こんばんは。児島でございます。


日中はかなり暖かいサリプルです。

日差しは暑いくらいです。


サリプル事務所の建物の全景を御紹介します。


                     PWJオフィス 南からみたところ。



マッチ箱を寄せ集めたような、

こじんまりした四角ばったオフィスです。

この中で、メインスタッフ6人が仕事をし、飯を食べ、寝ています。


2002年にUNHCRと国内避難民キャンプを運営していたときや、

日本政府の資金で貯水槽建設、井戸掘削などを行っていた頃は

もっとたくさんの人間がこのマッチ箱の中で仕事をしてました。

まさに人口過密状態です。

紅一点の日本人女性スタッフである山元さんと、

(私も含めて)ひげ面のおっさんどもが

顔を突き合わせながら

ここで、事業案や工程を練ったり、

報告を聞いて議論したり、調査の準備をしたり、

冗談を言い合ったり、喧々諤々怒鳴りあったりしています。

オフィス、とは言いますが、実態は、

たとえば”部活の合宿所”と言えば、

イメージが近いと思います。


オフィスの外見は、

綺麗に整った四角に見えますが、

実は、かなりゆがんでおり、

そのゆがみは、雨季と乾季で季節変化します。

ドアが閉まる時期と閉まらない時期があります。

そして、全体的に”泥”で出来ているのです。


まず
壁面は

焼きレンガ(泥をこねて焼いたもの)を漆喰で積み重ねただけの壁であり、

壁は厚さ40cmくらいです。

建てた時期から察するに、

コンクリを用いているのは角だけだと思われます。

(鉄筋を使っているかは不明)


次に

屋根は

ギンドロというポプラの仲間の材木(材木は非常に貴重です)を横に渡した上に、

泥とわらをこねたもので葺かれております。

雨漏りを軽減するために、

泥は2層に分かれていてその間にビニールシートをサンドイッチしてあります。

屋根の泥の厚さは20cmぐらいでしょうか。

毎年か隔年で葺き替えますが、

それでも雨漏りがひどく、

雨季は、気をつけないと貴重な書類や機器が水浸しになります。


これは、この付近の標準的な建築です。

泥で出来ている、といいましたことがよくわかっていただけると思います。


山間村落にいくと、

構造は同じですが

レンガが日干し煉瓦だったり、

壁面に塗装が無くて泥壁がむき出しだったり、

屋根にビニルシートをサンドイッチしてなかったりなど

さらに簡素な構造になります(下の写真)。


山間部家屋2
      山間部の家屋 その1   むき出しの泥壁の四角い家が集まっている。





           山間部の家屋 その2    屋根の構造がよくわかる。


PWJオフィスの写真の壁には、行く筋も黄土色の線がありますが、

あれは雨季に溶け出した屋根の成分のつたった跡です。


住み心地は、といいますと、

分厚い泥とレンガで包まれていますから、

その体積と、比熱が高いという物性により、

日中40℃を越えることもある乾季には、熱が内部にこもり、暑くて仕事になりません。

そんなときは、

「なぜもっと熱が逃げやすい構造にしないのか」と

苛立ちを覚えますが、

先月のようにマイナス20℃を下回るような冬には

(もちろん、今年はかなり異常でしたが)

