ヘヴィサイケ特集 その29 | サイケデリック漂流記

ヘヴィサイケ特集 その29

Shag
まぎらわしいですが、Pulseの前身のShagsやWiggin三姉妹のShaggsとはまた別のバンド(結成時にはShagsと名乗っていたというからややこしい)。ミルウォーキー出身の4人組です。(多くのサイケコンピに収録されている"Stop & Listen"はこのShag。)

いきなり先頭の曲がジェスロタルしてて、どうなることかと思いますが、ご心配なく。そのあとはファズギターたっぷりのシスコサウンド風ヘヴィサイケデリアがまったりと展開されます。シスコに出て活動していたらしく、録音は1969年、シスコのPacific High Recording Studioとクレジットされています。(そのスタジオでは同じ頃Grateful Deadが"Workingman's Dead"を制作している。) ただ、アルバムは当時は発売されなかったようです。

達者なボーカルがやや調子いい感じもありますが、いい意味でのシスコサウンド的な通俗さ・冗漫さが、好きな者にとっては心地よい安心感を与えてくれます。シスコサイケファン、ファズギターフェチには要チェックな一枚。


Shag
Shag



Butterfingers
ファズギターたっぷりでボーカルが調子いいといえば思い出すのがこのバンド。唯一のアルバムは1970年ごろの作品で、ヒューストンあたりのバンドらしいという以外、詳しいことはわからないようです。

一部のコレクターの間では「Butterfingers=黒人グループ」説もあるようですが、「少なくともボーカルは黒人」説に一票入れたくなるくらい、リードボーカルは黒人っぽいグサグサ感があります。その、朗々と歌い上げるソウルフルボーカルとR&Bな楽曲が反サイケ的といえばいえるんですが、全編に鳴り響くやさぐれファズギターとの相性が良いおかげで、あまり気になりません。

楽曲や演奏に、メジャーな感覚とアングラな感覚が交錯するのも特徴で、ときどきリズムが怪しくなったり音をハズしたりするところなんかもイケてます。こちらも、最初の曲がスリードッグナイトみたいで展開が読めないんですが、アルバムの後半に進むにつれてどサイケなナンバーが目立ってきて、最後なんか「あんたら完全にラリってるでしょ」状態になるので、じゅうぶんヘヴィサイケアルバムと呼べるものです。一部のレビューでは悪く書かれてたりもしますが、変態(ゲテモノ)趣味的にはかなり面白いと思います。

ちなみに、このジャケット、Fresh Blueberry Pancakeを連想された方もおられるかもしれません。それもそのはず、どちらも近年のリイシュー時に新たに描かれたもの(オリジナルは無地)で、同じ人がアートワークを担当しています。


Butterfingers
Butterfingers



Big Brother (featuring Ernie Joseph)
Big BrotherといってもHolding Companyとは関係ありません。Ernie Josephはこのバンドの前には、Ernie Oroscoの名で、西海岸ポップサイケグループのGiant Crabなどで活躍していた人。ときおりヘヴィなファズギターが入るとはいうものの、バブルガムっぽいポップ(ソフトロック)チューンが中心だったGiant Crabとはイメージが変わって、こちらはかなり本格的なオルガンヘヴィサイケ/ハードロックを聴かせてくれます。

ソングライティングやバンドの個性など、第一級とはいえないかもしれませんが、1970年という時代の、アシッドロック的ヘヴィサイケからタイトなハードロックへの、過渡的で混沌としたエネルギーが感じられます。ヘヴィなパワーチューンだけでなく、当時の英国ニューロック勢(ハードロック、プログレ)からの影響が見え隠れするスローナンバーなんかもなかなか面白い。ハモンドオルガンが活躍するので、オルガンハードロックが好きな人も一聴の価値ありかも?

言い忘れてましたが、これも「ボーカルがちょっと調子いい」つながりでした。


Big Brother Featuring Ernie Joseph
Confusion: Big Brother Featuring Ernie Joseph


Giant Crab
Giant Crab Comes Forth


Giant Crab
Cool It... Helios