境界サイケ特集 その4
Morton Subotnick
Silver Apples of the Moon; The Wild Bull
電子音楽系の「境界もの」といえば、Morton Subotnickの諸作もハズせません。なにせ、代表作の"Silver Apples of the Moon"(1967)は、以前無人島ネタで取り上げたSilver Applesのバンド名の由来となっているほど(もともとはイェーツの詩の一節)。
"Silver Apples~"と、レココレのサイケ特集号でも紹介されていた次作の"The Wild Bull"(1968)は、ムーグではなくてブックラというシンセサイザーのみで作られています。「プシュ~ ピロピロ ピョヨヨ~ン」みたいな、いかにもシンセな音で、楽曲も無調の現代音楽みたいな無機質な感じ。でも、聴いているうちに不思議とメロディやリズムやイメージが浮かび上がってきて、展開なんかも意外にドラマチックで面白い。なにより、いかにも60sっぽいチープなテイストが横溢していて、ある意味とてもサイケデリックです。
まず最初に連想されるのはB級SF/ホラー映画。"Silver Apples~"は広大な宇宙空間を漂流するようなシーンのBGMにぴったりな感じだし、"Wild Bull"は「怪奇!地下納骨堂 彷徨う亡霊」みたいな映画で使われていてもおかしくなさそう。とにかく、われわれが思う「現代音楽」というイメージとは違って、とても親しみやすいチャーミングな音です。ちなみに、上のCDはこれらの二作がカップリングされた2on1。
Terry Riley
A Rainbow In Curved Air
テリー・ライリーは正規の音楽教育を受けた現代音楽家で、ミニマルミュージックの立役者のような人。最も有名な作品はミニマル即興音楽のお手本みたいな"In C"(1964)ですが、1969年の"Rainbow in Curved Air"はプログレからテクノやアンビエントまで、その後のロック界に多大な影響を与えた「ポップな」作品。初期のSoft Machineにモロなフレーズが出てきたり、The Whoの"Who's Next"のPete Townshendのシンセなんかにも、その影響が明白です。英国のCurved Airはここからバンド名を取ったというのも有名な話。
電子オルガンやシンセのループから閃く、カラフルな音の洪水とイマジネーションは、サイケデリックな感覚との親和性も高く、これがウッドストックで演奏されていたとしても違和感はなかったでしょう。実際テリーは60年代には、まるでアシッドテストみたいな「オールナイト・コンサート」を主催し、テープループやディレイマシンなどを使った即興演奏を終日繰り広げていたというサイケな人でもあります。(カップリングで収録されている"Poppy Nogood and the Phantom Band"はそのころの定番曲。)
また、Velvet UndergroundのJohn Caleとのコラボ作