視線と選好課題(2)
前回、
2人の顔を見比べて好きな方を選ぶ
選好課題では、選択する直前の
0.6秒前から好きな方の顔を見ていた
という分析結果を紹介しました
拙ブログ『視線と選好課題(1)』
今回はその続きです
直前だけよく見るのは
そちらを選んでボタンを押すためでは?
という疑問も浮かびますね
下條博士らは
その辺りも実験で検証しています
まず、
好きな方を選ぶのではなく、
丸顔の方を選ばせたり
好きではない方を選ばせたりしたときは
この直前の視線の偏りはなかった
とのこと
また、
実験では、2人の顔の魅力度を
ある程度同じにしていますが、
明らかに魅力度が異なる2人の顔でも
直前での視線の偏りが見られたとのこと
じっくり見比べる必要がない状態でも
そうだったということです
しかし、魅力度って
どうやって評価したのでしょうね
それはさておき
大事なのは、選好課題でのみ
視線の偏りが見られた、ということ
この現象は
顔を見るときだけでなく
図形でも好きな方を選ぶときにも
見られたそうです
つまり、
好きなものを選ぶときと
それ以外を基準に選ぶときとでは
脳の働きが違うのですね
では、
これまで見て来たのと逆に
視線をコントロールすることで
好みを操作できないか?
下條博士らは
このことも実験で確かめています
魅力度が近い2人の顔を
左右交互に画面に表示して
好きな方を選んでもらいます
ただし、
左右のそれぞれの顔が
表示される時間が違っていて、
片方は長くて(0.9 秒間)
もう片方は短く(0.3秒間)
これを交互に繰り返します
その後、
被験者は好きな方を答えます
さて、結果はどうだったでしょうか
交互表示の繰り返しが2回だけなら
どちらの顔を好むかに
差はなかったのですが、
6回以上繰り返すと
長く表示された顔が好まれる
という傾向だったことが分かりました
長く表示されると好まれる
何度も繰り返し表示されると好まれる
というと、
思い当たる方もおられますね
そうです
「単純接触効果」ですね
接触する機会が多いほど
好感をもつようになる効果で、
ザイアンス効果とも呼ばれます
広告を何度も流したり
選挙での候補者名を連呼するなど
この効果を狙ったものですね
ここからが
さらに面白くなります
下條博士らは
同じ課題で被験者に
視線を動かさないようにしてもらいます
左右に顔が表示される場合は
2つの顔の間に視線を固定する条件
これは周辺視野で見ることになります
それよりガッチリ見るケースとして
2つの顔を真ん中で交互に表示する条件
いずれも、視線を固定することで
表示時間の長さを変えても
好みは変わらなかったのです
つまり、
長く見せたり、何回も見せるだけでなく
視線を自発的に動かさせることが
好みを引き起こす秘訣だったのですね
しかも、被験者は
表示時間に差があったことにすら
気付かないケースが多く、
気付いていたとしても
それが判断に影響したということは
否定したそうです
まさに潜在意識を操ったと言えます
以前、
アンカリング効果をご紹介しましたが
全く関係ない情報に判断が影響される
ということでした
参考:拙ブログ『あなたは操られている アンカリング効果』
今回のケースは
視線の移動という行動が
好みに影響を与える、という実験
ヒトの判断は理性的になされる
と思いがちですが、
意外にも、無関係なことに
操られている面があるのですね
(おしまい)
文:生塩研一
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