バラ1 ピアノ・レッスン動画 ~ピアノの「減衰」とフィギュアスケートの「トランジション」~ | ショピンの魚に恋して ☆羽生結弦選手に感謝を込めて☆

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2015年11月頃のピアニストの福間さんのインスタだったか、こんなことが語られていました。




「人から教えられて知った。週刊誌AERA内の羽生結弦さんのインタビュー記事の中で、僕のピアノ演奏について触れられていた。またもや、何という光栄!実は、金沢でゆづ君とバラード第1番の話をしていて、『3拍子の音の取り方が難しいんです』と言われたので、『実際には4分の6拍子(3拍子二回で一小節)だから、3拍子を一つに大きく2拍で感じると、感じ方が変わるかもよ。』などと、今考えたら超偉そうなことを言ってしまった。それが新しい感覚で滑る一助になっていれば、この上なく嬉しい。」

 

恐らく一年目は結弦くんとジェフは「3拍子」をどう捉えるか、というやりとりをしていたのではないかなと思います。楽譜を見なければなかなかわからないことですし・・・。


でも、福間さんのアドバイスを機に、二年目となった結弦くんのバラード第1番は画期的な進化を遂げました。

 

初挑戦の1年目は3拍子で捉えていたため幾分マズルカのように見えた動きが、6拍子のリズムを体得することによって滑らかに優雅に見えるようになったのです。

結弦くんはまたどこかで、福間さんのピアノ演奏の動画を何度も見て、その手や身体の動きを参考にした、というようなことを語っていました。結弦くんらしいアプローチだなと思ったものです。

フィギュアスケートで一番得点が伸びにくいのがトランジションだと聞いたことがあります。ピアノの音は少しフィギュアスケートのトランジションと重なる部分があるかもしれません。

ピアノの音の特徴として「減衰」が挙げられます。鍵盤を指でポンと押さえて鳴らした音は、しだいに弱くなりながら減衰していき、しばらく音の余韻が続きます。

ピアノは88鍵の独立した鍵盤から成る楽器ですが、ピアノの音を滑らかにするためには前に弾いた音の減衰を聴きながら、次の音の響きや大きさの加減をそれにつないでいくという技術が必要になります。

フィギュアスケートは見るだけなので偉そうなことは言えませんが、滑らかなピアノのフレーズを作るようにバラ1のトランジションを考えると、前の動作の減衰を感じながら次の技を途切れることなくつないでいく作業というのは、ピアノを弾くこととよく似ているような気がします。

この記事ではピアニストの横山幸雄さんのバラード第1番のレッスン動画をご紹介したいと思っています。

 

「どれかの音を強調するのではなく、溜息をつきながら弾くように・・・」などというのは、ピアノを弾かない方にも非常にわかりやすい表現だなと思いました。

 



動画の前半の冒頭は少し曲の解説があります。

バラード第1番はもともと10分近くもある長い曲です。

 

横山さん曰く、「バラードというのは非常に長い曲で、山あり谷ありで、かなりドラマティックな部分もあり、深く瞑想的な部分もあるという、起伏に富んだ物語。ショパンはバラード第1番を相当あたためて、気合いを入れて作った・・・。」と。

 

これを四分の1ぐらいにまで短縮しているのですから、その凝縮された内容の中で、本来のバラードが持つ山あり谷ありを表現する。これがどれほど表現的に難しいものか想像がつきません。

恐らく10回やっても10回分の異なる解釈が生まれるぐらい、曲としても濃密な内容です。

先日のFaOI幕張の放送時のインタビューで「やはりこのプログラム自体、振付は全然違うけれども、すごく感情をこめて、自分が本当に呼吸するかのように曲を感じることができる。非常に表現しながら滑られているかなと思う。」と結弦くんは答えていました。

「呼吸をするかのように・・・」5月の段階で、もうその地点に到達しているということが、これからこのプログラムがどのようなことになるのかを想像するだけでワクワクします。

 

恐らく後半のジャンプが安定しているのは、「呼吸をするように」音楽が感じられているということではないかなと思いました。

 



4T-3Tが後半の最後のジャンプとしてレイアウトされていることが、このプログラムを一層引き立てているように思えます。音源が違うのかと思うぐらい新鮮さを感じました。

 

ピアノを弾かれない方にも、ちょっと興味深い動画だと思います。お時間のある時にぜひ一度ご覧になってみてください。(↓)
 

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