女をいたぶる刑罰の歴史「徳川女刑罰史」を観て | パンクフロイドのブログ

パンクフロイドのブログ

私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

シネマヴェーラ渋谷

甦る映画魂 The Legend Of 石井輝男 より

 

 

製作:東映

監督:石井輝男

脚本:荒井美三雄 石井輝男

撮影:わし尾元也

美術:鈴木孝俊

音楽:八木正生

出演:吉田輝雄 渡辺文雄 中村錦司 橘ますみ 沢彰謙 上田吉二郎

    芦屋雁之助 簑和田良太 賀川雪絵 尾花ミキ 白石奈緒美 小池朝雄

1968年9月28日公開

 

寛文五年。みつ(橘ますみ)は兄の新三(吉田輝雄)と二人で暮らしていましたが、新三が大工の仕事中に重傷を負い治療代が入用になります。呉服屋の巳之助(上田吉二郎)は日頃からみつを妾にしようと狙っており、権造(沢彰謙)がその仲立ちをします。みつは治療代を工面するため心ならずも巳之助に体を許し、哀しみに暮れる兄妹は、お互いを求めあいます。やがてこの事実が巳之助に知れ、みつは新三の目前で犯されます。新三はこれを苦にして自殺をはかりますが死にきれず、みつが兄の苦痛を見かねてノミを打ち下しました。みつは、兄の殺害容疑および近親相姦の罪で捕われ、与力の南原一之進(渡辺文雄)の残酷な拷問を受けます。しかし彼女は口を割ろうとはしませんでした。その拷問に不信を持った与力の吉岡頼母(吉田輝雄:二役)は、みつを取り調べ温情ある判決に持っていこうとしますが・・・。

 

寛文八年。珠光院の院主代・玲宝(賀川雪絵)は、付き役尼僧の燐徳(白石奈緒美)と愛撫し合い、歓喜に身をゆだねていました。ある日玲宝は、尼僧の妙心(尾花ミキ)が本寺の僧・春海(林真一郎)と密会しているのを目撃します。玲宝は、春海を女犯の罰として滝にうたせる一方、妙心には苛酷な拷問を加えます。やがて、妙心は残虐な私刑に耐えきれず世を去ります。一方、春海は玲宝の心を受け入れなかったため、玲宝の鉈で首をかき落されます。やがて、寺社奉行による手入れが行なわれ、玲宝自身も春海の首を愛撫しながら自害して果てるのです。

 

寛文十一年。柳橋の芸者・君蝶(沢たまき)は、彫丁(小池朝雄)に刺青を彫ってもらい、背に描かれた地獄絵図が評判をよんでいました。しかし与力の南原から、彫り物にケチつけられると、彫丁は南原の元を訪ね、女が苦悶する表情について教えを請います。ちょうどその頃、漂流船で流れ着いた白人女たちが、キリスト教の宣教の疑いで長崎に拘束されていました。彫丁は一世一代の彫りものにしようと、処女探しにかかります。そして、町娘の花(三笠礼子)を見つけ、南原の一行と共に長崎に向かいます。長崎に着いた南原らによる拷問は凄まじく、その横で彫丁は花の体に拷問地獄の模様を刻んでいきます。作品は完成したものの、まだ何かが足りぬと感じた彫丁は南原に近づき・・・。

 

映画は三部構成となっており、女たちが受ける理不尽で残酷な刑罰の数々を、余すところなく描いています。この映画を観ますと、牧口雄二監督の「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」が、どれだけ本作に影響を受けているかも良く分かります。実際、牧口は本作で助監督を務め、映画の冒頭には牛裂きの刑が出てきますし、キリスト教を布教した疑いをかけられた女の拷問には、水車を使った水責めの刑も「牛裂きの刑」で使われています。

 

第一話は借金を返すため、巳之助と寝たことがきっかけで、罪人として裁かれる女の悲劇。巳之助や間を取り持つ権造もワルですが、兄の新三も相当罪深いです。妹が借金返済のために処女を捧げたことを知ると、兄としての分別を失い妹と関係を持ち、目の前でみつが巳之助に犯されるのを見せられ、自死を図ります。それでも死にきれずに、妹にとどめを刺すように促すのですから、兄のせいで妹が死罪にされると誹られても仕方ありません。みつの身の上に同情した与力の吉岡は、彼女の罪を軽減するため助け舟を出しますが、みつは兄だけを悪者にするのを良しとせず愛に殉じます。

 

第二話は男に飢えた尼僧が自分を袖にした僧とその恋人に復讐を果たす物語。玲宝は女同士だけの性技では物足りず、禁じられた恋を目撃したことにより、これネタにして春海を自分のものにしようとします。しかし、春海は玲宝とまぐわうものの、妙心に災難が降りかからぬための行為であり、心まで許したわけではありません。そのことに苛立った玲宝は、二人を拉致して、妙心が受ける拷問を春海に見せることにより、妙心と手を切るよう迫ります。焼き鏝を妙心の局部にあてる描写が何ともエグいですわ。

 

第三話は彫り師が与力に自分の作品を馬鹿にされたことで発奮し、女の苦悶の表情を会得するため、拷問に立ち合って傑作を完成させようとする話。「徳川いれずみ師 女責め地獄」を彷彿させる小池朝雄の狂気ぶりが見ものです。そして、彼の隠された意図が終盤に露わになる点も効果的と言えましょう。対する渡辺文雄演じる与力は、女をいたぶることで快感を得るサディスト。本物の苦悶の表情を彫丁に見せるため、長崎まで彼を同行させ、彫り師の創作意欲を掻き立てるようお膳立てしますが、因果応報の結果に・・・。悪役に定評のある小池朝雄と渡辺文雄の静かなバトルが、残酷描写に拍車をかけます。