こんばんは。
先日のニュースによると、
文部科学省の有識者会合で、
霊長類の脳活動の全容解明を目指す
大型プロジェクトの概要が
示されたようです。
脳研究に対しては、日本に限らず、
欧州連合(EU)やアメリカも
かなりの予算をかけています。
これまでの研究でいろいろと
分かってきましたが、
まだまだ先は長いと思います。
さて、このテーマの前回
「脳の電気信号?その正体は。。。(2)」
では、
個々のニューロンの中で
情報(活動電位)が伝わる仕組み
について、軸索を例に書いてみました
情報をやり取りしていなければ
軸索の内側は負電位ですが、
正電荷のNaイオンが
外から流入することにより
軸索の内側が正電位に変わります
その正電位(活動電位)が
軸索内を伝わって行くのでしたね
それでは、活動電位が軸索の端まで
伝わった後はどうなるのでしょうか?
下の図をご覧ください

東京都神経科学総合研究所のサイトより
図では、左上の軸索から、
真ん中にある次のニューロンの
樹状突起に、情報を伝達する様子が
描いてあります
この、2つのニューロンの接点を
シナプスと言います
接点と言っても、
実際には少しだけすき間があります
具体的には、
20 ~ 50 nm(ナノメートル)
SI接頭辞はもう大丈夫ですね?
n(ナノ)は 10 の -9 乗
数万分の1mmと言った方が
分かりやすかったりして。。
いずれにせよ、
ほんのちょっとだけすき間があります
左上の方から軸索を伝わってきた
活動電位により、軸索の端にある
Caイオンチャネルが開きます
Ca(カルシウム)
すると、
外側にある大量のCaイオンが
軸索の中に流入します
中に入ったCaイオンは
シナプス小胞を軸索先端の膜
(シナプス前膜)に融合させます
シナプス小胞は、図では、オレンジの
三角形が入っている袋のことです
その三角形は神経伝達物質です
シナプス小胞がシナプス前膜に
くっつくと、中に入っていた
神経伝達物質はシナプスのすき間に
放出されます
神経伝達物質にはいろいろあります
アセチルコリン、グルタミン酸、
GABA(γーアミノ酪酸)など
シナプスのすき間に放出された
神経伝達物質は、
次のニューロンの樹状突起にある
受容体というタンパク質に結合し、
受容体が活性化します
受容体は、軸索の穴である
イオンチャネルと同じ働きがあり、
活性化すると穴が開いて
外にあるNa(ナトリウム)イオンが
樹状突起の中に流入して
その付近を正電荷にします
これを、膜が興奮したと言います
この電位を、専門用語ではEPSP
Excitatory PostSynaptic Potential
(興奮性後シナプス電位)
と言います
多数の樹状突起で発生したEPSPが
細胞体で統合されて
充分な電位になると活動電位が発生し、
それが軸索を伝わります
このシナプスは、相手先の
ニューロンの膜を興奮させるので
興奮性シナプスといいます
代表的な神経伝達物質は、
グルタミン酸やアセチルコリン
たくさん伸ばした樹状突起で
情報を受け取って、
細胞体あたりで統合して
次のニューロンに情報を
送るかどうか判断
判断といっても、
正電位の足し算と思ってください
送る場合は軸索に活動電位を
発生させます
これを、ニューロンが興奮した
と言います
その後は、
活動電位が軸索を伝わって、
軸索先端のシナプスで
次のニューロンの樹状突起を
興奮させて情報が伝達されます
ニューロン内は、電気的な信号
ニューロン間は、化学的な信号
ということですね
伝わるというときの、
「伝導」と「伝達」は
どう使い分けるかというと
軸索を活動電位が伝わるのを、伝導
シナプスを通して次のニューロンに
興奮が伝わるのを、伝達
のように区別して使います
まずは、このように、
ニューロンの興奮の連鎖
と考えるのが簡単でしょう
しかし、実際には
反対の情報を送ることもあるのです
つまり、情報を送ったがために、次の
ニューロンが興奮しにくくなる
これを抑制性シナプスと言います
どういうことでしょうか?
このことは、
上の図の右下に書いてあります
軸索の端から神経伝達物質が放出され
樹状突起の受容体に結合する
ここまでは同じです
違うのは
その神経伝達物質と受容体で、
抑制性の場合、外から負電位の
塩化物イオン(塩素イオン)が
流入して来て、それでなくとも
細胞内は負電位なのに、
さらに負にしてしまうのです
これを専門用語ではIPSP
Inhibitory PostSynaptic Potential
(抑制性後シナプス電位)
と言います
この状態になると、
近くの興奮性シナプスで
正電位のNaイオンが流入しても
全体として電位が正に近付きにくく
ニューロンが興奮しにくくなります
この抑制性の神経伝達物質は
GABA(γーアミノ酪酸)など
一つのニューロンが樹状突起で
受けるシナプスの数は
数千から数万と言われています
脳にはニューロンが千数百億個
もありますので、
配線の数はそのかけ算になります
さらに、
シナプスの興奮性と抑制性も
考えないといけません
脳の中にある
ニューロンのネットワークは
そのように想像を絶する複雑さなのです
そんな脳が重要な役割を
果たしているであろう、心
そう簡単に分かるわけありませんよね
(おしまい)
お読みいただきまして、ありがとうございました。
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