【エレベーター・ピッチ】 理解は「端的」からはじまる。 | パワポ部

【エレベーター・ピッチ】 理解は「端的」からはじまる。

「伝えたい」という想いは、ややもすると「語りすぎる」という状況を生みます。
まさに僕自身がこれ。ものすっごくたくさん伝えたくなっちゃうんですよね。
(あ、そうそう。僕、めちゃくちゃプレゼンが苦手です、、、)

でも、「たくさん=伝わらない」んですよね。
そりゃそうだ。はじめて聞いていきなりすべてを理解できる人なんているわけありません。
さあ、困った。どうしましょう? どうすれば、伝えたいことが伝わるのか?

答えは簡単。
「端的」にすること。
伝えることを「もっとも伝えたいこと」だけに絞り込むことです。

「でも、もっとたくさん伝えたい!」

いえいえ大丈夫。
その「もっとも伝えたいこと」は、大きな“呼び水”となります。
相手に小さな好奇心を発見させ、さらなる好奇心の“入り口”となるのです。
穴さえ空ければ、あとはそこからどんどん水が流れ込むでしょう。

ということで、本日はその「端的」について。
テーマは「エレベーター・ピッチ」。

……ここで「エレベーター・ピッチ」についてなんだかんだと書くつもりでしたが、ふと思い出しましたよ。1年ほど前、『ダイヤモンド・ビジョナリー』というビジネス誌にエレベーター・ピッチの記事を書いたことを。

てことで、以下、そのダイヤモンド・ビジョナリー誌に寄稿した記事の「初校」を掲載します。
初校ですから実際に掲載された内容とは少し違います。が、もはやその違いを確かめることはできません。
ダイヤモンド・ビジョナリー誌、休刊になりましたので^^;
素敵な本だったんですけどねぇ。

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[見た目は中身だ! ~PowerPointクリエイティブ講座~]原稿 090413初校

■■■タイトルまわり■■■※1ページめ

#タイトル

見た目は中身だ!
PowerPointクリエイティブ講座――④


#第4回テーマ

企むパワーポイント
―ぱっと伝わるスライド構成 Part1―


#リードコピー

しゃべりだけがプレゼンじゃない! 大切なのは、しっかりと“伝わる”プレゼン資料。
そして“伝わる”プレゼン資料には、いまやクリエイティブの感覚と技術が不可欠だ。
この講座では、Microsoft Office PowerPoint(文中表記:パワーポイント)を駆使した、
効果的かつ驚きのあるプレゼンスライド制作をレクチャーしていく。

#但し書き

※Microsoft、Windows、Office、PowerPointは、米国およびその他の国における米国Microsoft社の登録商標または商標です。

■■■講座編Ⅳ■■■

#小見出し(1

企(ツマサキダ)てる
企(メモクラ)む


#本文(1)

 『企画』とはなにか? 字義に拠れば「企(くわだ)てを画(えが)く」こと。「企」の字には「タクラみ」「クワダて」という、なにやら不穏にして隠し事めいた響きがある。が、そもそも「企」の字は「人」と「止」から成り、「人がつま先立ちで遠くを見ようとしている状態」を表したものらしい。遠くを見ながら「なにかしでかしてやろう」と思っている様子、それが企みであり企てである。そう、企画とは単に道筋を示すことではなく、その向こうに広がる景色を現前させること。
 今回はこの企画について考えてみる。具体的には、パワーポイントのスライド構成における企画である。構成とは、いくつかの要素を組み立てて1つのまとまりあるものにすること(大辞林)。どのような構成にすれば、伝えたいことが伝わりやすくなるのだろうか? そして、その先の輝かしい光景をイメージさせられるのだろうか?

#例題タイトル

【例題】
会社案内のスライドを企画せよ。


#本文(2)

 これから2回に分けて、会社案内のパワーポイントスライドを企画・構成していく。営業は商品やサービスを買ってもらう仕事だが、その前段階には必ず会社を紹介する過程がある。すなわち営業パーソンには、会社の売り込み――会社案内のプロフェッショナルであることも求められる。いつもの会社案内は、はたして効果的に会社を売り込めているのだろうか? 会社案内スライドの構成を自ら組み立てることによって、印象的な会社案内の方法を再発見してみよう。

