人魚の森のその奥に (1 (小説・翔潤・櫻葉・嵐) | なうのこたつ保管部屋

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   (story 1


そこは大きな森のずっと奥、まれにも人間が紛れ込まない場所にあった
  見渡せるほどの美しい湖 過去よりその場所を守る者はそこを


   紅
 の湖とよんだ

   古来より 人魚 が生まれる場所とされ
 
嵐のように愛するきみへ

 







   20年ごとに紅刻の儀式がおこなわれる
   その度に 紅の血を引く者は女児を出産し、命を落す


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   深い森の中をある美しい女性が息を殺しながら精一杯の力で
   木々に紛れ込み 丘の上を目指して走っていた

   その足取りを追うように大勢のたいまつが夜の森をこうこうと照らし
   すすんでゆく

   「紅を早く探さねば我がの民は滅んでしまう」

   同日、紅刻の儀式が 湖畔ちかくの祠がある洞窟でおこなわれ
   先代より名前を継ぎし 昔より同じ名前を与えられる 紅(くれない)と
   よばれる女性は伝えれる人魚の粉を飲んだ

   本来ならば、その者は儀式の通りその夜は祠で祈りを捧げ
   黒の人魚と契りを結び受胎しなければならない

   


  しかし 紅は
  己の生き様に疑問を抱き

  黒の人魚が現れる
  その時刻をまたず







  その地を守る水の民から逃げ出すと
  湖水へ身を投げ向こう岸へと自身の体力が続くかぎり泳ぎたどり着く

  時刻が迫れば白地の着物に着替え、黒の人魚を迎えねばならない
  役の者が衣装を届けに祠に近づき小さな炎をたよりに中を見渡せば

  紅の姿はない

  水の民たちは驚きと恐れを瞬時にいだく
  さなければ 紅より 伝わるものが無ければ身はその一族は滅びる

  そして紅も幼少の頃より 自身を育てた者により
  自身の運命は何度も聞かされ心得ていた

  しかし、紅刻の儀式が終われば黒の人魚の子をはらみ
  出産と同時にこの身は滅んでしまう

  紅はそれでも良いと自身でも承知し納得していた

  
嵐のように愛するきみへ


  しかし その気持ちにも揺れが生まれる
  森で 山菜やきのこを採取する時だけ外出を許され

  自由な時間を許される、とても大切な時間

 時に森の奥深くまで
  獲物を追い 静かな森にかすかな気配を感じて

  矢をはなつ者がいた

  手ごたえはあった しかし獲物が倒れていると
  そう思った場所には 黒髪の女性が足に先ほど
  男が放った矢をかすらせ血を流していた

  すぐに駆け寄り 女性を抱き起こ 声をかける

  目を互いに合わせば その女性の美しさに声を失う
  白い磁器のような肌、漆黒の瞳、血のような唇に

  傷は思ったよりは浅くすぐに薬草で手当てをして布をまく
  男は多紀と名のり それから互いに森で会えばともに
  見つめ合うだけの時を過ごす

  しかし、ある日 紅は多紀に3日後に迫った 紅刻の儀式
  の為もう会えぬことを明かす

  多紀は紅から離れることなど考えられないと、儀式の隙をみて
  逃すことを決意し紅に告げれば、掟だからと拒んでいた彼女も

  多紀のそばに居たいと2人で逃げることを誓った

  もう自身のすぐそばまで、たいまつが追ってきている
  足元も裸足のままでは捕まるのも時間の問題だ・・・・

  人魚の粉を飲んだ者はかならず1年以内に受胎しなければならない
  
  しかし、黒の人魚からの受胎を拒んだ
  紅は息をひそめて、もうダメかもしれない闇にまぎれて最期を覚悟する
  その時、闇の中から愛しい者の声がし自分を抱き上げると
  丘の上、水の民が未開の地とされる 臣の民が住む場所へと向った

  もう追っ手はこない
  その後 多紀は臣の長老に 紅が水の民とは告げず

  一族とは少し離れた場所で暮らし始める
  それは紅には夢のような生活で愛する者とともに過ごす大切な
  時間でもあった それから間もなく多紀の子供を身に宿し

  幸せな 時間をすごす2人
  出産を間近に控え、紅は安産にきくという薬草をとりに
  多紀の寝ている間に森にはいった

  
嵐のように愛するきみへ


 
 


  しかしその時を水の民は逃さなかった、森に入った紅を
  人気の無い場所で捕まえれば 自身たちの場所に入るなと
  告げるように 紅の履物そして人魚の護符を落とし連れ去る

  それは長老の使いの者に見つけられ多紀は水の民との
  接触を禁止する掟に背いたと 拘束されて 紅の名を呼び続けたまま
  幽閉されることになった

  水の民は 紅が身ごもっていることに驚き、そして安堵する
  例え黒の人魚を受けし子供ではなくとも人魚の粉よりの子を出産するのだ

  それから間もなく子供は生まれ
  紅は誰にも未明なまま姿を消した

  だが、ひとつだけ水の民が驚くことになるのは
  生まれたのは男児だったのだ
  古よりの紅刻の儀式では女児が必ず生まれいた為に

  しかし血は語り継がれたと淡い期待を抱き

  その後、子供は翔と名づけられ大切に育てられた
  
  



  翔は17歳になり
  時代は昭和を向かえる

  時間の波が村にも入り
  街へ仕事へ行くものも増え

  翔に期待される未来への可能性の為

  学業にも勤しませ
  自身もそれほど異質だと
  何も感じることなく成長期をすごした



  ただ 母がいないことだけ
  それだけは誰も教えてくれなかったのだ







    翔が村から少し離れた学校から帰宅すると潤の姿を見る

 




        潤は村の女が外の男との子を宿し
        生まれたが 

        女は村の掟にそむいたと
        村から追放され

        潤は翔より2つ年下だったので
        翔の相手になればと
        同じように育てられた








    「潤なんでお前、学校いかねぇんだよ」

    オレが潤に会えば必ず言うセリフに潤もまた同じように
    
    「別にいいだろ、ほっとけよ」 決まってそう言うから
    これは挨拶みたいなものだった

    それ以外では、潤との時間は穏やかで帰ると必ずオレのそばにいる
    まるで兄弟のように育てられたから 一緒にいるのが当然だった

    そして、あの日が来るまではただ日常は水のように流れ
    この場所もなにも変らなかった・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく