局地戦における戦略的撤退
いつか、どこかで誰かが言った。
『はじめはみんな少年だった。闘わなければ何者にもなれない。』
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総書記です。
世間では、高校の履修問題が騒がれていますね。
ちなみにぼくの高校では、後輩の異臭問題が騒がれていました。
柔道部だったのです。
ぼくは都内のカトリック系の私学で幼稚園から高校までを過した。
驚くべきことに、幼稚園から一貫して男子校だった。
そりゃあ、ねじまがるよね。
ちなみにぼくが通っていた高校では、文部科学省のルールなんて、少しも守られていなかったよ。
倫理やら保健体育やらの授業なんか、一回も受けたことがない。
当時、一度、教師になんでそういう科目をやらないか、
聞いたことがある。
なんて答えたと思う?
―私学だから?
―受験で役に立たないから?
・・・甘い。
―ウチの学校ではそれらの内容は、『宗教』という科目で教えているんだ。
と。
いやいや。
蛍光灯で対戦相手の後頭部を叩き割って、プロレスで許されている5秒以内の反則行為だと
主張する松永弘光というプロレスラーがいますが。
そんな感じ?
キリスト教存在以前のギリシャ哲学はどうなるのか。
聖母マリアの処女懐妊は保健体育とどう折り合うのか。
いくらなんでもツッコミ所多すぎだろう。その回答は。
公○党か。
ただ、流石に学校側も確信犯だったと思う。
倫理とか、保健体育とか、布袋のマイクとか、テキスト配ってもすぐに捨てていいよみたいな
アナウンスを担任からされていたような記憶があるから。
ウチは私立だけんね!
そこらへんの学校とは違うんじゃけんね!
というキリスト教らしからぬユダヤ教的な
選民思想もあったような気がする。
でもさぁ、今回の件って
本当に文部科学省やマスコミも
最近初めて知ったことなのかなぁ。
なんだかプリプリ怒ったり、なんだかガヤガヤ騒いではいるけれど…。
先ほどの松永弘光選手だって、蛍光灯自前で用意して、
スタッフやプロレス会社関係者全員に隠してるわけではないでしょう。
蛍光灯買ったら領収書もらってるでしょう。
観客は蛍光灯攻撃待ってるでしょう。
面白いから、観客も求めているから、
黙認してきたわけでしょう。
会社、松永弘光選手、観客の共犯関係だったわけでしょう。
今更ファンが松永弘光選手を
卑怯者扱いしたりはしないでしょう。
今回のこの騒ぎ、なんだか茶番な感じがするのは、
きっとぼくだけではないでしょう。
複雑に人々の利害が絡んでいる、
その奥にどこかの誰かの意志を感じる。
メディアが流す雑音は時に強者のヒソヒソ話を隠蔽し、
時に弱者のあえぎ声をかき消す。
ぼくらはせめて、自覚するべきだ。
すべての声を聴けているわけではないことを。
メディアが拾う声よりも、
メディアが捨てる声の方が遥かに多いということを。
プロレスマスコミの人も、ムタの毒霧の仕掛けは知らないんだってさ!!
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さてさて、今日はCa○Camを発行している出版社に営業。
小学○。
そういえば、昔、小○生が大好きな先輩がいたなぁ。
捕まってなければいいなぁ。
地下鉄の神保町駅から出るとすぐに会社につながっている。
女子社員がみんなエビちゃんなのか、
というメディアに踊らされている童貞的な憧憬を持って見定める。
いるのは、文化系の優しげなサラリーマンばかりだった。
残念だが、安心。
食われることはなかろう。
振り向けば、地味がいた。
ジミーではない。
タカトだった。
相変わらず陰が薄い。でも、肌は黒い。
「コーヒーの飲みすぎじゃないか?」
「いや、沖縄行ってたんだよね。」
「いつ!?」
…油断もスキもない男だ。続けて詰問。
「何してたの?」
「みんなで海遊びとか、ドライブ。」
…ヒネリも華もない男だ。続けて詰問。
「金は?」
「ないよ…。カード。そろそろ学生ローンかな。」
…キャッシュも将来性もない男だ。
才能と人望と根性しかねーじゃねーか。
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で、会社入って担当の方がいらっしゃるのを待つ。
ぼくとタカトのタッグは、営業的な相性は良い。
ぼくは攻める。タカトは守る。てゆーか癒す。
まぁ、つまり、押しの強いヤツと、
物腰柔らかいヤツのコンビが具合がよい、ということだ。
ある程度プレゼンの方向は定まっている。さぁ来い。
不発弾処理班の心境だ。
ぼくの想定では、編集者は不発弾だ。
大手出版社に勤めて何年経っただろう…。
入社当初の、
『オレが世の中ビックリさせるような革新的な本を世に出して見せる!』
という燃え上がる思い。
今はどこへ行ってしまったんだろう?
