最も原初的なアナログ・サンプラー、メロトロン
メロトロンという鍵盤楽器があります。
この楽器は非常に特殊な楽器で、
鍵盤を押すとその下のテープが回転してあらかじめ録音された音が再生される
というもので、考えようによってはアナログのサンプラーとも言えると思います。
メロトロンが世に出たのは1960年代の初め頃だったのですが、60年代中期~70年代中期にかけて、ロック・アーティストが(地味に)取り上げていました。
ロック・ファン、特にプログレ好きの人ならこの楽器がどのようなものであるかわかると思います。
メロトロンの音が聴けるアルバム、というので最も有名なのはキング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」でしょう。
メロトロンはその楽器の性質上、固有の音を持つものではありません。
テープ次第では弦楽器や管楽器のみならず、人間の声なども出せます。
だったらミュージシャンがそのまま弾いたり歌ったりすればいいんじゃないの?
と思うかも知れません。オレもそう思ってました。
メロトロンはテープを再生するため、音色が安定しにくいという短所があったのですが、その不安定さが逆に叙情的(もしくはちょっと不気味)だったりするのですよ^^
何とも頼りなげで、そして直接楽器を弾くのとはまた一味違う音色が魅力だったりするのは不思議なものです。
キング・クリムゾンやジェネシスなどは、ライヴでこのメロトロンを多用していたらしいのですが、サポート・ミュージシャンがいなくてもさまざまな楽器の音が再生できるというのがメリットだったのかもしれません。
個人的にはビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のイントロでメロトロンという楽器を知りました。
この「鳩が鳴いているような」音色はフルートの再生音なのですが、何とも素晴らしいイントロです。
フルートを和音で聴かせるという発想からして画期的だと思いますが、こうしたことが出来たのもメロトロンという楽器があったからこそでしょう。
この曲のイントロが余りに印象的だったせいか、ビートルズはメロトロンを多用しているイメージがあるのですが、実際はビートルズの楽曲でメロトロンが使われているのは数えるほどです。
「ホワイト・アルバム」収録の「コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロウ・ビル」のイントロで聴けるスパニッシュ・ギターのパートも実はメロトロンです。
キング・クリムゾンのライヴ・アルバム「エピタフ~1969年の追憶」の中にもこれと全く同じのスパニッシュ・ギターのフレーズが出てくるらしいのですが、ビートルズもキング・クリムゾンも同じメロトロンを使用していたということですね^^
ツェッペリンもライヴにおいてはあの「天国への階段」の導入部の管楽器はメロトロンで対応していたらしいです。
個人的にカナーリ大好きな「カシミール」の弦楽器は、生音とメロトロンの両方だそうです。
このたびの再結成のライヴではどういうふうに演奏されたんでしょうか(^-^)
時代が進み、シンセサイザーやサンプラーが飛躍的に進歩したことからメロトロンはそれらに取って変わられたのですが、レッチリやオアシス、レディオヘッドやR.E.M.なんかも部分的にメロトロンを使用しているらしいです。
日本ではaikoが使ってたりしてるようです∑(゚Д゚)
どこでどんな楽器がどのように使われているか?
そんなことに注意しながら海原雄山のように音楽を聴くのも楽しいかもしれません^^