心理的葛藤をきめ細やかに描きリアリズムの本質を確立させ、ドライヤーの名前を国際的に知らしめた作品
カール・Th・ドライヤー コレクション/ クリティカル・エディション あるじ [DVD]/ヨハンネス・マイヤー,アストリズ・ホルム,カーリン・ネレモーセ
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