第66回 O.W.L. | サイケデリック漂流記

第66回 O.W.L.

Of Wondrous Legends
Owl
Of Wondrous Legends

愛聴盤になるアルバムというのは、最初の印象はそれほどでもなくても、何度か聴いてるうちにジワジワと沁みて来るというパターンが結構ありますが、これはもうオープニングの数曲が流れただけで「無人島アイテム」となることを確信してしまったという作品。

Owl(Of Wondrous Legends)は、以前ヘヴィサイケ特集で取り上げたMountain Busの初期メンバー(アルバムには不在)だったStephen Titraをリーダーとするシカゴのグループです。本作は1971年にUniversalのスタジオで約半年をかけて制作されたものの、けっきょく少数のテストプレスのみで、人知れず埋もれたままになっていた未発表アルバム。それが2004年になって、偶然シカゴの古道具屋の片隅で「発見」されたのでした。

極上のメロウサイケとバロックフォークが絶妙のバランスで融合したような、「ルネッサンスアシッドフォークロック」とでも呼びたいような独自の音世界。メランコリックなメロディを鬱々と歌い上げるナイーブ&イノセントなボーカルに、クラシカルな室内楽器やヴァイブやダルシマーやフルートが奏でる幽妙なバッキング(特にヴァイブはElevatorsのジャグやCold Sunのオートハープに匹敵するくらい印象的)。全編を通して統一感のある同質の高いクオリティを保ちながら、古典趣味や東洋風味やサイケな味付けで決して単調に陥らない楽曲群も素晴らしい。

しかも、コアなサイケファンにも普通のロックファンにも訴えるような、マイナー/アンダーグラウンド感とメジャーな「名作」感を同時にそなえているところもスゴい。これを「発掘」した人が最初に聴いた時の狂喜する様子が目に浮かぶようです。サイケファンが知らずにいる、このような「お宝」が、まだまだどこかに埋もれているのではないか・・・そんなロマンをも感じさせてくれます。Gandalfなんかと並べて、CDラックの特別の一角にしまっておきたいような一枚。


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