東芝ミニライトキットの修理

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今回のメンテ対象物品はいよいよもって音と関係ない品で、東芝ライテックの撮影用ミニライトキットAL-KLM2です。昔、放送中継の照明は更に強力なHMIが主流で、ミニライトは小規模ロケやブツ撮りでのみ使っていました。私にとっては放送局のアルバイト時代を思い出す、ちょっと懐かしい品です。当時はあまり高価な備品だという認識が無かったのですが、今回調べてみるとそれでも17、8万円位はしていたようですね。
AL-KLM2 ケース外観
300Wのハロゲン電球を使った照明灯体とスタンド、電源コードの3台分がケースにまとめられたセットです。
AL-KLM2 ケース内部
最近では蛍光灯やLEDの照明に押されて、色温度が低く、熱くてランニングコストが高いハロゲン電球のミニライトは、あまり使われなくなっていると聞きます。

【メンテ前の状況まとめ】
(1)3つある灯体のうちの1台で、バンドアと灯体に固定される金属メッシュ部を接続するクリップ状の金具4個が欠品していてバンドアを固定できない。
AL-KLM2 バンドア金具欠品

(2)3つあるスタンドのうちの1本で、下から1段目のロック用ネジの樹脂製リング(最もパイプ径が太い部分のリング)が割れていて、固定できない。
AL-KLM2 スタンドのリング欠品
AL-KLM2 スタンドのリング破損

【部品の入手】
調べてみたところ、現在では旧龍電社(RDS)の流れをくむ東芝ライテックの舞台照明部門の保守サービスは、東芝エルティーエンジニアリング株式会社という会社が行っているそうです。今回の修理対象であるミニライトキット(AL-KLM2)は、後継品のAL-KLM3の生産完了が2011年8月になっていますから、生産完了から5年ほど経過していることになります。まずは部品の入手ができるかどうかメールで問い合わせてみました。すると、すぐに回答があって、下記のとおり部品の在庫が確認できました。

(1)バンドアと灯体に固定される金属メッシュ部を接続するクリップ状の金具4個
商品コード:54825032
商品名:ミニフォーカシングライトバンドア回転バネ ※4個1セット
希望小売価格:1,200円(税抜)

(2)スタンド下から1段目のロック用ネジの樹脂製リング
商品コード:54829537
商品名:スタンド4段目金具(MS-4)
※一番先端のダボ部分から数えて4段目の為、この名称となっているそうです。
希望小売価格:1,900円(税抜)


部品の入手については取扱店を介すか、代引き着払で直接取り寄せるかが可能という事で、直接送ってもらうことにしました。注文から2日ほどで部品が到着しました。
AL-KLM2 到着した部品
バンドア回転バネ
AL-KLM2 バンドア開転バネ
実はこの直前に別の音響機器メーカーとミキサーの内部部品の入手について相談していたのですが、そちらは在庫はあるが一般向けに出荷はできないという回答で、残念ながら随分と対応の差を感じてしまいました。それだけに迅速かつ丁寧な対応をしていただけた東芝エルティーエンジニアリング様のイメージは大変良いものとなりました。

【実際の修理作業】
どちらも正常品を見ながら同じように取り付けるだけです。バンドア回転バネのほうはメッシュを外したほうが付けやすかった。
AL-KLM2 バンドア分解1
AL-KLM2 LQMF-2 正面

スタンドのほうは、4段目のリングを取り付けるために3段目のリングを取り外し、いったんパイプを引き抜く必要がありました。樹脂リングの取り付け取り外しには、矢印部分のイモネジをを回すために1.5mmの六角レンチが必要です。
AL-KLM2 スタンドリング固定ネジ

【替球について】
AL-KLM2 灯体背面
ミニライトキットの灯体AL-LQMF-2で使用する電球は、口金G5.3(ピン細-細)の500W以下のハロゲン電球で、東芝純正品
AL-JCD100V-300WLD
です。2016年7月現在で入手できる電球としては他に
AL-JCD100V-200WC
AL-JCD100V-500WLD
AL-JCD100V-500WIO

が使えるようです。値段は1個3,300~3,900円位です。

AL-KLM2 灯体2台
AL-KLM2 点灯状況

さて修理はできたものの、私の場合、撮影や照明が専門ではないので出番はあまり無いものと思います。当家では骨董品ものの龍電社のスタンド付き照明(口金R7s)を修理して使っていましたが、それよりはコンパクトでケースにまとまっているので、持ち出すには便利そうです。DJライブの舞台照明にでも使えるかな?

