第22回 Electric Prunes | サイケデリック漂流記

第22回 Electric Prunes


この写真見たら、「チカーノ・バンド?」「南米サイケ?」と思われるかもしれませんが・・・。これは、映画「イージー・ライダー」の娼館のシーン(*1)で「キリエ・エレイソン」が印象的に使われていたエレクトリック・プルーンズです。

LA出身(シアトル出身という説は誤り)のバンドで、60sサイケ/ガレージのコンピでは必ずといっていいくらい取り上げられる"I Had Too Much to Dream Last Night"(邦題「今夜は眠れない」)は、60sサイケのテーマソングといえるほどの超有名曲です。

このバンドの特色としては、パンキッシュなガレージサウンドと、知的な繊細さやポップさがひとつのアルバム、ときには一曲の中に同居していることでしょうか。その特徴がわかりやすいのがデビュー作(1967)で、これは試行錯誤の結果というより、旺盛な実験精神によるものと捉えたいところです。(実際、ギターのエフェクトなどは当時の多くのバンドに影響を与えたようです。) パンキッシュな部分はPretty Thingsなどの英国のビート/ガレージバンドの影響が大で、これはストーンズのエンジニアだったデイヴ・ハッシンジャー*2)のプロデュースによるところも大きいのではないかと思います。

私が愛聴しているのは、よりサイケ色を強めたセカンドアルバム"Underground"(1967)で、シングルで結構なヒットを飛ばしたのに、タイトルどおりの「アンダーグラウンド」でダウナー志向なサイケアルバムを作ってしまったバンドの心意気(?)が泣かせます。特にキング=ゴフィン作の"I Happen to Love You"(オリジナルはThe Myddle Class)などは、ガレージっぽさと繊細さが同居したプルーンズならではの素晴らしいサイケチューンになってます。


アーティスト: The Electric Prunes
タイトル: Underground

「キリエ・エレイソン」が入ってるのはその次のMass in F Minor(1968)です。これは全曲、当時キャピトルのお抱えプロデューサー/アレンジャーだったDavid Axelrodの手による作品で、彼のお遊びというか実験につきあわされた感じで、制作にはほとんどメンバーの意思は反映されていないようです。「キリエ・エレイソン」は好きだし、教会音楽とサイケを融合させたコンセプトアルバムというアイディア自体は面白いのですが、アルバムを通して聴くと、最初の二作にあったプルーンズ独特の「冴え」のようなものは、ここではほとんど見られません。(余計なボーナストラックの2曲も「これプルーンズ?」という感じ。)

これに反して、一般のロックファンにもお勧めしたいのが、1997年に発売されたライブStockholm 67です。この時代のライブ作品としては音質・演奏ともに素晴らしく、JAの"Bless Its Pointed Little Head"にも匹敵するような内容だと思います。

ということで、その潜在能力とは裏腹に、アルバム作品に恵まれなかったバンドという印象があるのですが、なんと去年(2004年)、オリジナルメンバーによる新作アルバムが発表されました。

追記:
この他にElectric Prunes名義で、1968年に"Release of an Oath"と"Just Good Old Rock and Roll"というアルバムが発売されていますが、前者はアクセルロッドによる"Mass in F Minor"の続編的作品、後者は(オリジナルメンバー不在で)デイヴ・ハッシンジャーが勝手に作ったような作品みたいです。どちらも聴いてないので評価はできませんが、レコード会社(プロデューサー)の都合で作られたアルバムのようです。

*1
このあとマルディグラ~LSDトリップの場面へと続く。

*2
グレイトフル・デッドのデビュー作のプロデュースもこの人。