リスナーよ、ヘッドフォンを置き、スピーカーの前に佇もう。 そして・・・・ ① | 音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界

リスナーよ、ヘッドフォンを置き、スピーカーの前に佇もう。 そして・・・・ ①

これから、このエントリーで書く内容によって、不愉快な思いをされる方々もいらっしゃるかもしれないが "Perfumeとcapsuleなどの中田ヤスタカ氏制作の音源の本質に迫る" という意味合いからご容赦していただきたい。また不愉快に感じる方々はスルーして頂ければ幸いだ。




オレはクルマのオーディオを用いた "Perfumeとcapsuleなどの中田ヤスタカ氏制作の音源を聴く、オーディオ・オフ会" を何回か主催したが、その趣旨としては「Perfumeとcapsuleなどの中田ヤスタカ氏制作の音源をぜひスピーカーで、そして圧倒的な音圧で聴いていただき、深い理解に至って頂ければ」ということから始めさせて頂いた。




なぜ、オレはそのようなことを始めたかというと、特にPerfumeファンのリスニング環境がヘッドフォンやイヤフォン(カナル式ヘッドフォン)に依存している傾向が高いと感じ、その環境で試聴された楽曲の感想に違和感を感じたことがキッカケだ。




もちろん、Perfumeファンの多くは都会、特に首都圏に集中する傾向が高く、都会の生活スタイルから鑑みると、音楽のリスニング環境がヘッドフォンやイヤフォンに依存するのは致し方ないとは思う。




また、ヘッドフォンやイヤフォンが持ち合わせている長所・利点や特性も重々理解しているつもりだ。





それでもなお、オレは中田氏制作の音源をぜひスピーカーで聴いていただきたいと思っている。今回はその理由をエントリーにしたいと思う。






さて本題と少し離れるのだが、オレはmp3などを代表とした、圧縮音源には否定的な考えを持っている。簡単にまとめると音声圧縮の技術は「最小可聴限界」「マスキング効果」という二つの基本原理から成り立っている。



要するに音声圧縮の技術は「人間の耳には聴こえない、あるいは聴こえ難い音を削ぎ落とすことで、音声データの圧縮をはかる」というものだ。





が、しかしである。「そもそも人間は音を耳でしか聴いていないのか??」 オレとしては、そこに音声圧縮技術の問題点を指摘せざるおえないのだ。





オレは、高品位且つ圧倒的な音圧のクルマのオーディオでの試聴環境における体験から「耳で聴こえない音は "カラダで聴ける" 」ということをイヤというほど思い知らされてきた。






「 "カラダで聴ける" なんて、非科学的でフラセボ(偽薬効果)だし・・・。 単なるオカルトじゃん。カラダで聴いた気になっているだけでしょう???」



と思った人も多いと思う(苦笑)。 それが意外にも、非科学的でもないのだ(苦笑)。






オレは前々から音響と神経生理学の分野における "この現象" の科学的背景を、実は知っていた。



"この現象" とは通称、





「ハイパーソニック・エフェクト(Hypersonic Effect)」




と呼ばれ、あの "Journal of Neurophysiology (JNP)" でも発表されている現象のことである。ではこの「ハイパーソニック・エフェクト」という現象はどういうものだろうか。




人間の耳で聴き取れる高音域の周波数は12~15kHz前後であり、せいぜい20kHzあたりが上限だ。したがって、15kHz以上、特に20kHz以上の音波を人間に聴かせても何も起こらないはずだが・・・・・




実際に20kHz以上の音波を人間に聴かせて、神経生理学的に脳活動の様子をPET(陽電子断層撮影装置)で測定すると、"美しさ・快さ・感動を司る" 領域の脳幹・視床・視床下部など活性化が確認されたという結果となった。


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ということは「人間の耳には聴こえてこない・聴こえ難い音を削る」といった音声圧縮の音源を試聴した場合と、すべての音声データが収録された非圧縮の音源を試聴した場合では、同じ楽曲でも"美しさ・快さ・感動" などの感情の発生に差異が出る可能性が科学的に示されたことになる(ただしこの現象にはまだ解明されていないことも多々あり、異論を唱える研究者も存在するという事実もあるが)。



CD(CD-DA)ではサンプリング周波数が44.1kHzであり、そうなると音声信号における高周波は20kHzまでしか収録・再生できない仕様だ。しかし"Super Audio CD(SACD)" などの高解像度なハイレゾ(High-resolution)音源は100kHzの超高周波の音声信号を収録・再生できる仕様となっている。オレも最初は




