民生機ですが知人から修理を依頼されました。要望のあった動作不良箇所は次の通り。

・モードセレクター切換時に音が出なくなる時がある

指摘症状は確認できました。モードセレクターというのはMA6200のパネル右下にある"STEREO"や"MONO(L+R)"や"L+RtoL"などの出力信号経路を切り換えるスイッチで、普通のプリメインアンプには付いていません。そういえばこのアンプ、ラウドネスに加えてグライコが付いているのも珍しいですね。モードセレクターを切り換えて音が出ない時に、パネル左下のインプットセレクターを回すと音が出る場合があるので、インプットセレクターもあやしい。

分解します(写真は修理中のもの)。各ツマミは強く引けば外れます。マッキントッシュに特徴的な透明感のある黒いパネルはガラス製なので、傷はつきにくいのですが、衝撃を加えると割れるので慎重に取り外します。
 
問題のモードセレクターとインプットセレクターの作業前の様子です。
 
どちらも回転する金属円盤に真っ黒な汚れが付着しています。アップで見るとこんな感じ。
これをクリーナーの溶剤と綿棒を使って、板を曲げないように清掃していきます。普段の修理で使用している溶剤は、エタノール、イソプロパノール、サンハヤトのリレークリーナー、灯油、アセトン、自動車用のパーツクリーナーなどですが、汚れや使用部材の種類によって使い分けます(溶剤によってはプラスチックやゴムを溶かすので注意が必要)。場合によってはコンパウンドも使用します。綿棒は、どこでも入手できる通常の綿棒が広い面積の清掃や先をほぐしてホコリや汚れを取るのに向いていますが、直角部分の角や狭い溝の清掃には専用の「工業用綿棒」を使います。普通の綿棒より高価ですが、これが無いと清掃は不可能です。
 
清掃中の様子。回転板や接点は両面にあるので、写真に写っている部分の裏側にもあります。

インプットセレクターの回転板は全4面で、そのままでは清掃が難しいので分解します。回転板の汚れが落ちて金属光沢に戻っていく様子がわかりますが、実際には円盤表面の大部分は接点ではありませんで、板の切れ目の角や中心軸に近い直角部分の角、板を挟むバネ状の金属接点側の汚れや摩耗で接触不良が発生していますから、回転板の見た目が綺麗になった所で満足せずに細かい部分をケアしていかねばなりません。バネ接点の内側は細く切った耐水ペーパーを挟んで軽く磨き、爪楊枝の先で軽くバネ圧を調整します。
すべての接点を清掃できたらブロアーで粉を飛ばし、念のため各バネの先端にDeoxIT(CAIG)の接点復活剤を施してから、揮発性のリレークリーナーで全体の汚れや復活剤を流し去り、仕上げに回転板に薄く接点グリス(導電グリス)を塗って組み立てます。ついでに回転機構部分のグリスも補充し、配線を接続して動作確認を行います。駄目な箇所が出たらもう一度。そんなこんなで、マメにやると結構時間がかかって面倒な作業です。お手軽修理としては単純に接点復活剤をスプレーすることで一時的に接触が回復する場合もありますが、自分の経験では半年~1年後に症状が再発する場合が多いです。セレクターの部品は摩耗しますので、乱暴にガチャガチャと回転させず、切り換えを丁寧に行うと寿命が伸びると思います。が、といってまったく回転させないと接点が酸化して汚れが付着しますので、時々回してあげる必要もあります。ツンデレですね。

依頼症状が改善したところでAUXにCDプレーヤーをつないで試聴してみると、音が眠いというか、高域がだらっとしています。これはこれで好きな人は好きなのでしょうが、個人的にはイマイチです。TAPE INに音源をつなぐと音が違うので調べてみると、AUX1/2とTUNERの入力にのみカップリングコンデンサーが入っていました。
まず間違いなくこれの劣化が原因なので、持ち主に音が変わる可能性を確認してから交換します。
全体に部品の実装密度が低いMA6200の内部にあって、カップリングコンデンサーの短冊状の基板はRCAジャックの根本に半田付けで固定されていて、取り外しが面倒です。寿命が長いフィルムコンにすることも考えましたが、実装場所が狭いので、一般的なニチコンMUSEにしてみました。高域低域ともに出音が改善されました。
 
このように製造から30年以上経過しているので、普通に考えて化学製品であるすべての電解コンデンサの特性が劣化しているはずですが、依頼症状は完治しているので全電解コンデンサを交換するつもりはありません。交換すると音も変わってしまうので、自分の所有物ならともかく、持ち主がそれを良しとするかはわかりませんので。使ってある電解コンデンサは一部をのぞいて日本製(ニチコン)で、このアンプが長寿命であるのに貢献していると思います。今後の傾向を把握するために電源・パワーガード基板のみ、電解コンデンサを交換してみました。

