先日自然食品通販の㈱らでぃっしゅぼーやさん主催の
セミナーに参加して来ました。

講師は麻布大学の南正人先生。
演題は「日本を蝕む、深刻な鹿害の現状を学ぼう」です。

そう!プロ・アクティブでは3年前から
「ドッグスタンス」というドッグフードを販売しています。
それは、ワンちゃんの立場にたって
という理念のもと、開発、製造されたもの。
原材料に鹿肉を入れているのが大きな特長です。

そもそも、ワンちゃんの祖先は、オオカミ。
オオカミは鹿を食べていましたので、
ワンちゃんのDNAは鹿肉を欲している・・・。
そういうコンセプトで作っています。

なので、「鹿害」と聞いたら、知らん顔はできません。

ドッグスタンス店長のタクミン(久保)が
ワンちゃんの主食、命綱でもあるドッグフードの
欠品だけは避けなければならないと、
鹿肉の原料調達に全国を奔走、
苦労しているのを目の当たりにしていたので
「鹿害」といわれるほど野山に増えている鹿なのに
私達にとっては鹿肉が足りない・・・。

この矛盾が生じる現状を私なりに
ちゃんと理解したくて、昨日は
セミナーに参加させてもらったのです。

セミナーに参加して感じた結論は
結局は「答えがでない」というものだったのですが
現状を多くの方に知っていただくことから
解への道が開けていくかもしれないと思ったので
以下、南先生のお話から印象に残ったことを
シェアさせていただくことにしますね。

ちょっと長くなると思いますけれど
お付き合いくださいね。

まず、奥多摩や長野県の鹿害の被害の様子を
写真で見せていただきました。

一見美しい林に見えるのですが、どこかおかしい・・・。
そう、草が生えていないし、背の低い若木がないのです。
世代交代ができていない林なんですね。

鹿は低栄養、多食。
おまけに、環境適応性が高い。
草から樹皮から木の実まで、
前足で立って背が届く限りのものを食べます。
食べ物がなくなると群れで移動します。
落ち葉まで食べちゃうのですって。

なので、鹿が来ないように「しし垣」(フェンス)を作っていると
その内側だけが、草がのびのびと育ち
その外は、草っこ一つない丸裸の地面が見える・・・。
そんな様子になっています。

そういえば、昨夏に長野県の車山高原にドライブに
行ったのですが、30年前ニッコウキスゲで
一面の黄色のお花畑だった草原が、
去年は、柵で囲まれたところだけ、
まるで花壇のように咲いていました。

なんだか、天然の植物なのに、
変だなと違和感を感じたのですが、
あれが鹿害の影響だったのですね。
柵の内側にしか、ニッコウキスゲは
生き伸びることができていませんでした。

鹿が増え過ぎた害は農林業の被害にとどまりません。
森がやせていくと、土の保水機能がおち、
土砂災害の引き金になります。
また、森林の荒廃は私達の飲み水の供給源、
水源の質が保てなくなるという
ライフラインに直結した問題になってきています。

さらに、ニッコウキスゲの例のように
生態系への影響が考えられます。
樹木がなくなることで、昆虫、鳥、小動物が減ります。
貴重な植物、高山植物も喪失します。
絶滅する種がでてくる恐れもあり
自然界で最も大事な生物多様性の減少につながります。

実は、この生態系への影響というのが
最も大きな、重い課題なのではないでしょうか。

鹿が増えすぎて害になるから「鹿害」と言います。

地球上には人が増えすぎているという現実。
人が増えすぎたら「人害」といって駆除されるのでしょうか!?

人が食べていくために、農林水産業すべてに
獲りすぎ、食べすぎになってないでしょうか?
人が効率よく便利に生活するために、
エネルギーを使い過ぎていないでしょうか?
生態系を崩す頂点にいる人間の責任は?

「鹿害」という言葉を通して、
生態系の循環の中にいる人間の存在を
あらためて、見直さなければと強く感じます。

都会に住む、自分自身の生活を見直してみれば
「度を過ぎた便利さ」にあふれているようにも思います。
少し生活をサイズダウン、スモールダウンしたほうが
いいのでは?とさえ、感じました。

鹿害について学ぶという今回のセミナー中
ずっと、そのような思いが頭から離れませんでした。

さて、南先生のお話に戻して・・・。
なぜ、ここまで鹿が増えてしまったのか?

・狩猟するハンターが減っている
・積雪量が低下している
・積雪時期が短くなっている
・里山利用の低下
・ニホンオオカミの絶滅

などの理由が考えられるとのことでした。

鹿は、食べ物が減る冬を越すのが大変。
生命の危機は冬なんですね。
生後間もない0歳の鹿がその冬を乗り越えられるかどうかが
鹿の数に大きく影響します。

というのは、鹿は1歳から9、10歳で死ぬまで
毎年1頭ずつ出産する子沢山。
仔鹿が生き残れれば、倍倍ゲームのように
個体数が増えていくのです。

過去に鹿の数が大きく減った年があることがわかっていますが
その年は、大雪で冬が厳しかったという共通点があります。
ここのところの温暖化の影響で、
鹿は、冬も乗り切れるようになっているのですね。

