★日本の鉄道の世界でブルドッグ と言えばキハ81系はつかり形 気動車だが、日本の自動車の世界でブルドッグと言えば、1983年発売のホンダ・シティターボⅡ「ブルドッグ」を連想する人が多いかもしれない。しかし、実は国産ブルドッグ車の元祖は更に時代を20年遡るホンダT360。その愛嬌のある顔つきはシティなどよりT360の方が遥かにブルドッグに似ている。
★二輪メーカーだったホンダ は、1963年(昭和38年)8月に初めて四輪車を発売した。日本車初のDOHCエンジンを搭載した軽トラック「ホンダT360」である。時に本田技研を創業した本田宗一郎57歳。
ホンダT360は、まず1962年10月の第9回東京モーターショー（当時の正式名称は全日本自動車ショー）でオープン・スポーツカーＳ360およびS500と共に展示され、その中でS360は幻に終わり、T360とS500のみが翌年1963年の夏から秋にかけて相次いで市販された（S500は別項で紹介）。
ちょうど1963年に通産省が提唱した特定産業振興臨時措置法(通称：特振法)案によって自動車業界への新規参入が認められなくなる可能性があったため、ホンダは軽四輪T360の市販を急いだと言われる。何れにしても四輪進出は当時既に二輪で世界制覇を果たしていたホンダの祈願だった。
★ホンダT360 は当時の軽規格のトラックだったが、特筆すべきはそのエンジンにあった。水冷４サイクル４気筒ＤＯＨＣ４連キャブのAK250E型エンジンは、同年の軽自動車スバル360が18馬力だった時代に約1.7倍の30馬力の出力を誇り、最高速は100km/hと公表された。レーシング・トラックの異名をとった由縁である。エンジン配置はセミキャブオーバーボディのシート直下に置かれたミッドシップ。
しかし、精密で神経質な４連キャブは実用車には不向きで、後に２連キャブ、シングルキャブへと変更され、1967年(昭和42年)10月にフルキャブオーバー軽トラック「ホンダTN360」がデビューするまでの4年間にT360は10万台強が生産された。発売当初349000円だった価格は徐々に値下げされ、モデル末期の1967年には299000円となった。
なお、T360の姉妹車として1964年(昭和39年)9月にT360と同じボディに500ccエンジンを積んだ小型車規格のホンダT500も発売され計1万台余りが生産された。
【主要スペック】 (前期型型式：AK250 後期型型式：BK250）
全長2990㎜・全幅1295㎜・全高1525mm・ﾎｲｰﾙﾍﾞｰｽ2000mm・車重610kg・水冷4サイクル4気筒DOHC 354cc・最高出力30ps/8500rpm・最大トルク2.7kgm/6500rpm・積載重量350kg・最高速100km/h
●ホンダ正規販売店用 POP
●1962年10月 ホンダ四輪発売予告カタログ（第9回東京モーターショーで配布）
●1963年10月 ホンダT360カタログ（第10回東京モーターショーで配布）
●1964年？ ホンダT360 カタログ (3つ折)
（T360は外観の変更がなく、殆どのカタログには発行年月の記載がないため「?」は推定）
●1965年？ ホンダT360＆T500 本カタログ（12頁）
●1965年10月 ホンダT360 カタログ（2つ折）
●1966年？ ホンダT360＆T500 本カタログ（14頁）
●1967年？ ホンダT360 カタログ (2つ折)
※このカタログでは定価が299000円となっている。
※T360のボディカラーはブルーのみ
★オマケ： 野村トーイ製 約1/12スケール ホンダT360
