追記あり・『正直に、自分がいいと思うものを主張していけばいい。』by中田ヤスタカ@日経ビジネス | 音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界

追記あり・『正直に、自分がいいと思うものを主張していけばいい。』by中田ヤスタカ@日経ビジネス

「日経ビジネス」と「日経ビジネス オンライン」を中心に"新しい社会を、新しい時代を創り出す人。" ということをテーマにして、『Changemakers of the year』というのを選出しているんだそうで。




それで『Changemakers of the year 2012』のクリエーター部門を中田ヤスタカ氏が受賞したそうだ。




その受賞に対しての中田氏からメッセージが寄せられているのだが・・・・・






・・・・ 読んでいて感動してしまった。





それで界隈の方々にもその一部をご紹介したいと思う。






-------------------------------------------------------------------------------------------------


○「いま」の環境で、できることを、楽しもう、生み出そう



音楽業界は斜陽――。そう言われることもありますが、僕自身は、実感していません。2001年にcapsuleでメジャーデビューをして、音楽を仕事にしはじめたときには、すでに、CDの販売は勢いを失っていたからです。だから「昔は良かった」という感覚自体がないんです。



いきなり話がずれますけれど、ボード全体がディスプレイになっているテーブルってないかなと思ったんですね。で、インターネットで調べてみると、海外で製品化している業者があった。買おうと思えば、個人輸入できることもわかりました。


これが、「いま」です。


インターネットがなかったころ、デジタルが発達していなかったころ、たとえば自分のほしい商品がどこにあるか、調べようと思っても手段がなかった。あるいは、調べること自体にお金も手間もかかった。



でも、「いま」は違います。探せば欲しいものが売っているかどうかくらいのことはわかる。


音楽の世界でも同じです。インターネットがなかったころは、遠く離れた国の、誰もビジネスとしては関わっていないような土着の音楽の存在を知ることは、物理的に難しかった。ましてや聴くことなんて、ほぼ不可能だった。
でも、「いま」は違います。行ったことのない国の音楽でも、手軽に楽しむことができるようになった。



僕がデビューしたときは、CDの売り上げが落ちる一方で、インターネットやデジタル技術がどんどん成長している瞬間でした。悪くなっているところもあるのかも知れないけど、よくなっているところもある。僕はそのなかで、自分がやりやすいようにやればいいのだと思って、やってきました。もちろん、うまくいくまでに時間がかかりましたけれど。

-------------------------------------------------------------------------------------------------






1980後半から1990年代は日本の音楽産業界は全盛期であり、有名なPOPアーティストがアルバムをリリースすると100万枚、うまくいけば300万枚・・・・ という今では考えられない売り上げ枚数を達成していた。


しかし当時のオレは、




「アルバムを国内だけで300万枚も売り上げるなんて・・・ ちょっと異常だ。日本の国民の嗜好性がそんなに集中するわけがない・・・・ 何かがおかしい・・・・」



と考えていた。この後に音楽のリスナー側の嗜好性が多種多様となっていく時代を向かえ、分散する様子を垣間見たときにやっと正常に戻った気がしたものだ。




それでも・・・ 現在の音楽産業界は未だに





"一人のPOPアーティストがアルバムをリリースして、うまくすると100万枚以上は売り上げる・・・・・"




という過去の幻想と妄想にしがみつき、その幻想と妄想から覚めていないのかもしれない。そのことを暗に中田氏は批判したようにも感じられ、オレには痛快にさえ思えた。





そして、Netを通じて世界中のモノと人々をコンタクトがとれる時代・・・・ 要は、



「痩せても枯れても自分の責任。結局は自分次第なんだ・・・・」




ということを言いたかったのだろう。









-------------------------------------------------------------------------------------------------


○シンセサイザーを新しい楽器ととらえよう



シンセサイザーは生楽器の代用品として開発されてきた側面もあります。
結果、軽んじられていた。ほんものじゃない、と。



つくる側が「ほんもの」の楽器の代わりとしてつくった。それは事実かもしれないけれど、使う側までもが、「ほんものの代わりに使うもの」として、当初はシンセサイザーを扱っていた。その発想では、たしかに代用品以外のなにものでもありません。



一方で、シンセサイザーを「代用品」じゃなくて、「まったく新しい楽器」と解釈して使うひとたちもいて。つまり、「使い方」を「発明」したひとたちが出てきた。それが新しい音楽、いわゆる電子音楽を生み出しました。テクノ、あるいはエレクトロは、生楽器では不可能な、積極的にシンセを駆使してはじめて実現できる音楽です。そのテクノが流行することで、世の中のシンセへの見方も変わってきました。代用品じゃなくて、新しい楽器になったのです。



そうなると、シンセをつくるメーカー側の意識も変わります。積極的にシンセじゃなければできない機能を盛り込んでいく。生楽器には出せないひずみ、なんだかわからないけど、すごい音が出せる。世界中の音楽ファンがシンセの面白さ、ユニークさを知るようになりました。それでもまだ、打ち込みより生のバンドのほうが「ほんもの」だ、という風潮は残っていました。



