イースタン・プロミス-★★★★- | not simple.

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あるときはさすらいの本読み、あるときはジャンル無用の映画好き、またあるときは、B級グルメの備忘録




英題: EASTERN PROMISES
製作年: 2007年
製作国: イギリス、カナダ、アメリカ
日本公開: 2008年6月14日
(シャンテ シネ ほか)
配給: 日活
公式サイト


スタッフ
監督: デヴィッド・クローネンバーグ
キャスト
ヴィゴ・モーテンセン
ナオミ・ワッツ
ヴァンサン・カッセル
アーミン・ミューラー=スタール

【公式サイトより】
クリスマスを目前に控えたある夜のこと。助産師としてアンナ(ナオミ・ワッツ)が働く病院に、身元不明の少女が運び込まれた。彼女は子どもを身ごもっており、女の子を産んだ後、息を引き取ってしまう。手術に立ち会ったアンナは、彼女のバッグから日記を取り出す。孤児となった赤ん坊のために、少女の身元を割り出そうと考えたのだ。日記はロシア語で書かれており、そこには“トランスシベリアン”というロシアン・レストランのカードが挟みこまれていた。ロシア人とのハーフでありながらロシア語が解らないアンナは、カードを頼りにレストランを訪ねる。

店の前で、アンナはひとりの謎めいた男と出会う。ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)という名前のその男は、悪名高きロシアン・マフィア<法の泥棒>の運転手で、組織の跡取りであるキリル(ヴァンサン・カッセル)のために働いていた。ニコライはエンジンのかからないバイクを前に困惑するアンナを車で家まで送り届ける。

やがて少女の日記を読んでしまったアンナのロシア人の伯父が、彼女にこの事件から手を引くよう忠告する。日記にはロシアン・マフィアが関わる「イースタン・プロミス」=人身売買についての恐ろしい事実が記されていたのだ。かつて流産した辛い過去を持つアンナは子どものことだけを考えており、「日記」と引換に少女の身元を教えてもらう、という取引をマフィアと交わすことに。取引の場所に現れたのは、ニコライだった。日記を渡すアンナに彼は少女の身元は伝えず、今回の事件は忘れ、自分たちには近づくな、とアンナに忠告する。アンナは時折やさしさを見せてくれるニコライに図らずも惹かれはじめる。果たしてニコライの本当の姿とは?日記が示す犯罪の行方は?ふたりの運命はいつしか絡み合っていく…。

知らず知らずのうちに危険な場所へと身を置いてしまったアンナに、時折ニコライが見せるやさしさの意味とは…?出会うはずのなかったふたりを運命が引き寄せ、物語は静謐で重厚なクライマックスを迎える。
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何かエンターテイメントを観たあと、読んだあとの感想って大抵、
面白い?面白くない?って問いかけをすることになると思うけれども、この作品については真っ先に頭に浮かんだのは、

骨太。でした★

非常に骨太。
甘さの一点のかけらもない感じです。
100点は基本つけないという当blogのため非常に★5に近い4な感じです。
シナリオだれだーとか思ってみたら「堕天使のパスポート」の人ですね。
同じ匂いがします。

舞台はやはりロンドン。
裏社会にふと迷い込んでしまった善良な人々を描きます。
ヴィゴ・モーテンセン、なぜか結構イロイロ観てるんですけど地味な映画が多いですよね。
本作はすごかったなぁ。

まっぱで、油断しているときに山刀を持った男に襲われるという。
考えるだけで恐ろしいです。
というかファーストシーンからして衝撃的。

不慣れな男にクビをゴッゴッゴッと掻ききられてごぼ。ごぼ。ごぼぼ。ってかんじからはじまり、いたいけな少女が「助けて」といった瞬間に下半身を真っ赤にして病院に運び込まれ、産声も上げられない赤ん坊が生まれるという、嗅覚に訴えかける恐るべきシーンの連続です。

でもなんといっても不気味なのは、ヴィゴ・モーテンセンの役がなにを考えてるかがわからないこと。
たとえば、ヴァンサン・カッセル扮するマフィアのダメ息子に強要されて娼婦を抱くシーンがあるんですが、そのときの彼の行動などヒントがチマチマと出てくるんですが、私は答えが提示されてから気がつきましたよ。

ナオミ・ワッツ扮するロシア系の助産師にたいするやさしさみたいな淡い素敵で明るい感情を隠しつつラストまで走っていくところが本当にすばらしいです。
ラスト間近のキスシーンですが、恋愛感情よりもそれぞれの世界を分け隔てるための儀式のような気がしました。
あと、マフィアのボスが馬鹿息子のためにあることをするのですがそれも非情。
ヴァンサン・カッセルの情けなさ、ヴィゴ・モーテンセンへの思慕。
それがまっぱで殺し合いへとつながっていくわけです。

ストーリーラインを気にするというよりもその瞬間に自分の目の前に展開する場面場面に息をのまれるように観てしまう・・・そんな作品です。