一度ストーブで暖めた部屋の気温が下がりにくいことが有難く、

改めて、この伝統的構造の正しさを認識します。

有り余る泥、少ない木材、などという物質的な条件からも、

少なくとも冬の厳しいアフガニスタン北部には

最適な構造なのだと思います。


写真右側の、屋根の上に立っているポールが

無線用アンテナです。

ピース ウィンズ・ジャパンで使用している各車両が現場に出ているときの

通信のために非常に重要です。

治安が不安定な現場では、移動の際には逐一連絡をとりあい、

安全情報をシェアしながら活動しています。


写真左側の屋根の上のパラボラアンテナは

首都カブールに本社のあるインターネットサービス会社と契約をして設置しました。

サリプルのような田舎には不釣合いですが、

このおかげで、

治安を担当する機関からメールベースで配信される治安情報を

オンタイムに受け取ることができるので、日々の業務調整に欠かせません。

もちろん、現地情報の連絡や、報告書の提出など東京本部との業務連絡にも欠かせません。


写真右側のパラボラアンテナは

衛星テレビ用アンテナです。

主にBBCなどを見て、大きな世の中の動きをキャッチしたり、

先進国の立場から見たアフガニスタンの動静を知ったりします。


このほかに

現地アフガニスタンスタッフがお金を出して繋げたケーブルテレビがあります。

もちろん、これは、彼らが夕食後などに娯楽として地元のテレビを観るためですが、

同時に、現地のニュースを得るには欠かせない情報源となっています。

大きなテロ事件のニュースでも、テレビが一番早い場合があります。

アフガニスタンには、現在私が知っているだけで11局のテレビ放送局があり、

特に、ToloとArianaというチャンネルは、

国営ではありませんがステータスがあり、

抱えている情報ソースも多いように考えられていて

現地スタッフは一番信用しているようです。


PWJオフィス横

                 PWJオフィス 東から。



以上でおわかりのように

無線機、インターネット、テレビというメディアは

治安に関する動静や知見を得るために非常に重要です。


*  *  *


治安について述べますと、

特に現在のアフガニスタンでは

日本のニュースでも度々取り上げられていますとおり

タリバンが再び活発な活動をし初めています。


私たちは、

治安に関する動静については

上記メディアからとるだけでは勿論なく、

常に、

事業を実施している村やサリプル近郊の人々、

現地警察、

現地で活動するNGO、

国連の治安関連の職員の人たち、

サリプルに駐屯するPRT(治安維持軍のうち地域復興を担うチーム)の人たち

などと相互に知見を交換し合いながら

より正確な判断を目指しています。


まさに、

”アンテナ”

を張り巡らせて

動静を掴もうとしています。


実は

現地業務のなかで一番時間を割いているのが

治安対策です。


治安対策には、100%というのがありえません。


すなわち、


オンタイムで得られる情報にはきりがありませんし、

どこまでが噂で、どこまでが本当なのかはわかりませんし、

(新鮮な生の情報ほど、不明瞭になるものです)

それまでの情報の履歴は予想するときに重要になりますし、

また、それらを見渡して判断するするときのシナリオは、幾通りも考えられますし、

そしてその判断を実際の活動に落とし込むときには

更に幾通りもの方法を考えなくてはなりません。


たとえば、


「**日に、++村に行って業務をしなければならない」


という場合は、


「どの車両がどんな調子でどれを動かすのが適当か、

どの道をどの時間帯に動かすか、

ある道を通る場合は、以前事件があった÷÷村を通ることになるが最近はどんな様子か、

++村は、隣の州との境に位置するが、隣の州では最近大きな事件があったがその影響はないのか、

移動中と業務中のサリプル事務所との連絡はいつどこからどのようにとるか、

++村について、最も直近の治安情報は誰に聞くべきか、誰の情報がどれくらい信用できるか、

もし危険であると考えられるのであれば、**日という予定を延期できないか・・・」


というようなことを配慮することになります。


我々の活動範囲は、

日本の北上川の流域面積とほぼ同じくらいなので

(場所によっては、スタッフみんなで馬に乗って移動するところもあるのです、

狼が出没するところもあります)

得るべき知見の範囲も量も結構広く大きいことがわかって頂けるかと思います。


治安対策は本当に難しいです。


小生が今とっている治安対策が万全だとは思いません。

常に不安の残るものです。


このように考えてくると、

アフガニスタンでの活動を支えているものは、


(それは、

ピース ウィンズ・ジャパンのアフガニスタン事業活動だけを意味しているのではなく、

広く、アフガニスタンで活動する組織や機関、

たとえば日本のNGOで言うなら、

JENさんやAARさん、JMASさんなど

ガッツ溢れる皆さんの活動を支えているものは、ということですが)


それは

やはり、現地に根ざした活動で得られる能力ではないか??と思います。


ここで述べたように、
たとえば治安に関していうなら、

安全な仕事をするためにも、

やはり、地元にしっかり根付いて

試行錯誤を繰り返して蓄積した知見が無ければ

長期的な視点で考える”質の高い仕事”は出来ないのではないかと思います。


UNや先進各国のドナーがいくら大きなお金を投資しても

それを如何に質の高い事業に落とし込み、

しかもコストを抑えて、

でも治安には出来るだけ気をつけて

うまく活用するには

現地の地勢や動向に広く知見をもった組織や機関が必要です。


特に現地政府や現地機関が機能していない場所では

第三者としての海外NGOの存在は重要です。

そしてそういう場所は、世界にまだまだあると思います。


欧米には巨大なNGOが存在し、

現場で見ていると

事業内容だけでなく治安対策も含めて

各国政府の機関がなかなか入れない第一線や

質の高い支援が行き届きにくいところで

本当に良い仕事をしている団体があります。


日本も今後

更に意義のある国際支援をしていくためには

組織力のある大きなNGOが日本にも育っていけばなあ、

と思います。


そのためには、

現地に出張って活動し、

毎日の業務の中での知見を時間をかけて積み重ねることが必要だと思います。

それが時間が経って熟成し、

職員個人という人材を育て、

それが結果的に組織としての強化につながり、

長期的にはNGOを質の高いものにし、

ひいては

日本の国際支援を、より凄味のあるものにできると思います。


”外務省と

JICAとJBICと(これは統合されますけども)

日本のNGOとが

それぞれのスキルを洗練させて

それぞれの特色を活かしたフィールディング・ポジショニングをしながら

チームとして

いわば、オールジャパンで

日本らしい堅実な支援をする”、


そんな妄想をします。



児島