そして、ハンターの減少。
ハンターは、どんどん高齢化していて長野県では
平均年齢65歳くらいなのだそうです。
ボランティアや趣味でという方が多数。
しかも、狩猟は多くが野鳥。
獣を専門にする人は1/3くらい。

日本はもともと、またぎの文化が残っているように
縄文時代から、つい最近まで狩猟文化が残っていたのにね。

鹿が住む山で、猟をして、良質な食肉にして流通させるのは
実はとっても大変なことなのです。

猟は緑が茂る夏はできません。
誤って人を撃ってしまう恐れもありますから
猟期が限られています。

しかも、美味しいジビエ料理の材料にするには
一発でしとめなければなりません。
脳か、喉元を狙って撃つ、即死でなければ
鹿が苦しんで、ストレスホルモンが体内に出て
肉がまずくなるのだそうです。

その腕を持つベテランの猟師さんが高齢化で
減っているのです。

さらに、しとめた鹿を新鮮なうちに
清潔に安全にさばかなければなりませんが
その施設まで運ぶのが、また重労働です。

なので、鉄砲で撃った美味しい鹿肉の調達は
かなり困難で、高値になってしまっているのです。

わなで仕掛けて獲る方法もあります。
それは季節を問わず、比較的簡単にできるのですが
わなの中で暴れる鹿にとどめを刺すのが難しく危険です。
こうして暴れて死んだ鹿肉は、やはり美味しくないのですって。

ということで、しとめた鹿で食肉として利用されているのは
全体の1%に過ぎないと言います。

99%は、その場に埋められるか、焼かれておしまいです。

「駆除」
「鹿害」
そんな言葉は人間都合の言葉に聞こえます。

鹿を殺すのはかわいそうだという意見もあるでしょう。

でも、昨日の南先生が示されたデータを見ると
鹿の数を減らすことは早急に必要とされていること
であることは間違いないです。

猟師さんの育成や、わな猟を増やすなど
対策はすぐに始めなければ!
他にも数を減らす方法、増やさない方法はないでしょうか。

同時に、現在ただ捨てさられているだけの99%の鹿の命を
少しでも「成仏」させてあげられるような
活用法を考えなければと思います。

私達の「ドッグスタンス」はもともとは
犬の進化論的見地から鹿肉の利用を考えたのですが、
結果として、この鹿肉の有効活用に
一役買っていることになっていると自負しています。

なので、たくさんのワンちゃんがたくさん鹿肉ドッグフードを
食べてくれれば、また、それに使われる
鹿肉の原料を安定的に調達できれば
鹿害を減らす一助になるというわけです。

ただ、消費を増やすと同時に
猟をする場所の近くに鹿肉解体所を作る必要もあるでしょうし、
肉や皮や骨まで、さらに活用できる方法を考えたいですね。
皮は印伝など加工品にも活用されていますが
食肉として、私達がもっと食べることが大切です。
その流通のためのインフラも整えないと。

今はジビエ料理として、高価な肉として
ごくわずかな量が流通しているのに過ぎませんので
酪農業との兼ね合いもあるでしょうが
もっと身近に手軽に鹿肉を食すことができたらいいなと思います。

セミナー終了後には
鹿肉を使ったお料理を試食させてもらいました。

image

ソテーにしゃぶしゃぶにから揚げ。

口に入れるまでは、正直なところ
私も少しだけ、抵抗があったのですが・・・。

image

想像していたような獣臭もせず
やわらかくて、クセがなく、本当に美味しかったです。

鹿肉は、高たんぱく、低脂肪。
高ミネラルで鉄分がとても豊富。
美味しいだけじゃなく、特に女性にとっては
いいことだらけの高栄養食材です。

南先生にも、この鹿肉をドッグフードに利用していることについて、
「鹿肉はアレルギーや高齢の犬にとっては
まさに『機能食品』なんですよ!」とコメントいただきました。

image ↑ 
ドッグスタンス店長のタクミン(久保)。
ソテーした鹿肉&らでぃっしゅぼーやさんの美味しいお野菜にご満悦♪


鹿肉調達のために各地を歩いて、数多くの鹿肉を食している
タクミン曰く、この日の鹿肉はかなりレベルが高い、美味しい
お肉だったそうです。


南先生は野生鹿の行動学がご専門。
25年に渡り、宮城県金華山島で鹿の研究をなさっています。

100頭以上の野生鹿の個体の識別ができ
ちゃんと名前を付けて、その生から死まで、
ずっと追っているのですって。
その中でわかってきた鹿の生態をお話くださったのですが
それが、とっても面白い!興味深いのです。

24時間しかチャンスがない婚姻OKな一頭のメスを
争うオスとオスの駆け引きのようすとか、
もう、リアルなだけに、おかしくておかしくて・・・。

でも、おかしいなんて言ってられません、
種の保存のため、どの種も必死なのですよね。
鹿も食べられる草も私達も。

これをきっかけに待ったなしの鹿害対策について
みなが知恵を出し合えたらいいなと
正解はわからないけれど、少しでも生態系を
保てる生き方、暮らし方を考えてみたいと思います。

あらためて、今回のセミナーを企画してくださった
らっでぃしゅぼーやの皆様に感謝です。
ありがとうございました!


☆ドッグスタンス☆(プロアクショップ)