パーティーの準備
いつか、どこかで誰かが言った。
『本当の友達ってのは、お前の良いところを笑顔で10コ挙げてくれるヤツじゃない。
お前の悪いところを10コ挙げて笑顔でいてくれるヤツが、本当の友達なんだ。』
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総書記です。
そういえば、元祖総書記が率いる北朝鮮人民党が核実験。
ついにやりましたね。
ここで、メディアの流す大音量のトランスミュージックに
踊らされがちな我々が気をつけなくてはいけないことが一つあります。
それは、核実験を行ったのは、あくまでも、金さんが率いる政党である、ということ。
北朝鮮という概念、あるいは人民の集合たる国家が核実験を行ったわけではありません。
近代的民主主義国家であるアメリカや、日本の場合、
原則として政権政党の意志決定はその政党に政権を託した人民の意志決定です。
一致しなくとも、少なくとも責任は人民が負わなくてはいけません。
しかし、北朝鮮の場合は近代的民主主義国家ではないため、
政権政党の意志決定は、必ずしも人民の意志決定と重なりません。
このことを見失うと、我々は、されなくてもよい他者に、しなくてもよい攻撃をしてしまうハメになります。
彼女にフラれた腹いせに、彼女の新しい彼氏に暴力をふるうような。
コールマンに腕を折られたリベンジに、ランデルマンの足を折るショーグンさまのような。
それは、とても無駄で、悲しく、滑稽なことです。
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さて、出版プロジェクトが決まった。まずは、仲間探しだ。
昔のイベント仲間に声をかける。
イベントチームと言っても、ぼくが最後にイベントを打ってから半年以上が過ぎている。
そのイベントも企業のプロモーションイベントであって、
決して心から必死になって、挑戦者として、表現者として取り組んだものではない。
イベントについてのぼくの考え方は、いずれまた、どこかで書きます。
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というわけで、イベントのチームの仲間たちも、今はみんなバラバラだ。
大学を卒業して起業したやつ。就活が終わってヒマをもてあましてるやつ。
親友の妹に手を出して高飛びしたやつ。就活を控えて自己分析本を買って捨てたやつ。
史上最大の卒業式をやろうと、勢いで2007年三月に東京ドームを借りたやつ。
ムッシュかまやつ。
いろんなやつがいる。
その中で出版プロジェクトに最適なチームを組もう。
今はまだ大学生の、就活を終えた四年生と、就活を控えた三年生で組む。
ぼくの周りには世間一般でいうところの“デキル”やつが多い。
あんまりにもぼくが勢いよく、何もできないから、助けなければいけない気になるのだろう。
あるいはぼくの小太りな可愛らしい身体が目当てか。
世間ではぼくを絶倫プーさん、夜のドラえもん、床上手トトロ、なんて呼ぶ女性もいる。
とりあえず仲間探し。
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一人目はタカト。
古い企画仲間。もともとはある大学の学園祭実行委員会の幹部だったが、
今は学生だけでバーを開き、プランナーを名乗っている。
バーテンだが、大学三年生。留年してる。
燻製にした卵みたいな顔色でウルトラマンみたいな顔の型をしている。
どんなにイヤな仕事でも、文句一つ言わず的確にこなす。
また、どんな修羅場でも絶対に冷静さを失わない。
こういうやつが不可能を可能にするんだ。
イベント前日、どうしても手に入らない機材があるとする。
こいつは徹夜で、なぜか翌朝にはそれを作って現れる。
NHKで宮大工のドキュメンタリーを見たことがあるが、
こいつと同じような瞳をしていた。
妙に納得してしまった。
出会ってからの四年間、こいつが、『できない』と口にしたものは彼女だけだ。
何をするチームでも、そこにこいつがいれば、必ず結果が向上するはずだ。
たぶん、F1のピットにいても、グレイシートレインの一員になっても、
北の共和国でマスゲームの構成員になっても、周囲から、一目おかれることだろう。
今年就活があるから守りに入っているのか、こいつを誘うのは手こずった。
『タカト、一緒に本出そうぜ!』
『えー、バーあるから忙しいよ。』
『大丈夫だよ。』
『大丈夫じゃないよ。週五日、17時~翌朝5時までカウンターに立たなきゃいけないんだぜ。』
『残りの週二日と、週五日5時~17時まで空いてるじゃん。』
『そうか、じゃあやるわ。・・・あれ、いいのか? オレ。』
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二人目はタカオ。
去年の春のイベントで協力してもらって以来の親友。
大学の四年生。大企業に就職が決まっている。
信じられないくらいモテる。
決定力不足の日本代表に今、もっとも求められている人材。
誰かオシムにこいつを紹介してやってくれ。
おまけにこいつは世の中の表参道と裏原宿を知り尽くしている。
たまに勘違いしているやつがいるが、東京のギャル男を束ねているのは押尾学ではない。
アンダーグラウンドエンペラータカオだ。
こいつがもし高倉健ばりに不器用だったら
今までの人生で10回は逮捕され、15回は東京湾に沈められ、
30人は子供を養っているはめになっていただろう。
だが、前科はなく、生きていて、独身だ。
つまりそれくらい器用だってこと。天才肌。
難しいことも、こいつがやると、とても簡単そうに見える。