コンピュータより生演奏、デジタルよりアナログという雰囲気。まだまだ、打ち込みは主流ではない。


ふーん。


10代の僕は、だからこそ、コンピュータでつくる音楽に興味を覚え、魅力を感じたんですね。



-------------------------------------------------------------------------------------------------





これこそ・・・・ 中田氏の真骨頂だろう。





このBLOGに訪れる方々は "この人(パワーわんこ)はテクノやエレクトロが好きな人だろう" と感じている方々も少なくないと思う。



実はオレ自身は "電子楽器を中心としたテクノやエレクトロ、エレクトロニカを好んでいるか" と問われると、「そうだ!!!!! 」とは言い切れない。




クラシックも好きだし、Jazzも好き。ボサノバも好きだし、アルゼンチン・タンゴも好き。ロックも好きだし、POPSも好き・・・・



オレにとって、オレの音楽の嗜好性とジャンルは全く関係がない。ただし好きなアーティストの共通項は、





"これまでの各ジャンルにあるような既成概念を打ちこわし、新しい概念と価値観を創造して提示する響き"


"音楽業界や一般の人々の価値観さえ変えるような・・・ そしてある意味「破壊の美学」を感じさせるような響き"


"その道のりが、どんなに困難だとわかっていても歩みを止めない・・・・・ 開拓者精神に満ち溢れるような響き"






を奏でるアーティストに強く心惹かれると思う。そして今、オレが中田氏の響きに強く惹かれるのは、この中田氏の言葉を聞いて "これは必然だ" と改めて実感した。











-------------------------------------------------------------------------------------------------

○新しくあれ、キャッチーであれ


僕は新しい楽器を、テクノロジーを、音を、そんな風に「なじませる側」にまわりたいんです。最初にピアノをなじませた誰かのように。 

ただし、「別のこと」を「増やす」ためには、キャッチーでなければダメですよね。つまりより多くのひとの心をつかむような説得力がなければ増えていかない。



「今まで興味なかったような世界のものだけど、これは面白い」


そんな風に、聴き手に積極的に選んでもらってはじめて認知される、つまりなじんでいく。だからキャッチーな音楽を創ろう、と思いました。



あ、でもね。キャッチーであろう、というのと、ポップであるというのは違うと思っています。ポップというのはそれまで大衆が受け入れていなかったものを、誰かが広めてポップにした、ということですから。キャッチーというのは、どんな少数派の種類のものでもそのきっかけを作り出すパワーということです。


-------------------------------------------------------------------------------------------------



もう、全く同感で(笑)。オレが聴きたいPOPSは、




"マイノリティーな世界観の響きを、いかに大衆の耳に受け入れられる響きに変換する、そのようなパワーを付与する・・・・ その新しい挑戦に取り組んでいる・・・・・"




というPOPSだ。したがって、POPSにマニアックな響きは求めていない。新しいバランスさえ感じさせてくれれれば・・・・。


当然、オレにとってのその筆頭はPerfumeだ。












-------------------------------------------------------------------------------------------------

○「枠」を楽しむのがプロデューサーの仕事


プロになって、ミュージシャンとしての顔と同時に、他人をプロデュースしたり、CM音楽をつくったり、映画のサントラを担当したりする、プロデューサーの役割が大きくなっていきました。アマチュア最強、と言ったそばから矛盾するように聞こえるかもしれませんが、プロデューサーの仕事、大好きです。オーダーをもらうこと、「枠」があること、オーダーと「枠」を前提として、最大限いい曲をつくること。これは、プロとしての面白さでもありますね。



ここにひとりのアーティストがいる。

このアーティストに曲を提供する。

何を僕が考えるか。



このアーティストにしかできない面白さを持って世の中に出るにはどうすればいいだろう?それを考えて曲をつくっていきます。アーティストのお客さん――実際にできた曲を聴いたりビデオを見たりするひとのことはあえて考えません。お客さんがどう感じるかを考えるよりまずアーティストや、映画なら作品がどう魅力的になるかを考えることが先だからです。

 
テレビCM用の音楽をプロデュースする場合には、CMが扱う商品があり、CMの流れがあります。あらかじめそういった「枠」が用意されていて、それが僕の前に示される。その「枠」を制約と捉えることもできるけど、でも、その「枠」をベースとして自分を広げていけるとも捉えられる。「枠」を示してもらうことで、それまでの自分が持っていなかった新しいアイデアや新しいインスピレーションが得られることがいっぱいあります。CMに音楽をつけるって、とってもクリエイティブです。



・・・・ 以下省略



-------------------------------------------------------------------------------------------------



界隈の方々の中には、最近のPerfumeの楽曲にCMタイアップ曲が増えていることに、不満や懸念を抱いている方々も少なくないと思うが・・・ オレ自身は実はそのような不満や懸念をまったく抱いていない。




それは正直言えばオレ自身、その住み分けをさせている面があると思う。





最先端な世界観とマニアックな響きを聴きたければ・・・・ capsule


キャッチーで、新しいバランスと世界観を感じたければ・・・・Perfume





確かにPerfumeに提供される楽曲は、中田氏が本来やりたい音楽と寸分違わないわけではない。しかし、



"Perfume、あるいはCM楽曲" という制約の中で、その概念や価値観にさらに新しい風を吹き込んで、また新しいバランスの世界観を構築し、我々に提示してくれる。



"中田ヤスタカ・プロデュースの作品群" は、それが最大の魅力だとオレは考えているのだが・・・・・










-------------------------------------------------------------------------------------------------

