前回は
神経毒の中でも有名な、フグ毒の
テトロドトキシンを取り上げました
『フグ毒・テトロドトキシン ~神経毒からニューロンの機能をみる(3)』
今回は、鳥毒について書きます
毒をもった鳥、って
聞いたことないですよね?
それもそのはず
もっているのは、唯一の鳥
その鳥とは、ピトフーイ(1属6種)

Wikipediaより
ニューギニア島に生息します
毒素は、バトラコトキシン
その名は、ギリシア語で「カエル毒」
蛙:βάτραχος (batrachos)
毒:τοξίνη (toxine)
モウドクフキヤガエルから
単離されたので、カエル毒です
モウドクフキヤガエル
と片仮名で書くと
ふ~ん、という感じですが
漢字にすると、
猛毒吹矢蛙
そうです
現地の人々はこの毒を矢の先に付けて
狩りに使っるのですね
フグ毒のテトロドトキシンを
フグ自体が作っていないように、
このバトラコトキシンも
ピトフーイや猛毒ガエルが
作っているわけではないようです
まだよく分かっていませんが
ある種の昆虫(甲虫)が保有していて
それをピトフーイや猛毒ガエルが
捕食してバトラコトキシンを
取り込むのだとか
神経系への作用としては
Na イオンチャネルを
開きっぱなしにしてしまいます
チャネルが開くこと自体は
悪くないのに
どうして、毒なのでしょうか?
前回、前々回と復習しましたように、
神経系の構成要素であるニューロンは
細胞内がマイナスで
細胞外がプラスの電位になっています
Na+ イオンが流入して
ニューロン内がプラス電位になるのは
長い細胞膜の一部だけです
その領域がニューロンの細胞膜上を
伝わっていくわけですが
そのプラスになった領域では
Na イオンチャネルが内側から
フタを閉められ、
また、K イオンチャネルが開いて
K+ イオンがニューロンの外に出る
ということで、
ニューロン内はすぐにマイナス電位に
戻ります
このように、
すぐにニューロン内を
マイナス電位に戻して
次の興奮(情報)を待ちます
ご参考:拙ブログ
『神経毒からニューロンの機能をみる(1)』
『K と Ca の役割 ~神経毒からニューロンの機能をみる(2)』
Na イオンチャネルが
開きっぱなしになっていると
ニューロン内がプラス電位のままで
新たな興奮(情報)を運べません
そうですねぇ
Na+ イオンが流入する場所が
次々に伝わっていくのを
バケツリレーに例えましょうか
神経系が情報処理をするというのは
適切なときに水(Na+イオン)が
一杯ずつリレーされることです
バケツの中の水(Na+イオン)を
隣の人のバケツに
どんどん移していきます
隣の人に移すとバケツが空になって
次に機会に受け取れるわけです
バトラコトキシンはどうするか
バケツリレーで並んでいる
全部の人のバケツに
どんどん水(Na+ イオン)を
入れ続けさせてしまいます
そうする、
適切なときに水(Na+イオン)を
一杯ずつ運べなくなりますね
ということで、
神経系が機能できなくなる
麻痺するのです
前回ご紹介した
テトロドトキシンは
Na+ イオンがニューロン内に
入らないようにする
バケツリレーで言えば
それぞれのバケツにフタをして
水(Na+イオン)が入らないように
しているのです
テトロドトキシンも
バトラコトキシンも
Na イオンチャネルに作用するのは
同じですが、
テトロドトキシンはチャネルを閉めて
バトラコトキシンは開けっ放しにする
という点が違うのです
どちらも怖いですが
バトラコトキシンの方が
致死量は少なく、強力とされます
次回は
また別の神経毒について書いてみます
(つづく)
文:生塩研一
お読みいただきまして、ありがとうございました。
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