注目の書———
魂の商人「石田梅岩が語ったこと」
山岡正義著(経営コンサルタント、サンマーク出版)

著者の問題意識から本書の意味、内容が分かります。

これからの時代は「ものさし」を変えていかなければなりません。すなわち経済効率や目に見える「モノ」「金」を価値観の中心にする「欧米型」資本主義から「人間を大切にする経営」への転換です。

かつての日本やヨーロッパのライン川流域に存在する中小・零細企業にみられる経営の形です。わが国の百年企業が世界的に多いのは、人間を大切にする土壌の上に企業文化が育ってきたことです。

そうした経営の源流を辿っていく中で出会ったのが、江戸時代に生きた魂の商人————石田梅岩だと著者は述べています。

梅岩は「士農工商」の身分制度が確立されていた三百年前に、「富の主は天下の人々」「先も立ち、我も立つ」「天に適って福を得る」など、当時としては驚くほど急進的な教えを説いています。

梅岩の死後、その思想は「石門心学」と呼ばれ、商工業者が指針とする生き方の教え(倫理)として発展を遂げ、国民的なモラル形成にも深く関わってきました。

昨今、海外でも注目されている「和の精神」「協調」「感謝」「おもてなし」などの心も、梅岩が遺して伝統となってきた一端であることが伺えます。

同書は梅岩の「正直こそが富みをもたらす」、「勤勉こそが安らぎをもたらす」、「倹約こそが平和をもたらす」、「自立してこそ強みを生かせる」ことから「百年企業が日本を強くする」、「梅岩に帰れ!」と説いています。