公共サービスはどうなるのか | シイタケのブログ

公共サービスはどうなるのか

 立法担当者はもちろん、「矛盾しない」と言い張るのであろうが、どうみても理念の相反する2つの法律がある。福祉国家の基本となる「公共サービス」について、国家が主体となって積極的に行うのか、それとも国家が投げ出して責任を放棄するのか、2つの法律を見比べるとわからないのである。

 そのひとつの法律が、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(平成18年法律第51号)である。この法律は規制緩和政策・小さい国家志向を象徴するものであり、その趣旨(1条)を読むだけでも腹立たしいものである。

(趣旨)
第1条 この法律は、国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスに関し、その実施を民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点から、これを見直し、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札に付することにより、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革(以下「競争の導入による公共サービスの改革」という。)を実施するため、その基本理念、公共サービス改革基本方針の策定、官民競争入札及び民間競争入札の手続、落札した民間事業者が公共サービスを実施するために必要な措置、官民競争入札等監理委員会の設置その他必要な事項を定めるものとする。

 …出ました、「民間でできることは民間で」というキーフレーズ。ところが、今年5月に成立した「公共サービス基本法」(平成21年法律40号)では、下記のようになっているのである。

(目的)
第1条 この法律は、公共サービスが国民生活の基盤となるものであることにかんがみ、公共サービスに関し、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、公共サービスに関する施策の基本となる事項を定めることにより、公共サービスに関する施策を推進し、もって国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)
第3条  公共サービスの実施並びに公共サービスに関する施策の策定及び実施(以下「公共サービスの実施等」という。)は、次に掲げる事項が公共サービスに関する国民の権利であることが尊重され、国民が健全な生活環境の中で日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようにすることを基本として、行われなければならない。
一 安全かつ良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適正に実施されること。
二 社会経済情勢の変化に伴い多様化する国民の需要に的確に対応するものであること。
三 公共サービスについて国民の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること。
四 公共サービスに関する必要な情報及び学習の機会が国民に提供されるとともに、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること。
五 公共サービスの実施により苦情又は紛争が生じた場合には、適切かつ迅速に処理され、又は解決されること。

(国の責務)
第4条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国民生活の安定と向上のために国が本来果たすべき役割を踏まえ、公共サービスに関する施策を策定し、及び実施するとともに、国に係る公共サービスを実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、公共サービスの実施等に関し、国との適切な役割分担を踏まえつつ、その地方公共団体の実情に応じた施策を策定し、及び実施するとともに、地方公共団体に係る公共サービスを実施する責務を有する。

 …このような法律をみると、公共サービスは国や自治体が責任を持って担うようにみえ、大変頼もしいではないか。だとすると前者の法律の精神はこれと矛盾しないか。前者の「公共サービス放棄法」は廃止すべきなのではないか。後者の法律は、民主党政権になってからできたものではない。同じ自民党政権時に成立した法律である。したがってこれは国家の迷走を象徴しているのである。もちろん立法担当者は、「なるべく民間に任せるが、その任せた公共サービスの監視は国や自治体が責任を持って行う」という論法でごまかすのであろうが、民間に任せて公共サービスがよくなった話を私は聞いたことがないどころか、むしろ脱法・違法行為が増えているのではないか。

 「公共サービス放棄法」は速やかに廃止すべきである。

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