 さて、ほとんどの会社には“紙”の会社案内が用意されている。営業時の初回訪問でも、この会社案内パンフレットを使用することが多いかと思う。“紙”の会社案内、そのデザインやボリュームはまちまちだが、構成要素は似通っている。よく見かける構成は次のようなものである。

①導入(事業コンセプトや企業イメージ)
②企業理念
③事業紹介
④主要商品・サービス紹介
⑤設備/国内外ネットワーク紹介
⑥代表者メッセージ(ビジョン)
⑦会社概要・沿革


 このように、会社の全体像を総合的に把握できる要素が網羅されている。スペースが限られているため、情報量としては「深さ」よりも「広さ」に依ったものとなる。
 ところで、“紙”の会社案内はどのように使われているだろうか? 相手に向けて会社案内を開き、指さしながら会社を案内する……なんて使い方は、まあしなくはないだろうが、ベストとは言えない。“紙”の会社案内は「能動的に読んでもらう」という前提でつくられているからだ。できるだけ文字を少なく、要素をビジュアライズして、「見せながら説明できる」ように工夫したものもあるが、それでも説明に適しているとは言えない。相手が複数人の場合は? 見開きA3サイズ程度のスペースで視認性は高められる? しっかりと見せて説明するには何ページ必要?…… “紙”の会社案内は、目の前で指し示して説明するためのものではなく、むしろ「手渡し、個々に読んでもらうことで会社の理解を深める」という目的で使用するほうがいい。
 では、面と向かって会社を案内するには、どのようなツールが必要か? そう、答えは「パワーポイントスライド」である。

◆会社案内スライドの3大メリット
①3~5分程度で、会社の特徴や強み、他社との違いをアピールできる。
②スライドに注目してもらえるため、強い印象を残すことができる。
③だれでも同じクオリティの会社案内ができる。


 “その場での会社案内”は、会社の自己紹介であり自己アピールである。つまりは「こんな私をぜひどうぞ」というプレゼンテーションだ。“紙”の会社案内が「履歴書」的な役割だとすると、“スライド”の会社案内はまさに「面接」の場でのコミュニケーションに相当する。
「あなたの良さを手短にスピーチしてください」
 そう求められたとき、しっかりと伝わるプレゼンテーションができるように、パワーポイントの会社案内スライドを準備しておくことを提案したい。
 以上に述べてきたような媒体の考察(ここでは紙の会社案内とパワーポイントスライドのポジショニング)が、企画の前提である「与件」となる。“パワーポイントスライド”という媒体に、“会社案内”という情報をどのように乗せていくか? それが企画の第一歩となる。

#小見出し(3)

「よく見える」と
「よく見える」


#本文(3)

 さて、実際のスライド構成に入る前に、いくつか踏まえるべき考え方を押さえておこう。
 まずは、2つの「よく見える」である。
 カリスマ経営コンサルタント、日本経営教育研究所の石原明氏曰く、『プレゼンテーションや告知というのは、すべて“よさそうに見せるという技術”である』。
 まさに言い得て妙。兎にも角にも、よさそうに見えないと興味を持ってもらえない。その時点で万事休す、である。本当は素晴らしい会社であり、商品であり、サービスであったとしても、だ。こんなもったいないことが、実は至るところで起きている。
 ということで、まず第一の「よく見える」は、「よさそうに見える」こと。会社案内スライドの場合は、受け手が「よさそうな会社だ」と思ってくれるような内容にしなければならない。もちろん、ウソ・大げさ・まぎらわしいのはダメ。本当によいところをどのように見せればよさそうに見えるか? その表現方法を工夫することがポイントである。
 では、もう1つの「よく見える」、それは、言い換えれば「単純明快」「簡単明瞭」「視界良好」のことである。つまり、くっきりはっきりわかりやすく見えること。「私たちはこんな会社です」ということが、どれだけ明確に伝わるか。一目でカタチやイロがわかるような伝え方が必要である。
 この2つの「よく見える」は、『アイデアのちから』(チップ・ハース+ダン・ハース著/日経BP社)で説かれている“記憶に焼き付くアイデアの6つの法則”でチェックしてみるといいだろう。

【チェックする要素】
●よく見える=よさそうに見える
意外性があるか?
信頼性があるか?
感情に訴えるか?
物語性があるか?
●よく見える=はっきりと見える
単純明快か?
具体的か?