 
交換するコンデンサはオーディオ用の高級品ではなく、交換前と同じニチコン製の一般用コンデンサです。
このアンプが設計製造された当時はオーディオ用のコンデンサなどというものは無く、利用されているのは今で言う一般電源用コンデンサです。過去に修理したアンプでも、利用部位を問わずにすべてをオーディオ用電解にしてしまうと、出音にパンチが無くなる現象が出たので今は考えて使っています。しかし技術の進歩で電解コンデンサって小さくなりましたね。電気的な知識が無いと、小さくなったコンデンサでスカスカになった基板の写真を見せると怒る人も以前いらっしゃいましたが(苦笑)。
金色の2つのチューブラー型コンデンサはドイツ製で、この状態で一度試聴を行った後、これのみ部品箱にあった必要以上に耐圧の高いニチコンKWにしました。
 
今回交換した中で一番音が変わったのはここで(といっても程度問題ですけど)、イージーゴーイングなゆるい音から、やや繊細で深みのある(弾性がある)音になりました。大抵の場合、特性が回復すると今風の音に近付くわけで、私はこっちのほうが良いと思いましたが、念のため元に戻せるように、交換部品は保存して持ち主に返却します。

これがもし自分の持ち物だったら、折を見てフォノアンプとグライコのオペアンプ周辺→パワーアンプ基板の順にコンデンサを交換し、音の変化を見ていくと思いますけど、前述の通りで特に致命的な問題が出ているわけではないので、リキャップは現状に不満が出てからで良いと思います。
 
今回未着手のイコライザー基板(下側)。フォノアンプはシャシー下面にあります。1979年発売の製品ですが、ガラエポ基板なのも良いですね。右側のパワーガード表示部へ繋がるフラットケーブルは接着剤が劣化して剥離しますので補修します。
 
左右のパワーアンプ基板と背面パネル裏側。「無線と実験」を読んで自作アンプを作った経験があるような人は、マッキンの部品配置や配線を理想としていた。
 
各ハーネスの接点と、2つ付いているリレーの接点とソケット、オペアンプの足も洗浄しました。
 
 
黒いガラスのパネルは、裏側に光を伝えるためのアクリル板が付いていて、光を遮ったり、ガラスを金属部分に保持するためのスポンジが、ガラス裏や枠の金属レールに貼ってあります。このスポンジが加水分解で粉状に劣化してボロボロになっていますので、全て貼り替えます。
 
本来アクリル板の裏に付いているゴムが溶け、ガラス板の裏側の黒い塗装に固着して塗装を剥いでしまっていますので(表側から見るとパネルに空気の泡が入っているように見えます)、
 
固着したゴムを剥いだあと、黒いペンキを塗って修正します。
アクリル板側には新しいゴム板を貼りました。
 
以上で修理完了しました。今回の故障原因は経年劣化による摩耗や汚れなので、いつかまた再発するわけですが、できるだけ長く使えると良いのですが。でも、今まで30年間ノーメンテで保ったのだから、機械を褒めてあげないとね。
 
(がんくま) 
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Windows2000/XP時代からあるFireWiee(IEEE1394)式オーディオインターフェースやDV機器の安定動作にはIEEE1394のレガシードライバーが必要な事を、DAW利用者はご存知かと思います。私もWindows7/8時代にレガシードライバーをインストールして使っており、そのままWindows10にアップデートして使っていました。


しかし先日HDDからSSDに換装する際にWindows10をクリーンインストールしたところ当然のごとくこのレガシードライバーは消え、再度インストールしないといけなくなりましたが、残念ながら簡単にはインストールできなかったので、その方法をメモしておきます。

 

■使用環境
オーディオインターフェース:MOTU Traveler mk3
ノートパソコン:HP EliteBook 8570p
OS:Windows10 Pro 64bit (バージョン1607 ビルド14393.576)
アプリケーション(DAW):Steinberg Nuendo (バージョン6.0.7)

 

このPCにはオンボードでFireWire(IEEE1394)インターフェースが備わっており、Windows10をクリーンインストールするとデフォルトで有効になるIEEE1394ドライバーは"JMicron OHCI Compliant IEEE 1394 Host Controller"というものです。オンボードのFireWireポートはMacintoshで一般的な6ピンではなくDV(i.LINK)仕様の4ピンコネクタです。内蔵チップセットは確認していないので不明です。玄人志向製のExpress Card/34の6ピンFireWireカードも持っていますが、今までオンボードのFireWireにTravelerを繋いでも問題なく使用できていました。しかしWindows10のデフォルトドライバーでは"JMicron OHCI Compliant IEEE 1394 Host Controller"を選んでも"1394 OHCI Compliant Host Controller"を選んでもスムーズに動いてくれません。

