春先の低気圧が、雷雨をもたらす。春雷である。かつて同名の映画があった。主人公夫婦の俳優の名前は、確か永島某と石田えりこさんだったと思う。若い二人が農村で農業を必死に守ろうとする映画であり、見終わったあとの爽快感が印象的であった。
昨日の夕方、春雷があった。丁度妻の病床で、妻を見舞っていた折である。
春雷だよ。もうすぐ春だねと妻に問いかけた。雷の音聞こえる。と聞くと、聞こえないと答えた。もう一度春雷。ほら、今、わかるだろう。
幽かにうなずいた。
もうすぐ春である。
主治医の先生と話して、退院を来週とした。
妻にとって、春である。