#小見出し(4)

「エレベーター」と
「ロケット」


#本文(4)

 企画の下敷きになる考え方をもう1つ。「エレベーター・ピッチ」と「ロケット・ピッチ」である。
 エレベーター・ピッチは、30秒程度もしくは1分以内で行なうプレゼンテーションのこと。著名な投資家とエレベーターに乗り合わせたと起業家が、自らのビジネスプランをエレベーターを降りるまでの短い時間でプレゼンテーションし、チャンスをモノにした、という逸話から生まれた言葉である。一方、ロケット・ピッチは3分以内のプレゼンテーション。ロケットが3分で大気圏を突破することから名付けられたそうだ。いずれも、非常に短い時間で伝えたいことを伝えるというプレゼンテーションのことである。
 会社案内にも、エレベーター・ピッチやロケット・ピッチが求められる。相手にプレゼンテーションの時間をもらっている以上、できるだけ速やかに伝えられるのが理想的だ。ちなみに、エレベーター・ピッチは「続きを聞きたい」と思わせることが、ロケット・ピッチは次のアクションに結びつけることが目的となる。単に短ければよいということではなく、目的にアプローチできているかどうかが重要だ。

 さあ、それでは実際に会社案内スライドを組み立てていこう。題材はより具体的なほうがわかりやすいので、ここでは私の所属する会社「株式会社シー・レップ」の会社案内スライドをつくることにする。

#小見出し(5)

絞る絞る絞る

#本文(5

【題材】
株式会社シー・レップの会社案内スライド


 まず最初に、全体構成を考える。このとき、“紙”の会社案内のように全体を網羅した情報を盛り込もうとしてはいけない。大切なのは「とにかく絞る!」こと。3分から5分で会社の魅力をグサリと伝えるために、相手に興味を持ってもらえる要素のみに絞り込もう。「3分以内でプレゼンテーションする」という気持ちで、思い切ってフォーカスする。スライド数は1分=1スライドと考え、3スライドで組み立ててみよう。
 ここでは、エレベーター・ピッチの組み立てを参考に、スライドプレゼン用に構成をアレンジしてみた。

スライド① 業務内容
=何の問題を解決する会社であるか
スライド② 競合他社との差別化
=特筆すべき強み
スライド③ お客様のメリット
=与えられる喜び


 この情報で、いったんエレベーター・ピッチをつくってみよう。例えば……

株式会社シー・レップは、より効果的な販売促進をお手伝いする会社です。プロデュース~プランニング~プロダクトの一貫体制により、ワンストップでサービスを提供。お客様の負担を減らすと共に、効果における満足度を高めます。

 さて、どうだろうか、このエレベーター・ピッチは。必要な要素は盛り込まれているようだ。が、自分で書いていてなんだが、まったくおもしろくない。興味がわかない。印象も残らない。2つの「よく見える」に照らしても、アイデアのちからの6法則でチェックしても、及第点はもらえないだろう。
 では、これらチェック項目と付き合わせながら、書き換えてみる。

販促の丸投げ大歓迎! シー・レップなら窓口一つで、申込数10倍アップからマグロ解体ショーまで、販促のあらゆるニーズにお応えします。「おもしろい提案をする会社」(お客様談)。その期待と効果を裏切りません。

 少し大げさな嫌いもあるが、ずいぶんと印象は変わったのではないだろうか? リニューアルのポイントは、「具体的」にしたこと、「意外性のある言葉」を使ったこと(“丸投げ”や“お客様談”)。先の案よりも会社のカタチやイロが明確になり、「よく見える」ようになったように思う。
 しかし、これがエレベーター・ピッチとしてベストかどうかはわからない。たった2つ書いたくらいではまだ判断はできない。10~20本くらい書いてみれば、きっと素晴らしいアイデアに出会えるだろう。

 さて、続きは次回。今回の講座で取り上げた「会社案内のためのエレベーター・ピッチ」は、ぜひみなさんにもチャレンジしていただきたい。きっと明日からの会社案内が大きく変わるはずである。

(第四回「企むパワーポイント。~パッと伝わるスライド構成 Part1~/初校・2009/04/13)

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以上、ダイヤモンド・ビジョナリー掲載の「パワーポイントクリエイティブ講座」第4回初校でした。

んなことより、次回の「続き」が気になりますよね。

……それが、無いんです。。。
ダイヤモンド・ビジョナリー、この号を最後に休刊してしまいました。。。
ということで、幻の「第5回」。
そのうちここで書いてみようと思いますw