 

■Windows8.1用のレガシードライバーをインストールするがドライバーの更新で表示されない
使用するのはWindows8.1用のレガシードライバー(KB2970191)です。

 

[参考] Windows 8.1 または Windows 8 の FireWire ポート ベースのデバイスが正常に動作しません。
https://support.microsoft.com/ja-jp/kb/2970191

 

まずはこのmsiファイルを上記のページからダウンロードして保存します。
そして説明のとおりにダブルクリックしてインストールします。
"Windowsキー+X"のメニューから"プログラムと機能"に進んで見ると"1394 OHCI Compliant Host Controller (Legacy)"がインストールされているように見えます。


しかし、デバイスマネージャーからIEEE1394ホストコントローラーのドライバータブを選んで、"ドライバーの更新"→"コンピューターを参照してドライバーソフトウェアを検索します"→"コンピューター上のデバイスドライバーの一覧から選択します"に進んでも、その一覧中に表示されているはずの"1394 OHCI Compliant Host Controller (Legacy)"が見当たりません。

どうも使用環境によって表示される場合と表示されない場合があるらしいです。

 

■msiパッケージを展開しようとするがエラー
そこで、一旦"プログラムと機能"から"1394 OHCI Compliant Host Controller (Legacy)"をアンインストールして、KB2970191のmsiパッケージである"1394_OHCI_LegacyDriver.msi"から実体のドライバーファイルを抜き出すことにします。

 

[参考] チラシの裏の電子工作: IEEE1394 LegacyドライバをWindows10にインストールする
http://nax9800.blog.fc2.com/blog-entry-138.html

 

手持ちのWinRARでmsiを見てみるとパッケージされているファイル名が見えますので展開しようとしましたが、「書庫が壊れています」とエラーが出て展開できません。単純にWinRARが対応していないのか、このmsiパッケージがネット上から実体ファイルを引っ張ってくる仕様なのか?

 

■コマンドラインからmsiパッケージを展開する
Windows10にはmsiパッケージを展開するためのソフト、msiexec.exe が備わっているので、これを使うことでmsiパッケージからドライバーファイルの実体を展開することができました。

 

[参考] nanoblog(ナノブログ): msiパッケージをmsiexec.exeで展開する
http://nanoappli.com/blog/archives/478

 

例えばダウンロードしたmsiパッケージがユーザー名"gankuma"のダウンロードフォルダにあって、実体ファイルを C:\TEMP フォルダに展開する場合、"Windows+X"から"コマンドプロンプト(管理者)"を起動し、次のように操作します。
※msiexec.exe のコマンドの説明は上記のブログ記事に詳しいです。

Microsoft Windows [Version 10.0.14393]
(c) 2016 Microsoft Corporation. All rights reserved.
C:\Windows\system32>cd C:\Users\gankuma\Downloads
C:\Users\gankuma\Downloads>dir
ドライブ C のボリューム ラベルがありません。
ボリューム シリアル番号は AAF6-1257 です
C:\Users\gankuma\Downloads のディレクトリ
2016/12/15 15:00 <DIR> .
2016/12/15 15:00 <DIR> ..
2016/12/15 12:40 208,896 1394_OHCI_LegacyDriver.msi
1 個のファイル 208,896 バイト
2 個のディレクトリ 391,614,660,608 バイトの空き領域

C:\Users\gankuma\Downloads>start /wait msiexec.exe /a 1394_OHCI_LegacyDriver.msi targetdir="c:\TEMP" /qn /li "c:\TEMP\install.log" C:\Users\gankuma\Downloads>cd C:\TEMP C:\TEMP>dir ドライブ C のボリューム ラベルがありません。 ボリューム シリアル番号は AAF6-1257 です C:\TEMP のディレクトリ 2016/12/15 13:31 <DIR> . 2016/12/15 13:31 <DIR> .. 2016/12/15 13:31 <DIR> 1394 OHCI Compliant Host Controller (Legacy) 2016/12/15 13:31 32,768 1394_OHCI_LegacyDriver.msi 2016/12/15 13:31 2,528 install.log 2 個のファイル 35,296 バイト 3 個のディレクトリ 391,609,114,624 バイトの空き領域
C:\TEMP>


エクスプローラーからC:\TEMPフォルダを開くと、無事にドライバーファイルが展開されていました。"ドライバーの更新"→"コンピューターを参照してドライバーソフトウェアを検索します"から、参照ボタンを押、ドライバーが展開されたフォルダを指定してインストールすることで、ようやくレガシードライバーが選択できるようになりました。

 

Legacyドライバー導入前はつっかかりもっかかりだったオーディオインターフェースでしたが、今のところ問題なく使用できています。

 