「20kHz以上の高周波は人間の耳には聴こえないんだから、100kHzの超高周波を再生できても意味があるのか」



と考えていたが、いざSACDの試聴をおこなってみると・・・・ これが全然違うのだ(苦笑)。同じ楽曲を聴いても、SACDのほうが心躍るというか、気持ち良いというか・・・・。



また、アナログレコードを支持するファンも未だに多いが、アナログレコードは40kHzの高周波まで理論的には再生可能(f特はフラットではないものの)と言われており、そのような要因から、アナログレコードの独特の響きが存在し、それが心地よいことも頷けるのだ(ただし、オレの個人的な意見で言わせてもらえば、SN比やワウフラッター、チャンネルセパレーションなどの要素から鑑みると、総合的にはCDのほうが高品位だと思うが)



このように聴こえない・聴こえ難い音波が、人間の"美しさ・快さ・感動" などの感情の発生に大きく貢献していることは間違いなかろう。






さらに「ハイパーソニック・エフェクト」の研究では、次のような追加実験が実施され、その結果が非常に興味深い。





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※測定条件


○ スピーカーを使って高周波を含んだ音波を試聴

○ ヘッドフォンを使って高周波を含んだ音波を試聴

○ スピーカーから高周波・ヘッドフォンから可聴音

○ ヘッドフォンは可聴音・スピーカーは高周波。ただし身体を遮音財で隠蔽




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要するに、この追加実験では「耳には聴こえない音波を、カラダのとの部分で感知し"聴いているのか"」ということを断定することが出来る。






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※測定結果



○ スピーカーを使って高周波を含んだ音波を試聴 ⇒ ハイパーソニック・エフェクトが確認される


 ヘッドフォンを使って高周波を含んだ音波を試聴 ⇒ ハイパーソニック・エフェクトは確認されない


○ スピーカーから高周波・ヘッドフォンから可聴音 ⇒ ハイパーソニック・エフェクトが確認される


 ヘッドフォンは可聴音・スピーカーは高周波。ただし身体を遮音財で隠蔽 ⇒ ハイパーソニック・エフェクトが著しく抑制される





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以上の実験結果から、オレが以前から感じていた「人間は耳で聴こえない音波を、耳以外の身体で受け止めて "カラダで聴いている" 」ということを科学的に示していることになる。


しかも身体で受け止めた音波が、"美しさ・快さ・感動" などの感情の発生に大きく貢献しているということにもなるのだ。



さらに人間は耳で聴こえない音を耳以外の身体で受け止めるためには、音波の発生源がヘッドフォンやイヤフォンではどうしても身体では受け止められない。スピーカーの利用が必須だということもご理解頂けると思う。



ちなみにアニメ映画である『AKIRA』のBDソフトには、この「ハイパーソニック・エフェクト」を体感させるために100kHzの超高周波が収録されているが、試聴環境がヘッドフォンやイヤフォンではその効果を体感できないとしており、スピーカーの利用が不可欠としている。





今回の研究論文は高周波のものであったが、オレは耳に聴こえない・聴こえ難い "超低音域の音波" であったとしても、人間はカラダでそれを受け止めて、様々な生理的及び、神経・心理的作用を引き起こし、"美しさ・快さ・感動" をより一層高めているのではないかと考えている。









では "耳には聴こえない音をカラダのどこで聴いているのか" 。 この研究論文では "体表面" でというふうに表現され、具体的には示されていない。オレは多分、この部分で感じ取っているのではないかと考えている(この辺りの説明を詳しく書いてしまうと、オレの職種が明らかになってしまうかもしれないので、この辺はオブラートに包みつつ・・・ 苦笑)。



人間のカラダには、身体の状況を感じ取る感覚受容器(センサー)が存在し、触覚(触れた感じ)、温覚(暖かさ)、冷覚(冷たさ)、痛覚(痛さ)などを感じ取っているのは皆さんもご存知だろうし、経験しているはずだ。



さらに人間は目を閉じた状態でも、カラダのあらゆる関節を思い通りの角度に曲げることが出来るはずだ。皆さんも一度試していただきたいのだが 『目を閉じた状態で肘の関節を90°にする。』



どうですか?? 皆さん出来ますよね(笑)。




これは、運動覚(固有感覚)と呼ばれる、関節の角度の状況や、筋が出力している力の程度、腱にかかる張力の程度などを感じ取るセンサーが関節や筋、腱に存在しており、人間の身体状況を常時モニターリングしている。このセンサーを「固有受容器」と呼ぶ。





さて、この固有受容器の中は "パチニ小体" という種類のセンサーが存在していて、このセンサーは腱などに多く存在していて、張力と圧力、そして振動を感知する。





そう、圧力・振動を感知するのだ・・・・。




オレは「この "パチニ小体" で、耳には聴こえない・聴こえ難い音波を感知し、受け止めているのではないか」と考えている。


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                            *パチニ小体の構造





