VS 悪性リンパ腫 -3ページ目

入院初日 その2

入院手続きが終わり入院棟へ向かいます。

呼吸器内科へ検査入院となりました。
フロアの婦長さんに挨拶をして4人部屋へ通されます。

部屋はそれぞれにベッド、テレビ、ミニ冷蔵庫、棚とついています。
カーテンでくくられていますので、音は筒抜けです。みんな静かです。

荷物を適当に置いて、担当の看護士さんが入院中の注意事項を説明してくれました。
初日から早々に検査があるとのこと。
部屋まで来てくれた母とはここでお別れです。

採血、レントゲン、心肺機能と受けてきました。
CTやPETは入院前のをそのまま使うのでしょうか。

暇つぶしの為に持ち込んだ本やゲームなど触る気力も無く日が暮れていきます。
初日なので病院内を探検して過ごしました。

入院中は6時起床、21時消灯ですので夜も早いです。
シャワーもトイレも4人で一つですので時間に融通が効きません。

どういうわけかシャワーは夕方まででしたが、
私はまだ元気に動き回れるので特別にいつでもいいと言ってくれました。
なるべく気を紛らす為に、外出許可が出たら外で食べ歩こうと決めました。

夜になり看護士さんが、明日は胸に針を刺して検査すると教えてくれました。
慣れない場所で検査の内容も気になり、ほとんど熟睡は出来ませんでした。

入院初日 その1

検査入院が決まってからというもの、仕事はもちろん何をやっても上の空です。
プライベートもストップ、やりかけていた事すべてを中断。

入院の為の前知識はもちろんありませんでした。
荷物の詰め込み、部屋の片付け、友人や会社への報告。

他にも不安だらけです。
どんな検査が待っているのか?
部屋は?食事は?
期間は?費用は?
何をして時間をつぶせるのか?
そうしている間にも病気は進行しているのか?
そもそも病名は?
仕事は?
夢や目標は?
…毎日気を許す暇もありません。

一年経った今も当時も先が見えない事には変化がありませんが、
特に初めての事だらけだったので苦痛でした。

入院初日は朝10時までに手続きを済ませます。どこの病院もだいたいそんな感じだそうです。
ラッシュに巻き込まれながらスーツケースを運び、不安そうな母を連れて病院へ行くのも辛いので、
弟が車で病院まで送ってくれました。2時間程かかります。

入院棟へ着き、手続き待ちの方患者さんやその家族が順番を待っています。
この人達も色んな怪我や病気と戦っているんだろうか…と思うと辛いです。
がんばるしかないと、何に対してかは分からないまま、自分に言い聞かせる日々が始まりました。

告知〜入院

入院を勧められたとは言え、こちらもすぐには判断がつかないのは当然の事。
先生が入院手続きを確認したところベッドに空きが無い為に、とりあえず緊急で検査を進めながら、ベッドが空き次第入院ということに。

検査とは、CTとPET検査。

CTは一度別の病気で受けた事があったので知ってはいたのですが、
PETとは…?
がん細胞が活性化している部分を突き止める検査。
糖分は細胞が活性化している所に多く取り込まれる事を利用した検査です。

レントゲンについて説明をしてくれる先生の様子から、ただの肺炎では無さそうというのは感じとれたのですが、可能性として「癌」という言葉を聞いたときは、誰かと間違っているんじゃないかと思う程に健康でした。
年明けのマラソンにも参加するつもりで、秋がきてそろそろ走り始めようと思っていた頃です。

検査も混んでいて、緊急の予約でも10日程先になったのですが、CTもPETも分けて別の日に受けなくてはならず、当然会社も休むことに。
そして検査から数日後に両親と診察へ。

診察室へ入ると重々しい雰囲気です。
先生は検査結果を見せてくれながら慎重に説明をしてくれました。

CTでは、何も無いはずの部分にカビの固まりの様な物が白く広がり、PETではその部分に反応あり。
腫瘍がくっきりと映っていました。
見る限り、癌の疑いが濃厚との事。

肺の上部ですが、肺癌では無く、両肺の間の縦隔という部分でした。
しかし大きさは心臓ぐらいあります。
どういう種類の腫瘍かはこれから入院して生体検査を経て治療に移るとのこと。


心配性な母が倒れたり無口な父が情緒不安定になったりはしないか私が不安でしたが、いわゆる、癌の疑いと宣告された時、父が下を向いてしばらくうつむいたままでした。
そんな父を見たのは初めてで、忘れることの無いシーンとなってしまいました。
母は後ろからずっと私の肩に手を当てていましたが、やはりその言葉を聞いたときは手に力が入り、小さくため息をしていました。

事実を受け入れる準備がただ出来ていない様な、
味わった事のない空気のままで入院など諸々の手続きについて説明を聞き部屋を出ました。

父は私の背中に手を当て、母は腕を組み、そんな事をされたことも無く戸惑いましたが、恥ずかしがって振りほどく程の力もありませんでした。

まだ何人も座っている待ち合い室を歩いて、この人には何か大きな病気が見つかってしまったんだ、と伝わってしまうには十分な光景だったと思います。

あと数年で定年となり第2の人生が始まる両親に、とても申し訳ない思いで一杯でした。

入院の説明を別室で受けてその日は病院を後にしました。
ひとまず、呼吸器内科へ入院して検査をすることになりました。

初めての入院です。