Flowers / 原田知世
①PARADE
②Metro
③T’EN VA PAS (Tombourine Mix Version)
④君は君のもの
⑤100 LOVE-LETTERS
⑥シンシア
⑦ロマンス
本日紹介するのは、1997年の原田知世のアルバム「Flowers」です。
80年代アイドルの花の82年組の一人として、また当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった角川映画の「角川三人娘」の一人として華々しくデビューした原田知世。
個人的には嫌いではなかったが特に好きというわけでもなく、むしろ歌が下手だな、というのが印象に残っていて、彼女のデビュー曲のタイトル風に言うならば「悲しいくらいほんとに下手」でした。
まあ彼女が突出して下手だったとかというのではなくて、当時のアイドル歌手なんてみんなそんなもんだったわけですが。
彼女が主演した映画「時をかける少女」も観たけれど、それとて大林宣彦の「尾道三部作」のひとつとして、また筒井康隆原作の映画として観たのであり、オレの中でははっきり言って原田知世の存在はどうでもよかったわけです。
同じ角川映画では当時は薬師丸ひろ子主演のクソみたいなしょーもない映画ばかり見せられていましたから、この「時をかける少女」は原田知世ではなくむしろ薬師丸ひろ子主演で作ってほしかったと思ったくらいです。
その後80年代後半には「私をスキーに連れてって」とか「彼女が水着にきがえたら」という映画のヒットはあったものの個人的には全く興味なし。
他の泡沫アイドル同様その存在すら思い出す理由もないまま時は過ぎ、時代は90年代へ。
で、当時J-PHONE(死語)のCMで流れていた歌が気になったので問い合わせてみたところ、何と歌っているのが原田知世だったのですわ。
え!?
原田知世ってあの原田知世?
ハラダト・モヨとかちゃうよね?
80年代ほとんど注意を払わなかったアイドルが時を経て立派なシンガーとなっていたのですよ。
まさに時をかける少女。
で、即効買ったアルバムがこの「Flowers」だったのですが、何なんだろうねこれは。
中学時代の地味だったクラスメイトの女の子が成人式で会ったらびっくりするくらい綺麗になってたような、或いは親戚の女の子が気がついたらいつの間にか素敵な女性になってたような、よくわからないけど意味もなく後悔してしまうような、でも何だかちょっぴり嬉しいような複雑なこの気持ちは。
「Flowers」は7曲入りのベスト盤で、1996年のアルバム「clover」と97年のアルバム「I could be free」からの楽曲とシングル曲で構成されています。
90年代中頃というのはスウェディッシュ・ポップ全盛期で、当時は猫も杓子もトーレ・ヨハンソンのプロデュース&タンバリン・スタジオでレコーディングというご時勢で、原田知世もそんな時代の潮流に乗ったような形になるわけですが、これが実に相性がいい。
春の日差しのような暖かく爽やかなナチュラル・サウンドが、原田知世の透明感のあるヴォーカルと見事にマッチしています。
楽曲も7曲すべてが良い、ってベスト盤なんだから当たり前かも知れませんが白眉は何と言っても「シンシア」。
件のJ-PHONE(死語)のCMで使われてた曲というのはこの曲のことなのですが、はっきり言って
この曲を聴くためだけにこのアルバムを買っても損はしない
と言えるくらい素晴らしい曲なんですわ。
シンガー原田知世の魅力を知るにはオリジナル・アルバムを聴いてみることをオススメするのですが、この「シンシア」は残念なことにオリジナル・アルバム未収録。
あと、注目すべきは「T’EN VA PAS」で、この曲の経緯がまたややこしいんですわ。
元々は1986年にフランスのエルザという人が歌っていたもので、その時の邦題は「哀しみのアダージョ」。
これには副邦題なんてのもついてまして、それが「彼と彼女のソネット」。
で、この曲に大貫妙子が日本語の歌詞をつけてそれを原田知世がシングルとしてリリースしたのが1987年でその時のタイトルが「彼と彼女のソネット」。
で、90年代に入ってから原田知世はムーンライダーズの鈴木慶一のプロデュースでこの曲をシングルとして再リリースし、この時はオリジナルのフランス語で歌い、タイトルも「T’EN VA PAS」と、そのまま。
エルザは英語でもこの曲を歌っていてそのタイトルは「PAPA PLEASE DON’T GO」。
いろいろややこしいですね。
この曲はそもそも妻と別れ家を出て行く父親を娘の視点から歌ったものなんですね。
ママは僕の生涯の恋人って言ってたのにどうして出て行くの?
もう3人揃って映画を観に行くこともないのね
お願い パパ 行かないで
という内容の歌がなぜ「彼と彼女のソネット」というタイトルになるのか小一時間問い詰めたいところですが。
そんな「T’EN VA PAS」がこのアルバムではTombourine Mix Versionという別ミックスで聴けるのです!
ってどうでもエエか(笑)
「Flowers」はCDケースがマキシシングルのように薄っぺらいので、もしかしたら中古CD屋のシングルのコーナーに置かれている可能性もあるので要チェックです。
ちなみにジャケはちょっと面白いつくりになっており、一見普通のジャケに見えますが、
実は紙ジャケの上に
花柄模様がプリントされたフィルムが重ねられていたりします。
「シンシア」 PV↓
http://www.youtube.com/watch?v=_BDTAFITaHw
「T’EN VA PAS (Tombourine Mix Version)」↓
http://www.youtube.com/watch?v=Mg0cloB1Bvs
それにしてもこの人は年を取らんね。
まさに永遠の少女。
もしかしたら本当に時をかける少女なのかも(^^;