Essential Mediaから1月発売予定のCD その2 | サイケデリック漂流記

Essential Mediaから1月発売予定のCD その2

まず最初に注意書きを。今回のEssential Mediaからのリリースは、amazonによると「この商品はマニュファクチャー・オン・デマンド(以下、MOD)商品として発送される場合があります。MOD商品は、音源をCD-Rに録音しジャケットをプリントしてお届けいたします。ジャケットデザイン・歌詞・解説等、表記の内容・仕様などがオリジナルとは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。」とのことです。

さて、60~70年代に、いわゆる「企画もの」レコードを量産した謎のプロデューサー、Johnny Kitchen(以下JK。その実体は西海岸のジャズプレーヤー/アレンジャーだったJack Millman)に関連するタイトルが大量にエントリーされています。

彼が手がけたレコードは、よくあるグルーヴィインストにとどまらず、ジャズ、ロックンロール、R&B、サーフミュージック、サイケ、フォーク、ラウンジ、ラテン、アフロ、ファンク、カントリー、歌入りのヒッピーロック、アバンギャルド・・・などなど、あらゆるジャンルに及び(それらが一枚のアルバムに散りばめられていることも多い)、良くいえば万華鏡、悪くいえばガラクタ置き場のような様相を呈しています。

その多くは、(時期や演奏者の異なる)スタジオプロジェクト録音や、有名無名の既存の音源の流用・転用・サンプリング(複数のアルバムでの使い回しあり)や、それらに時にはサウンドコラージュやエフェクトを施して、ひとつの作品にまとめあげたものと推測されます。しかし、後述のSurf RidersやVictims of Chanceの2ndのように、そのまま他人のレコードを「産地偽装」したものもあり、いってみれば「なんでもあり」の「キング・オブ・企画もの」みたいな膨大なカタログを形作っています。

今回アップされているタイトルは、まだまだその氷山の一角だと思われます。(トラックリストおよび試聴はリンク先のamazonのページ、または登録情報の「その他のエディション:MP3 ダウンロード」のリンクページで。)


Bedlam (Johnny Kitchen Presents the Crazy People)
Crazy People
Bedlam (Johnny Kitchen Presents the Crazy People)

JK関連では、おそらくサイケファンには最も有名なタイトル。以前Gear FabからCDが出ていました。1968~69年ごろにカナダのCondorレーベルからリリースされた一連のタイトルのひとつ(そのため今でも「Johnny Kitchenはカナダ人らしい」という記事を見かける)。

本作は前述のJK流プロダクションによる「ごった煮」作品の好例なのですが、いつもよりちょっとやりすぎたら、はからずも「サウンドコラージュサイケの隠れた名作」と過大評価されてしまった、という感じでしょうか。ファズギターやハモンドオルガンによるグルーヴィチューン(歌入り)に、ナレーションや爆発音、悲鳴、ファンファーレ、鳥や虫の鳴き声、手回しオルガン、口琴、どこかのレコードから流用したとおぼしきオーケストラトラック、テープの逆回転などなど、さまざまなコラージュやエフェクトをほどこした「似非サイケ」な迷作。

これはJK物一般にいえることですが、「あれ?どっかで聴いたことあるぞ」というシークエンスが飛び出してきたりするので、そういう元ネタ探しみたいなことでも楽しめると思います。



Blues Train (Johnny Kitchen Presents the Blues Tra
Blues Train
Blues Train (Johnny Kitchen Presents the Blues Train)

こちらもCondorからのリリースでGear FabからCD再発されていたタイトル(Gear Fabの記述によるとオリジナルは1970年リリース)。

ファズギター入りのブルースロックがメインで、"Hoochie Koochie Man"や"Got My Mojo Workin"などのスタンダードカバーもやってます。Steppenwolfみたいな曲や、Country Joe & the Fishを連想させるシスコサウンド風ヒッピーサイケロックもあり。わりとちゃんとした歌入りバンドサウンド(に聴こえる)作品です。



Ten Tons of Wet (Johnny Kitchen Presents the Surf
Surf Riders
Ten Tons of Wet (Johnny Kitchen Presents the Surf Riders)

のちにMoby Grapeに参加するPeter Lewisが在籍していたLAのバンド、Cornellsの1963年のサーフインストアルバム"Beach Bound"を、中身はそのままに別の作品に仕立て上げてCondorからリリースしたもの。でも、オリジナルはモノなのに、こちらはステレオです。

ところで、先頭の曲はBeach Boysの"Sloop John B"みたいに聴こえますが、あれは1966年の"Pet Sounds"の曲で、こっちは1963年・・・。といっても、もちろんBeach BoysがCornellsをパクったわけではなくて、どちらも西インド諸島の民謡を元ネタにしているからだと思います。



Hang on Sloopy
Johnny Cole Unlimited
Hang on Sloopy

商品の説明では1970年のリリース(Condorレーベル)となっていますが、ほかにも1960年とか1965年とか、バラバラな記述が見られます。また、Johnny Coleではなく、Jimmy Cole Unlimitedと表記されたジャケットもあり、よくわかりません。ジャケットの女性?でボーカルを担当しているのは、JKの奥さんだったLudmilaという人とのことですが、あきらかにトラックごとに録音メンツ・音源が異なっているように聴こえます(胡散臭い)。


以下の4作も同じくCondorからのリリース。"Trio of Time / This World"はPeter, Paul & Maryタイプのフォークアルバム。"Jimmy Herald / Ride On"はカントリー~ロカビリー作品。"Los Choros Latinos / Latin Holiday"はラテンジャズアルバム。"Soul Mates / Black Strap Molasses"はR&B~ソウル/ファンク(歌入り)作です。


This World (Johnny Kitchen Presents the Trio of Time
Trio of Time
This World (Johnny Kitchen Presents the Trio of Time)


Ride on (Johnny Kitchen Presents Jimmy Herald)
Jimmy Herald
Ride on (Johnny Kitchen Presents Jimmy Herald)


Latin Holiday (Johnny Kitchen Presents Los Choros
Los Choros Latinos
Latin Holiday (Johnny Kitchen Presents Los Choros Latinos)


Black Strap Molasses (Johnny Kitchen Presents the Soul Mates
Soul Mates
Black Strap Molasses (Johnny Kitchen Presents the Soul Mates)


以下、次回に続く。


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