○つくりたいものを、つくれる環境を、つくる


繰り返します。


つくりたいものを、つくれるような環境に自分を置く。
実はこれが一番難しいことです。特にプロとしては。
だからこそ、つくっている人が一番頑張るべきところも、ここです。


つくりたいものを、つくれる環境をつくる。




そのうえで、オーダーがあったり、「枠」があったりして、いろいろなかたちで作品を世に出していく。

つくりたい曲をつくる。あとは、どうやったらつくりたくてつくった音楽が、より多くのひとに届く環境を成立させるかを考える。それではじめて、キャッチーになる。アーティストが考えるべきことって、それじゃないのかな?



でも、そこまで考えがいたる前に、つくりたいものをつくること自体を諦めてしまっては負け。会議に通ることを第一にものを作ってもそもそも自分が楽しくないでしょう。


そこで負けちゃうことって、けっこうありますよね。たとえば会議でも、そうではないですか。自分に自信がないときほど、エッジの立ったアイデアを引っ込めて、「みんなはこれがいいと言っています」と諦めて迎合したりする。でも、たいていの場合、その「みんな」には自分は含まれていないんですよね。



そこに逃げ込まずに、正直に、自分がいいと思うものを主張していけばいい。簡単なことでないけれど、その困難を乗り越えて、自分のやりたいことと、相手から求められていることのバランスがとれたとき、ほんとうに新しいものが生まれると思うんです。


-------------------------------------------------------------------------------------------------




この一言は耳が痛い(苦笑)。




「自分に自信がないときほど、エッジの立ったアイデアを引っ込めて、「みんなはこれがいいと言っています」と諦めて迎合したりする。でも、たいていの場合、その「みんな」には自分は含まれていないんですよね。」




これはオレの仕事の中でもよく遭遇する。若い頃はよく戦ったけど、今は諦めることも・・・ あるなぁー(苦笑)。そして、自分が満足していない事柄にも・・・・ 賛同する・・・・(苦笑)。







「正直に、自分がいいと思うものを主張していけばいい。」


「自分のやりたいことと、相手から求められていることのバランスがとれたとき、ほんとうに新しいものが生まれると思うんです。」






この言葉に・・・ ある意味また勇気をもらった気がした・・・・




明日も・・・・ 自分の納得できる仕事を、世の中の方々が受け取りやすい形にして提示したい・・・・・



と心を新たにした今日この頃だ(笑)。














<○追記・5日pm21:40>



「つくりたいものを、つくれる環境を、つくってきた・・・」という"ネ申" に敬意を表して(笑)、過去と最新の "ネ申" アトリエを簡単にご紹介しておくこととする(笑)。








○過去・・・ Perfumeがメジャーデビューを果した前後の様子(2006年前後)


音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界
*『サウンド&レコーディング・マガジン』の2006年7月号より。この頃の環境はまだまだチープなものであり、界隈でもおなじみの電話ボックスサイズの防音ボーカル・ブースが見える。



音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界
 *『サウンド&レコーディング・マガジン』の2006年7月号より。まだまだチープな環境でありながら、それでも機材へのこだわりも垣間見られる。その筆頭が "世界のスタンダード" と評された、YAMAHA製のデジタル・ミキシング・コンソールの『O2R』を用いているところだろうか。











○現在(2011年~2012年)



音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界
*『サウンド&レコーディング・マガジン』の2011年4月号より。以前よりも広く本格的に変貌したボーカル・ブース。



音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界
  *『サウンド&レコーディング・マガジン』の2012年4月号より。YAMAHA製シンセサイザーのハイエンドモデルの "MOTIF XF7" が見える。












日経ビジネス Associe (アソシエ) 2012年 08月号 [雑誌]/著者不明

¥630
Amazon.co.jp

日経ビジネス Associe (アソシエ) 2012年 07月号 [雑誌]/著者不明

¥630
Amazon.co.jp



STEREO WORXXX(ボーナスディスク付)/capsule

¥2,940
Amazon.co.jp

STEREO WORXXX/capsule

¥2,625
Amazon.co.jp

LIAR GAME -再生- オリジナルサウンドトラック/中田ヤスタカ(capsule)

¥2,100
Amazon.co.jp

Spending all my time (初回限定盤)(DVD付)/Perfume

¥1,780
Amazon.co.jp

Spending all my time/Perfume

¥1,260
Amazon.co.jp

Spring of Life (初回限定盤)(DVD付)/Perfume

¥1,500
Amazon.co.jp

Spring of Life/Perfume

¥1,000
Amazon.co.jp

Perfume 3rd Tour「JPN」(初回限定盤) [DVD]/アーティスト不明

¥6,500
Amazon.co.jp

Perfume 3rd Tour「JPN」(通常盤) [DVD]/アーティスト不明

¥4,200
Amazon.co.jp