福島:たまる下水汚泥 悪臭被害深刻 国見の県北浄化センター(河北新報社) | 記憶と記録

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たまる下水汚泥 悪臭被害深刻 国見の県北浄化センター

県北浄化センターの敷地に並ぶ汚泥保管用のテント。目張りや換気装置で悪臭対策を講じている=福島県国見町


 福島第1原発事故の影響で、放射性物質を含んだ下水汚泥が福島県の下水道処理施 設にたまり続け、一部の施設で悪臭被害が深刻化している。放射能に対する不安から引受先がほとんどなく、敷地保管を続けざるを得ない。周辺住民の不満は高 まり、施設を管理する県は苦悩の色を深めている。(福島総局・若林雅人)

<2キロ先まで>
 モモ畑が広がる福島県国見町熊野堂地区。枝に小さな実がつき始めた6月上旬、鼻をつまみたくなるような臭いが漂っていた。
 「毎日かがされて、嫌になるよ」。畑で枝の手入れをしていた女性(58)は顔をしかめた。臭いの度合いは日によって違うというが、「2キロほど離れた自宅にも届くことがある」と言う。
 畑の隣に県北浄化センターがある。福島県が管理する4カ所の下水道処理施設の一つで現在、国見町のほか、福島市と伊達市、桑折町の計4市町から出た約1万5600トンの下水汚泥が保管されている。福島市分が圧倒的に多く、全体の約85%を占める。
 県管理の下水道処理施設の汚泥保管量は表の通り。市などが管理する施設も含めた県全体の汚泥保管量は約4万2000トンに上る。悪臭問題は特に県北浄化センターで深刻化している。
 同センターの敷地には白いビニールで覆われた体育館ほどの大きさのテント51棟が立ち並ぶ。袋詰めされた汚泥を周囲から見えないように保管するための施設だ。
 テントは増設が続いているが、保管容量は残り約2年、約3万トン分で限界を迎える。

<基準値超え>
 汚泥処理はこれまで、セメント業者が約8割をセメントの原料、肥料業者が約1割を肥料として引き受け、残りは会津地方の最終処分場で埋め立てていたが、原発事故で全てがストップした。
  県によると、同センターの汚泥の放射性物質濃度は1キログラム当たり平均300~400ベクレルで、国の基準値(200ベクレル)を超えている。セメント 業者は製品段階での基準値(100ベクレル)を下回らなければ引き取らないと通知。最終処分場も地元の反対で処理できず、汚泥は行き場を失った。
 セメント会社は「センターが搬出できずに困っているという話は聞いている。新築マンションの購入者から『セメントに福島の汚泥を使っているのか』と聞かれ、使うに使えない」と苦しい立場を説明する。

<搬出を要求>
 国見町議会は昨年8月からことし3月にかけて4回、汚泥の搬出を求める意見書を可決した。「汚泥の速やかな搬出」がセンター開設時の約束だったとして、「不履行は許されない」と強い文言で要求している。
 県は汚泥から水分を除去して減容化を図る乾燥炉の整備を検討しているが、地元住民は「汚泥の保管を容認することになる」と反発。22日の県議会6月定例会代表質問で渡辺宏喜県土木部長は「搬出再開に向け努力する」と答弁したが、解決の見通しは立っていない。
 県下水道課の担当者は「炉の整備にも10億円単位の費用がかかるが、国からは財政支援の対象外と言われている。東京電力に賠償請求する以外にない」と話している。

2012年06月23日土曜日