第2外国語のススメ(2.フランス語,文法上の得失) | Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

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<本記事を引用された場合、その旨を御連絡頂けると有り難いです。>

前記事では第2外国語の選び方について3つのパターンを用意しましたが、今回は実際に候補を挙げた上で得失を述べてみる事とします。


第1回は「フランス語」の『文法からみた』魅力と特質。

フランス語はスペイン語やイタリア語と共に「イタリック語派」の一員であって英語の含まれる「ゲルマン語派」ではありませんが、英仏両者は可成り類似した言語です。端的に言えば、英語はゲルマン語派の中で『最もフランス語被れした言語』と言えそうです。


(1)フランス語学習上の有利な点として、アクセントの容易さが挙げられます。

英語を学ぶ際に困惑する事柄として、「発音」「スペル」「アクセント」が挙げられると思います。特に英語のアクセント問題は難しく、それをクリアするためには

a)単語を覚える際にはアクセントもいちいち「丁寧に」覚える。

b)アクセント規則(-tionの手前の音節に必ずアクセント,など)を「詳細に至るまで」把握し、適用する。

という「際限の無い」作業が必要です。

これは、『「多くの種類の規則」をいくら覚えても、英語のアクセント問題には「完璧には対応出来ない」』

という事を示しています。

事実、ペーパー試験(センター試験など)のアクセント問題の回答率は「問題形式のシンプルさの割には」相当に低く、私が模擬試験などを受験していた時も『パーフェクト正解の場合は運が良かっただけ』と思えたぐらいでした。

(著作権の関係もあるので掲載しませんが、「英語アクセントのルール」は可成り膨大な分量があります。宜しければ各自で御確認下さい。)


一方、フランス語は簡単です:

単語としては、『一番最後の音節』にアクセントがある。

ただこれだけです。そう、これだけなんです。ですので、フランス語においてはは単語アクセント問題は作り様が無いという訳です。


(2)フランス語学習上の有利な点として、文法が英語に次いで易しい事が挙げられます。

これは実際に学んで頂くしかありません。恐らくこれは「印欧語のみの枠組み」ではなく、天然言語全体の枠組みの中でも文法の易しさの順序は「英語」「フランス語」「それ以外」の順です。

格変化がほぼ消失,人称変化も簡素化・・・言葉の「ぶれ」が少ない一方で味気ないという一面があるかもしれませんが、学習という面では掛け替えの無い大きな魅力でしょう。



(3)フランス語学習上でやや有利な点として、英語と違ってスペルと発音とに大きな食い違いのない点が挙げられます。

英語は書き言葉がほぼ固定化された後の16世紀に「大母音推移 」(これも「あすか・よしの談義」で後日紹介予定)という大きな発音の変化があったため、スペルと発音との対応が非常に取りにくくなったという経緯が有ります。一方、フランス語においてはその様な不一致が殆どなくて極めて規則的です。


但し、いわゆる『ローマ字の感覚』でいくと飛んでもない目に遭う場合も多いので学習初期には注意が必要です。例としては oiseau[wazo](鳥)などの"oi"を「ワ」と発音するという決まりはが有名。フランス語には二重母音が無い(但し、半母音は有る)ため、この様に2つの母音字が重なっている場合は要注意と考えなければなりません。また、最後の子音字の発音されない場合が圧倒的に多いのも面食らう事ではあります。


(4)フランス語学習上のやや不利な点として、アクセント記号などの補助記号の種類が多い点が挙げられます。

フランス語のアクセント記号としては、

アクサンテギュ('),アクサングラーヴ(`),アクサン・スィルコンフレクス(^)の3種類があます。その他、2重母音を外来語などのために敢えて発音する場合につかうトレマ(・・)という記号、文字の下に鬚の様に付けるセディーユという記号が有ります。

・・・これを読んでこう思われる方もいらっしゃると思います。

「単語のアクセントが最後(の音節)と決まっているのに、なんでアクセント記号があるんだ?しかも3つも!」

要するに、これらのアクセント記号はアクセントを示さず、発音の仕方を決めているからに他なりません。


詳細は文法書などで御確認下さい。とにかく困った事に、これらの記号は(英語とは違って)必ず付けなくてはなりません!これはフランス語を非常に難しく(取っつきにくく)見せている大きな要因だと考えられます。


(5)フランス語の学習を非常に難しくしている点として、発音が複雑な点が挙げられます。

まずは母音の種類が多く、しかも鼻母音という特殊な母音がいくつか含まれている点は難儀です。母音の種類が乏しい日本語を話す者にとっては、発音が困難という事に当然なりますから。

そして、rの音が特殊かつ特徴的です。これも日本人には相当な訓練が必要で、フランス料理屋で店員が「メ『ル』シー(有り難う)」というのを聞いていると腹が立ちます。

あとは2つの語の『並び方』によって発音が変化する規則たち(リエゾン・エリジョン・アンシェヌマン)があり・・・まあ、やめてもらいたいぐらいです。


それでも、上記の(1)~(3)は魅力的であります。もちろん、フランス語には『文法以外』にも・・・

a)多くの人々によって使われている「世界への扉」となる言語である

b)美しい発音である

という魅力があるとは言われています。ただ、a)はどちらかというと『結果』であり、b)は上記の(5)に示した『複雑な発音』という『裏の面』を併せ持っている事にも注意する必要がありそうです。