(がんくま)
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【部品の入手性】
1176はクローンや自作キットも含めるとかなりの台数が世の中に普及しており、かつプロアマ問わずあちこちのスタジオで現用されていますので、個人輸入さえ覚悟すれば部品の入手自体はそう難しくないようです。

Studio Electronics社のUREI Parts
http://www.studioelectronics.biz/sunshop/index.php?l=product_list&c=61

1176の自作記事 Gyraf Audio
http://www.gyraf.dk/
※DIY-projects以下に1176の製作ページがあり、回路図や部品リストなどがあります。

1176の自作キット Hairball Audio
http://umbrella-company.jp/contents/hairball-audio-1176/
http://www.hairballaudio.com/

1176自作キットの製作から調整まで(動画) Don Bonin
https://www.youtube.com/channel/UCz0UytjhfnNjv8noKq94LDA

1176自体がトランスを除けば基本的に汎用部品で出来上がっているので、廃番になるとすぐに入手が難しくなる部品(例えばカスタムICやBIOS-ROMなど)が無く、実際にMC76で使用されているトランジスタやFETは2016年6月現在、秋葉原の部品屋でも入手できます。

2N5088/2N3391A/2N3053/2N5457/1N4148/1N4740Aは桜屋電機千石電商秋月電子で入手可能
MC76:秋葉原で購入できた半導体

30V10Wのツェナーダイオード1N2989またはNTE5202Aがやや入手難ですが、純粋に定電圧電源として考えるなら、他にも色々と実現する方法はあるはずです。

1N2989 Zener Diode for UREI 1176LN Rev A-F & UA 1176LN. U2
https://www.studioelectronics.biz/sunshop/index.php?l=product_detail&p=4280

もちろん、音にもっとも影響しているのはトランスだと思いますが、トランスは部品としては壊れにくい部類ですから、1176とそのクローン達はまだまだ当分の間、保守を続けつつ運用可能と思われます。これからも世界中の音楽制作を支えてくれることでしょう。

【MC76の音は?】
まだ実戦の録音で使っていないので、実用的な意味でのS/Nとか何とも言えないのですが・・・というか、dbx162SLを買って以降、最近に至るまでムラサキノオトのサークル作品を一つも録ってませんね。せっかく良い機材が増えたのにすっかり宝の持ち腐れです(泣)。

個人的には本家の1176が、サクサクと圧縮がかかったり抜けたりするのに比べると、MC76はかかりかけや抜け方がねちっこいような気がします。あと音が少し上品かも?がっつり潰してもコンプ感の方向性が好ましいのは本家と同様。トランス搭載機なのでいわゆる「通すだけで音が変わる」機材なのも確かです。

MC76:修理完了

ところで修理屋視点としては、長年かかって劣化した部品を交換することによって音が変わる(新品の状態の音に近くなる)のは当たり前のことですが、ミュージシャンやスタジオエンジニア側の事情として「音は修理前と一切変わらないように修理してくれ」となると困ってしまいます。自分で所有している機材であれば、元の音を尊重しつつも、無理なものは無理、と、その辺を納得づくでいじれるので気が楽です。

(がんくま)
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【ガリ対策】
1号機、2号機ともにINPUTの2連ボリュームはどちらにもガリがあります。が、実用上はさほど致命的な問題にはなりません。この部分はオリジナルのRev.D/Eに準拠した600ΩのフローティングT型ブリッジ回路で、専用のアッテネーター部品が必要です。

New 600 ohm T-Bridge Input Pot for UA UREI 1176LN. U2
https://www.studioelectronics.biz/sunshop/index.php?l=product_detail&p=1151

1号機、2号機ともに上記のPEC製ではなく、ビンテージ1176と同じAB製のアッテネーターが付いていました。
MC76:アッテネーター
なんでもAB製アッテネーターの製造が中止された時にMC76の製造も中断され、互換品が作られるようになってからモディファイされて再発売したのがMC77だとか?ならば極力AB製を使い続けるのが王道ってもんですかねえ。今後もし我慢できないほどのガリになったら分解清掃してみるとしよう。隙間から接点復活剤を吹くのはグリスが流れるのでやめておきます。

2号機のATTACKのGR OFFスイッチの切り替えが時々上手くいかなかった問題は、何度か回してON/OFFを繰り返しているうちに症状が出なくなりました。
MC76:ATTACKとRELEASEのボリューム

それにしてもPurple Audio製品、ネジの緩み止めとか熱収縮チューブとか、外からは見えない内部もあちこち「紫色」になっています。
MC76:メーター&スイッチ部