東京砂漠は冷えきっていて、情熱大陸は見当たらない…。
母さん、お盆にも帰れなくてごめんよ。
今度帰る時は、みんなで鳥の水炊き食べよう。
うん、約束だよ。
そんなイメージ。
大手出版社という社会にスポイルされ、
不発弾になってしまった彼の心に、
ぼくたちの企画と情熱で点火する。
そんな不発弾処理班的な心境だった。
応接室で待つこと数分。
来た。
不発弾が。
いやいや。
不発弾じゃなかった。
来たのはバリバリの実戦配備型核弾頭だった。
わかるんだよ。
ぼくも高校の時、けっこう真剣に柔道やってたから。
対面している人間が、どれくらいの身長、体重、筋肉量か。
ザッと見た感じ36歳、170cm、83kg、ベンチプレス100kg弱、
ケンカ200戦、戦績不詳。奥さん子供一人ずつ。
愛人は部下の15%、レオン系と言われるのは不本意…
みたいな感じ。
ギラギラした目でこちらを睨みつける。
ピチピチのジーンズ、ゲイ的なフリフリのついたシャツ
第2ボタンまで開いている。彼が挨拶するより先に、
胸毛さんがこんにちは。
おまけに…スキンヘッド。
映画『亡国のイージス』の寺尾聡のセリフを思い出す。
『この弾頭は特殊なり。繰り返す。弾頭は特殊なり。』
我々不発弾処理班は特攻部隊に非ず。
真に不本意なれど、一旦の戦略的撤退!!
できるわけねぇ。
アポ取ったのこっちだし。
てゆーか逃げても回りこまれそうだし。
目がギラギラしてるし。
エンジェルダストをやってるかも知れない。
彼は重々しく名乗った。
『はじめまして。アフガン民主化解放戦線少佐、ザンブロアです。
口の悪いヤツは“熱砂の虎”なんて言うがね。』
…言わない。
おそるおそるプレゼンし始める。
企画書を渡す。
ぼくの話なんか聞いちゃいねぇ。
企画書をスゴいスピードでめくり倒す。
脅えて目がパキパキになってるタカトが呟く。
『ザンブロア少佐はその、冷徹な戦術を見極める目で、
厳しい砂漠での局地戦を生き延びてきたんだ。』
落ち着け。
ここは神保町だ。
ここは、CanC○mとか出して、
全国の若い女性にフリフリの服を着せてる会社だぞ!!
あっ、フリフリ…。
『うし○ととら』とか出して、
全国の少年に友情と情熱を広めている会社だぞ!!
あっ、とら…。
ザンブロア少佐は企画書を閉じ、プレゼンするぼくを遮って口を開いた。
「で、君たちは何がしたいの?」
「帰りたいです。」
危うく即答するところだった。
ぼくも、それなりに修羅場はくぐってきたつもりだ。
ヤクザに電話で説教されながら
テレビ局のエントリーシートを書いたこともある。
オール明け無勉でTOEIC受けたこともある。
昔の彼女が部屋に忘れていった下着を
彼女の実家に届けたこともある。
でも、ザンブロア少佐には勝てないよ。
砂漠で銃撃戦したことないもん…。
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ザンブロア少佐、改めI編集次長は、企画に対しては、
否定的なスタンスながらもそれなりに時間をとってくださり、
編集のプロとしてのアドバイスをくださった。
結論としてはたいへん良い人でした。
ぼくたちの行動力をたいへん評価してくださった。
なんでも戦後ならぬ戦間期の日本には、
ぼくたちみたいな人材が必要らしい。
自衛隊の民間化も検討を始めなくてはいけないらしい。
戦闘のプロとしてのアドバイスをくださった。
でも、その議論には乗らなかった。
そもそも、不発弾に点火するのは
不発弾処理班の仕事ではなかったから。
そうしてぼくとタカトは○学館を後にした。
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外は雨が降っていて、少し肌寒い、
ゲリラ戦にはもってこいの天候だった。
○学館のビルの上の巨大看板、エビちゃんは最高の笑顔。
誰を笑っているんだい?
ぼくたちは崩れた体制を建て直すためにカフェを探しながら、
靖国通りを九段下に向かって歩いていく。
関係はないがこの先にはぼくの通っていた高校がある。
松永弘光。
そんな小さな事実さえ、この時のぼくには優しかった。
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夜、テレビで総合格闘技『HEROs』を見た。
元タレントの金子兼が、しょうこりもなく
本職の格闘家、所選手に焼き払われていた。
そしてカリスマ、前田日明兄さんに説教されていた。
「アマチュアからやり直せぃ。」
思い出すのはあの映画のあのシーン。
―オレたち、もう終わっちまったんですかねぇ…。
―バカやろう、まだ始まってもいねーよ!!
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冒頭のことばは、PRIDEミドル級グランプリ2005セカンドラウンドのキャッチコピーです。
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