スニーカーの靴紐を結ぶくらいの調子でドSな熟女を亀甲縛りに仕立てあげることも造作ないだろう。
子供は真似しないように。
就職先が決まっているから守りに入っているのか、こいつを誘うのは手こずった。
『タカオ、一緒に本出そうぜ!』
『えー、東京ドームで卒業式やろうよ。その方がアツイよ。』
『じゃあ、スゴいぶ厚い本にするよ。』
『そうか、じゃあやるわ。・・・あれ、いいのか? オレ。』
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三人目はジン。
去年の春、ぼくは日本の大学生の代表団の一員として、中国に行った。
代表団は国が選ぶんだから例の如くろくな学生じゃなかった。
偏差値のバカ高いマジメなお子様ばっかりだった。
その中で本格的にロクデモナイ奴が二人いた。
それが、ぼくとジンだった。
大学四年生。大手出版社に就職が決まっている。
ぼくとこいつは毎晩、北京大学の学生に議論をふっかけまくった。
ついでに北京の女性にぶっかけまくった。
帰国後、日本政府から報告書を求められた。
こいつが仕上げたそれは、日中問題から目を反らさずに交流を深めあう
両国の学生の感動的な交流記だった。
北京での痛快な暴れっぷりは割愛されていた。
こいつは下北沢でフリーペーパーの編集長をしていたのだ。
ちなみにこいつは信じられないくらいの低い声の持ち主で、
話してるだけで犬が寄ってきたり、そばにいるやつの肩こりが改善されたりする。
恐るべき低周波だ。
就職先が決まっているから守りに入っているのか、こいつを誘うのは手こずった。
『ジン、一緒に本出そうぜ!』
『いやぁ、来年からオレ、それが仕事だもん。今年はいいよ。』
『いつか、どこかで誰かが言った。“今日闘わないヤツが、明日闘うと言っても私は信じない”。』
『そうか、じゃあやるわ。・・・あれ、いいのか? オレ。』
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四人目はサワキ。
内定先の企業のインターンシップで出会った。
大学四年生。現役フリーライター。
持ち手のないナイフのような男。なんでも切れる。
それが自分の肉体だとしても。
頭が良い。良すぎるんだ。だから器用には生きられない。
ちなみに甲高い声でよく喋る。関西人。うっとおしい。
就活中に業界三位の商社の最終面接で、
『君は、弊社は今後どのような方向に進むと思う?』
と、聞かれたこいつは、ここぞとばかりに熱弁をふるった。
市場のニーズ、競合企業の動向を分析し、今後10年間の社会の見通しを立て、
その上でその会社の取るべき道を懇切丁寧に面接官である役員に説明した。
それは面接ではなくてコンサルティングだった。
学生特有の空しくも美しい精神論を期待していた面接官はこいつに言った。
『君みたいな優秀な人はウチなんか入るより、フリーで生きていった方がいいよ。』
役員さんの渾身の嫌味がこいつの心に与えたのは反省ではなく、勇気だった。
今はフリーライターとして駆け出しだが、パンクを貫いている。
仕事が駆け出しだから守りに入っているのか、こいつを誘うのは手こずった。
『サワキ、一緒に本出そうぜ!』
『いややぁ。お前が仕切るのは気にくわん。』
『いや、仕切るのはたしかにオレだけど、オレが仕切るって決めるのはお前だぜ。』
『そうか、じゃあやるわ・・・あれ、いいのか? オレ。』
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最後はサイトー。
企画の仕事の相方。
ぼくが本気で動く時は必ずそばにいてくれる男。
ケンカっ早く、飽きやすいぼくを時にいさめ、時に煽り、
時にはぼくのしたことのために、ぼくの代わりに頭を下げてくれる。
個人的にはぼくとこいつはCHEMISTRYやチャゲアス以上の名コンビだと思っている。
世の中には、個性の異なる二つのものがあわさることで、
思わぬ力を発揮することが多々ある。
醤油と山葵、セーラー服と機関銃、天コジ・・・。
ベニー・ケー?おとといきやがれ。
大学三年生。留年してる。
イベントチーム以外にも、全部で17のサークルに所属している。
モテるし、集客力はハンパじゃない。
コミュニュケーションの達人。
ギャルと政治家と格闘家とジミー大西に四方を囲まれて
会話を成立させられる大学生がいるとしたらこいつくらいのもんだろう。
だけど、こいつの本質はそんなことじゃない。
チャラい奴はメンズエッグを開けばいくらでもいる。
男らしい奴は各大学の応援団を探せばいくらでもいる。
だが、メンズエッグなみのチャラさと、応援団なみの男らしさを同時に成立させることは難しい。
そんな奇跡が、この男だ。
今年就活があるから守りに入っているのか、こいつを誘うのは手こずった。
『サイトー、一緒に本出そうぜ!』
『オレ今年就活だから無理だよ。』
『無理じゃないよ。無茶だけど。』
『そうか、じゃあやるわ。・・・あれ、いいのか?オレ。』
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こうして、パーティーが揃った。
パーティーの準備が整った。
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冒頭のことばは、ドラマ『オレたちに明日はない』の中で、主役を演じたダウンタウンの浜田さんが、
もう一方の主役を演じていた木村さんに贈ったことばです。
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