MC76:トロイダルトランス

内部の基板はとてもゆったりとした配置でランドやパターンも大きく、半田割れや痩せなどの不良は一か所も無かった。
MC76:基板裏面

【ステレオリンク機能の修理】
MC76は背面に"Offset of FET Buss""Direct to FET Buss"という2つの1/4フォーンジャックがあります。2台のMC76をステレオでリンク動作させる場合は、片方の機のOffset of FET Bussから別機のDirect to FET BussへTSまたはTRSのケーブルでたすきに配線した後、無信号、GR OFF、メーターモード"GR"の状態で、フォーンジャック脇にあるGR "0" Trimの小穴から半固定抵抗(R1001)を回し、2台のMC76で、お互いに反対側に振り切れるメーターが両機とも"0"になるように調整することになっています。本家の1176で必要な外付けのSA(ステレオアダプター)が不要とはいえ、背面に回って視認性の悪いネジを回さねばならずかなり面倒です。一人でやる場合は後ろから前面のメーターを見るために鏡が必要になります。

1号機から2号機へオフセット電圧を送る場合は、このメーターの調整が上手くできてステレオリンクが機能したのですが、逆は動きませんでした。メーターが振りきったままで、どんなにR1001を回しても針はピクリとも動かず、マニュアルの説明に沿って極性反転(Battery Polarity)スイッチを切り替えてもダメです。R1001はBOURNS社のTrimpot 3006P 100kΩですが、どうも抵抗値が変わっていない疑いがあったので秋月電子で購入した同一部品に交換しました。Offset of FET Buss側のジャックの心線とグランドで電圧を測って、ネジを回しても電圧が変化しない場合は壊れている可能性が高いです。部品交換後に電圧を実測した所、1号機から2号機へは-1.923Vの時に、2号機から1号機へは-1.189Vの時にGR="0"となるとがわかりました。

ステレオリンク機能用にMC76の内部には単三乾電池が搭載されており、1号機にはEnergizerの、2号機にはDURACELLのアルカリ電池が搭載されていて、それぞれの負荷時電圧は1.17Vと1.21Vでした。しかしデュラセルとか懐かしいな。
MC76:デュラセルとか懐かしいな
これらの電池は2000年頃と推測される出荷時から、一度も交換されることなく付いていたものと推測されます。修理の過程で電池も疑ったので、どのみち交換なのですが、MC76のこの辺のスペース設計はあまり良いとは言えず、いまいち電池が付け外ししにくい位置にあります。電圧はそう簡単に下がらないと思うが、蓋を閉めてしまいますから数年で液漏れや粉吹きが発生すると困るので、長期保存がきくというパナソニックのFR6HJ単三型リチウム電池を使うことにしました。

ちなみに電池を入れ替えるとOffset of FET Bussの電圧が変動するので、電池交換後に再びR1001を回して調整をやり直す必要があります。さきほど電圧を実測していたので簡単に調整できました。動作確認後、中で外れて転がらないように電池をインシュロックで固定します。
MC76:リチウム電池に交換
電池の右上の青い部品がR1001。斜めについているのは、背面パネルの穴の位置が微妙にあっていないので斜めにしないとドライバーで回せないためです。

【個体差】
1号機と2号機の製造番号は、連番ではありませんが4つしか違いません。MC76としては初期のものだと思います。故障や不都合と言うわけではありませんが、この2台、良く見るとあちこちに個体差があります。

MC76:2号機と1号機

まずパネルの塗装。ネットで検索したMC76の写真を見ていても、複数台映っている写真では色が微妙に異なってないか?と思っていましたが、実際に1号機は鯖肌とは言わないがやや艶消しっぽい塗装、2号機は水平方向に光沢のあるヘアラインです。製造後の年月で退色変色した、では説明がつかない気がします。

何故か1号機と2号機で天板・床板を止めているネジが違います。1号機がマイナスの角ネジで2号機はプラスの鍋ネジ。過去の修理の時に入れ替わったのでしょうか?それはそうとこのネジ、インチの短いタッピングで、かなり付け外ししにくいです。

内部の配線材にCOMPUTER用と印字された線材が使われています。
MC76:COMPUTER CABLE
電気的に問題は何もないのですけれど、これを見た時ふと、最初の1176オリジナルが設計製造された1960年代にはコンピューターなんて一般的じゃなかっただろうなぁ、などと思いました(MC76は2000年前後の製造)。しかもこの配線材は2号機のみに使われており、1号機には別の線材が使われています(たぶんどちらもベルデンです)。アメリカの製品ってだいたいこんな感じにどこかが緩い。

つづく
(がんくま)
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