(がんくま)
 

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TOA F-600SR レストア(5)

テーマ:

◆パンチメタルカバーの補修
F-600SRは出荷当時グレー塗装だったはずですが、私が入手した時にはツヤ消しブラックで塗られており、その上から剥げたところや錆びたところをツヤ有りブラックで乱暴に塗られていて、ちょっとみすぼらしい感じです。まずサビと古い塗膜を400番のペーパーで削り落とします。

 

削ったら一瞬出荷当時のロゴが出現。

F-600SR 当時のロゴ

ツヤ消しブラックのスプレーで再塗装しました。

F-600SR カバー再塗装

キレイになりました。正面から見ている限り、元のオンボロスピーカーにはもう見えません。

F-600SR 再塗装完了

欠品しているカバーの止めボルトをどうするか。上の写真ではとりあえず手元にあったM6の六角ボルトとゴムシートでそれっぽく仕立ててみましたが、イマイチ印象が薄いです。

 

この部品の入手が可能かどうか、TOA社に問い合わせましたが、F-600SRの部品は2005年に提供終了しているので無い、とのことでした。後継機種のF-601SRも同じ部品なので期待したのですが、ちょっとつれない返事で残念です。無いものは無いと割り切って代替策を考えます。

 

F600SR 化粧ねじ比較

代わりに手配したのは EPS-K M6-20-12 という化粧ビスです。

http://kitweb.co.jp/products/ornament/eps/eps-k.html

サイズや見た目はわりかし近いです。クロームのままでは光るので艶消し黒で塗りました。

F600SR ねじ塗装後

 

◆入出力端子をフォンにする。
ノイトリック製のXLRジャックが付いているので、片方を取り外し、トモカで売っているノイトリック仕様のコネクタプレートを買ってきてフォンジャックを付け、半田付け。F-600SRでは全てのコネクタが中で並列接続されているのでどこに付けても音は鳴ります。

F-600SR コネクタ交換前

F-600SR コネクタ交換中

F-600SR コネクタ交換後

しかし、ネジは締まりましたが斜めです。旧タイプの縦長ITT-Canonと同じサイズのようです。美しく作ろうと思ったらプレート自作するしかないなぁ。

 

◆スタンドアダプターを付ける

F-600SRの横にはスタンドアダプターを付けるM8の穴があるので、CLASSIC PROのSM10を取り寄せてM8*25mmの蝶ボルトと平ワッシャーで固定します。

 

スタンドで立てると横に寝かせた状態になります。見た目だけならBOSE 301っぽく見えなくもない。あり得ないデカさだけど。

F600SR スタンド装着(グリル付)

前述のようにツイーターとバスレフポートの位置を入れ替えているので天地を逆にすれば左右対称に設置できます。

F600SR スタンド装着(グリル無)

F600SR スタンド装着裏面

縦置きでスタンドに設置するEV SX300と比べると横幅をとりますのでステージが狭い場所だと少々目立ちます。重量もやや重く、設置運搬はSX300のほうがやりやすい感じです。サイズ自体はF-600SRのほうがSX300よりも小さく、特に奥行が短くて薄いので、天井から吊るしたり奥行きが狭い場所で使ったりするのには向いていると思います。

 

◆鳴らしてみる
個人的な印象としてはSX300と比べると音が丸いです。高域が透き通るような突き抜け方をせず、低域も無理をして伸ばしている感が無く、全体に地味目な印象。ヤマハやEVのPA用スピーカーと比較すると、飛びがイマイチな印象になるかもしれません(一般家庭における小音量試聴なのでパワー入れたらまた印象が変わるかも)。もともと公共施設などの設備用スピーカーに定評があるメーカーなので、パキッとした抜けの良いサウンドでは無いようです。人声については安定していて聞きやすく、ボーカル中心の音楽は芯があって良い感じに再生するように思います。

 

ネットワーク基板上にある"HF -2dB"のジャンパを"HF 0dB"に差し替えてみました。

F-600SR ネットワーク基板のジャンパ

すると最初の地味な音から、シャッキリとした今風の音?に変化しました。それでも高域の上限が伸びるわけではありませんが、解像度は多少改善されます。PA的にはこっちのほうが普通な気がします。背面に高域調整用のボリュームがあるので、このジャンパは0dBにしておいてボリュームで調整するほうが実用的なのでは?

 

なお最初に書いたように、ネットワークのコンデンサーを交換する前後の比較では、ガサガサした痩せ気味の音から、音楽的で肉厚な音に変化したので、製造からかなりの年月が経過しているこのスピーカーの中古品を入手したら、コンデンサーの交換をお奨めします。

 

当記事を参考に作業をされる場合は、自己責任でお願いいたします。

 

(がんくま)

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