そして人間の骨格筋(いわゆる筋肉)は、いくつ存在しているかご存知だろうか。その数は実に650種類以上と言われている。そしてその両端には腱が存在し、そこに圧力と振動を感知する "パチニ小体" がある・・・・・・


ということは、耳に聴こえてこない・聴こえ難い音波であっても、全身に分布している "パチニ小体" がスピーカーから放出された空気の圧力と、それによって発生した振動を感じ取って、ハイパーソニック・エフェクトという現象を引き起こしているとオレは考えているのだ。

したがって、先ほど取り上げたハイパーソニック・エフェクトに関する追加研究で"スピーカーからは高周波を流すが身体を遮音材で隠蔽することで、カラダに伝わる音波の振動を遮断するとハイパーソニック・エフェクトが著しく抑制される" ということは、すごく納得できる話だ。





オレはPerfumeの「ポリリズム」を試聴する場合、ヘッドフォンで聴くと感じることができないのだが、クルマのオーディオを聴くと、通称 "ポリループ" の後にバスドラの残響音の背後に、"見え隠れするが如く" 微かに心臓の鼓動のような超低音域をカラダに感じる。



後に、その部分を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform : FFT )のシステムを用いて分析してみたところ、やはり耳には聴こえてこない・聴こえにくいような超低音域の音波が含まれていた。そして、その他のPerfumeやcapsuleなどの中田氏制作の楽曲音源をFFT分析してみると、その多くには、人間の耳に聴こえない・聴こえにくいような超低周波や超高周波の音が含まれていることが分かった。




それは正しく"サブリミナル効果"を狙ったかのように・・・





中田氏制作の楽曲音源には習慣性・中毒性があると語られるのは、そのような要因もあるかもしれない。





オレの個人的な経験的意見から言わせてもらえば、やはり中田氏制作の音源をヘッドフォンやイヤフォンで聴くということは、その魅力の70%程度しか堪能していないと感じている。やはり "その隠れた魅力"である "美しさ・快さ・感動" をすべて受け止めるためにも・・・・ どうしてもスピーカーを用いたいところだ。






中田氏制作の音源の "隠れた魅力" を伝えるためにも・・・・・ 





オレがオーディオ・オフ会を主催している動機が・・・・・ そこにある。






「言っていることはごもっともだが、そんなこと言ったって・・・ 音楽を聴くのは通勤・通学の際が主だから、やはりヘッドフォンやイヤフォンで聴くしかないし、自宅では、スピーカーを高い音圧でなんか鳴らせないよ・・・・」



オレは高い音圧でなくても、スピーカーで聴くことで、より多くの耳には聴こえない音を感じ取ることができると感じている。


そして、やはりスピーカーを用いて高い音圧で心おきなく、中田氏制作の楽曲・音源を堪能はしたいが、さすがに自宅では無理だと思いの方々は、そういう時にこそ・・・・





ひたむきにPerfumeのLive会場に出向き、PAスピーカーから思い存分、その音波をカラダに浴びればよい・・・・ 





そして・・・・





続く・・・・・。








<○追記>


もし、どうしてもヘッドフォンやイヤフォン(カナル式ヘッドフォン)しか用いられない環境下で、それでもなお耳に聴こえてこない・聴こえ難い音波を感じ取りたいならば・・・・ それであれば、オレならイヤフォンは選択しない。それならヘッドフォンを選択する。


なぜなら、顔周辺にも筋(表情筋)が存在し、その筋にも"パチニ小体" が存在するからだ・・・・・。









<○補足>




*最小可聴限界とは


人間の耳が静寂時に聴き取れる音の最小の限界のこと。

人間の耳はその音の周波数ごとに聴き取れる音圧に差異がある。小さな音でも聴き分けられるのは2~5kHzの周波数帯域で、これよりも高い周波数や低い周波数は聴こえ辛くなる。したがってその周波数での最小可聴限界を下回る音は、人間が感知できないので音声データを削除しても違和感はないという考え方から、それらの音を削って音声データの圧縮をはかる。

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*マスキング効果とは


周囲で大きな音が鳴っているとき、小さな音がかき消されてしまう現象のこと。

大きな音と小さな音の周波数が近いほど、マスキング効果は大きくなる。 したがってマスキングされると予想される音を削って音声データの圧縮をはかる。





*高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform : FFT )」とは


再生される音波のあらゆる周波数における音圧の程度を分析(スペクトラム分析)し、表示できるシステムのこと。このシステムで分析された周波数特性のことを「音圧周波数特性(f特)」と呼ぶ。





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