ヘヴィサイケ特集 その17 | サイケデリック漂流記

ヘヴィサイケ特集 その17

今回からは少し趣向を変えて、トリオ編成のバンドを特集してみたいと思います。


Fields
LAのバンドで、唯一のアルバム(1969)は元Merry-Go-RoundのBill Rinehartのプロデュースによるもの。日本のSpeed, Glue & ShinkiやフィリピンのJuan De La Cruzがカバーしている''Take You Home''は、このバンドがオリジナルということで、以前から聴いてみたかったのですが、この6月にめでたくCDが発売されました。

内容は期待にたがわぬもので、基本はブルースベースのアメリカンヘヴィサイケなんですが、女性コーラスが入っていたり、もっと幅広くブリティッシュハードロックなんかも包含するようなスケールの大きさを感じます。Speed, Glue & Shinkiの(もともと純粋な日本人ではないということが主因なんでしょうが)国籍不明でアングラな感覚は、このへんのバンドの影響もあるのかなと思ったりしました。

アナログではB面を占める約19分の''Love is the Word''は、単にヘヴィサイケ的なインプロが延々と繰り広げられる長尺曲かと思いきや、ホーンやゴスペル風女性コーラスが入ったヘヴィブルースチューンがまったりと展開したかと思うと、それがいつの間にか、まるでZepのカシミールを先取りしたような「東洋ミーツ西洋」風サイケデリアに発展するという、かなり変態・・・いや、大変なスペクタクル巨編。単純明快かと思いきや、なかなか一筋縄ではいかないところがサイケかも・・・。

ちなみに、Fieldsの前身は5人組のW.C. Fields Memorial Electric String Band(のちにESBと改名)で、ガレージコンピCD、''Pebbles Vol.9''にモンキーズのバージョンで有名な''(I'm Not Your) Stepping Stone''が収録されています。(オリジナルのPaul Revere & The Raidersよりも、彼らのシングルの方が早かったらしい。)


The Fields
The Fields (試聴はこちら



Peacepipe
日系人ドラマーGary Tsurudaを擁する、ギター、キーボード、ドラムのベースレストリオ。楽器編成はDoorsと同じで、レコーディングではリーダーでギターのJohn Uzonyiがベースを弾いています。1968年に1枚のシングルを出したのみのバンドでしたが、1995年にRockadelicからアナログLPが発売されました。2002年のCD再発では、それにシングル両面を含む3曲のボーナストラックが追加されています。

先頭の数フレーズを聴いただけで、ヘヴィサイケファンなら「これこれ、これだよ!」と手を打ちたくなるような「おいしい」ギターサウンドなんですが、私が好きなのは彼らのコテコテさで、2曲目なんかまるでIron Butterfly! Doorsなんかもかなり入ってます。ボーカルがSean Bonniwell(Music Machine)やDoug Ingle(Iron Butterfly)みたいな歌舞伎系なのも良い。

ドロドロのヘヴィサイケデリアだけでなく、''I Can Never Take Your Dreams Away''とか、アナログではラストの''Love Shines''なんかのスローナンバーもベタベタで素晴らしい。DoorsやIron Butterflyが好きなら、彼らの魅力もきっとわかっていただけると思います。オススメ!


Peacepipe
Peacepipe (試聴可)



Ursa Major
デトロイト編で紹介したThe Frostのフロントマン Dick Wagnerと、Amboy DukesのベーシストだったGreg Aramaらが結成したヘヴィロックトリオ。アルバムは1972年の一枚のみです。

最初の曲が、Dustの名曲''Suicide''を彷彿とさせる「ドコドドン ドンドン ドコドドン ドンドン」なドラム、ドゥームな雰囲気にドラマティックな展開、ハイトーンシャウト系のボーカルが高揚感を生む、とてもカッコいいヘヴィロックナンバーで、70sマイナーハードロックファンは思わず涙という感じです。

ただ、結局そのあとの曲にこれを超えるものがなく、曲調に変化をつけているものの、いまひとつ盛り上がらない印象なのが残念なところ。でも、プロダクションとしては、丁寧にしっかりと作られています。(サイケ的には褒め言葉にはならないか・・・。)


Ursa Major
Ursa Major (試聴可)