第2外国語への手引き(第9回:英語・スペイン語などの現在完了形~前編) | Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

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<本記事を引用された場合、その旨を御連絡頂けると有り難いです。>

今回は現在完了形。私たちの多くは第1外国語として英語を学ぶ時にこの時制に難儀する訳ですが、

①完了

②結果

③経験

④継続

の4つの意味を持つ・・・確かに「ここまで」は学校で学ばれた通り。日本語にも以前は完了の助動詞(『ぬ』・『り』など)が有って、それを通じて説明した方がやりやすいとも考えたのですが、ここでは既知のものとしておきます。


実はこの「現在完了形」に関する考え方が、上述の①~④はベースにしてはいるものの、英語に近い「はずの」ドイツ語やフランス語では相当に英語で異なる事、そしていわば英語「そっちのけで」両言語が文法的に近い事をずっと意外に思っておりました。


具体的にはこういった事です:

(1)完了形を示す助動詞は英語ではhaveのみであるが、ドイツ語ではhaben(英 have)の他にsein(英 be)、フランズ語でもavoir(英 have)の他にe^tre(英 be)2種類が有る。

ドイツ語でsein、フランス語でe^treを助動詞に出来る「一部の自動詞」もほぼ共通していて、

ドイツ語を例に挙げると、

a)場所の移動

独Alle Leute sind an den Flu[s] gelaufen. (※[s]:エスツェット)

英All people have run to the river.

b)状態の変化

独Das Boot ist gesunken.

英The boat has sunk.

なお、青字のsind, istがseinの人称変化したもので、下線部が過去分詞です。

ドイツ語の「過去分詞の位置」が英語やロマンス諸語とは異なる点も注意ですね(他のゲルマン諸語から見ればドイツ語は決して変わり者では無いのですが)。


(2)現在完了形で過去を表わす事も出来る。

というよりは、フランス語の現在完了形は「複合過去」といって、過去時制の代表格となってしまっています。(本来の「単純過去」時制に取って代わってしまいました。)

実は、同様の事がイタリア語でも起こっており、これを「近過去」と言います。


これらを表にまとめると以上の様になります。

(但し、英語と直接関係のない「ロマンス諸語とゲルマン諸語以外」は載せていません。)

(1)完了を表わす助動詞が1種類か2種類か?

<ゲルマン諸語>

ドイツ語:2・・・haben(英 have), sein(英 be)

英語:1・・・have

<ロマンス諸語>

フランス語:2・・・avoir(英 have), e^tre(英 be)

イタリア語:2・・・avere(英 have), essere(英 be)

スペイン語:1・・・haber(英 have)


意外とスペイン語が英語とが類似している様です。そして・・・


(2)英語での現在完了形は過去を表わせるか

ドイツ語:△(現在につながる過去の場合は使用可)

英語:×(厳密に不可)

フランス語:○(「複合過去」として、過去を扱う方が普通。)

イタリア語:○(「近過去」として、過去を扱う方が普通。)

スペイン語:△(現在につながる過去の場合は使用可)


という事です。

現在完了形に関しては、第2外国語としてはポピュラーなフランス語やドイツ語よりも、スペイン語(これも第2外国語としてはポピュラーですが)の方が用法や考え方が近と言えましょう。


では、どうして英語とスペイン語とが「この文法事項」に関しては近くなったのでしょうか?(つづく)


参考文献:

[1]三好助三郎:「新独英比較文法」,郁文堂,1977.

[2]ジュゼッペ・パトータ:「イタリア語の起源」,京都大学学術出版会,2007.