2016年 “出会って良かった児童文学” 自分用 | ほんとうのピコットさん

ほんとうのピコットさん

子どもの本屋「夢文庫ピコット」店主です。
タイトル「ほんとうのピコットさん」については、
http://ameblo.jp/pikot/archive1-200711.html をどうぞ!

 

本屋の仕事は、

たくさんの本の中から、お客様にぴったりの本をおすすめすることです。

そのために日頃から、新刊を読んで読んで読みまくります。

(ほかの仕事を後に回しても、ね。) むふっ。

 

でも、そうして読む新刊作品の中に、

ああ、この本を読むことができて幸せだった!と

仕事を忘れて感動するような、

印象深い作品に巡り合うことがあります。

これ、本屋で頑張る にひっ ←わたしへの、

本の神様のプレゼントかも、と、思ったりしています。女性

 

そんな訳で1月には、

昨年1年に読んだ中で1番良かったと思う読み物を、

全く個人的な好みでご紹介しています。

  2015年はこちら ・・・→

 

さて、2016年。

大豊作だったような気がします。(これまた、個人的に!)

 

 

 ✔ ぼくたちに翼があったころ 

     ー コルチャック先生と107人の子どもたち ー

     タミ・シェム・トヴ作 樋口範子訳 福音館 本体¥1,700.

    ※ 2015秋の出版ですが、わたしは2016に読んだのでした。

アウシュビッツに送られる前の(そのことには触れてありませんが。)

コルチャック先生と孤児の家の子どもたちの自立を目指す物語。

 

 

 ✔ ジョ-ジと秘密のメリッサ

    アレックス・ジ-ノ作 島村浩子訳 偕成社 本体¥1,400.

性同一障害の少年(少女)の葛藤の物語。

このテーマをこんなに柔らかく暖かに書けるなんてすごい。

 

 

 ✔ ぼくのなかのほんとう

    パトリシア・マクラクラン作 若林千鶴訳 リーブル 本体¥1300

おばあちゃんの家の森での不思議な体験を通して、

しっくり行っていなかった母との関係に、向かい合えるようになる少年の物語。
 

 

などなど。

良い作品の多い年だったのか、

わたしのセンサーがよく働いたのか、

とにかく、これという1冊を選ぶのに候補が多くて嬉しい悲鳴でした。

 

個人的には、動物が存在感を示す物語に特別に惹かれます。

犬 黒猫 フォクすけ バキッ キリン ブエナビスタ くま  ・・・ ほか、何でも。

なので、今回も、ぼくのなかのほんとう との間で迷いましたが、

結局、今回のわたしが選ぶ自分用の1冊は、こちらに。やじるし(翔)

 

 

 

 

レイン

アン・M.マ-ティン作  西本かおる訳 小峰書店 本体¥1,500.

 

 

主人公のローズは発達障害の女の子。
数や言葉、そしてルールに対する強いこだわりや、

パニックの発作といった生きにくさを抱えながら、

変わり者のパパとの暮らしを健気に生きています。

ローズにはママがいないのです。

ローズの楽しいとは言い難い学校生活を支えてくれるのは、

支援員のミセス・ライブラー。
そして、彼女の生活を近くで見守り、寄り添い、

困難を乗り越えられるよう手を貸してくれるのが、

パパの弟であるウェルドンおじさんでした。

そんな暮らしの中、ある雨の夜にパパが迷い犬を連れて帰ります。
レインと名付けた犬は、ローズの大切な家族になりました。
大きくて、黄色い毛で足の指7本が白くて、賢いレイン。

ところが嵐の夜にレインはいなくなり、

ローズは初めて寂しいという感情を体験します。
そして、ウィルドンおじさんに励まされ、

ローズは自分の力で動物シェルターに収容されていたレインを見つけます。
けれどもそのシェルターで、ローズは、

元の飼い主がレインを探しているいる事を知るのです。

 

 

 

 


このように粗筋を思い返してみると、
お話は、結末に向かって真っ直ぐに進んでいるのがわかります。
でも、実際にはさらにいくつかのストーリが同時進行していて、

読んでいる間、いくつものお話の筋がよじれ、絡まるのを感じながら、

ローズ(である わたし)には、まるで暗闇にいるように手探りで、

その物語を一歩一歩進むような息苦しさがありました。

児童文学ですから、この作品も結末はハッピーエンドです。
ハッピーエンドですが、
この作品のハッピーエンドにはいくつかの苦さが含まれています。

まだ幼いローズですが、ただ甘いのみではない、

ビターチョコレートのようなハッピーエンドを受け取ったように感じます。

 

今回、迷った末にこの本を選んだのは、
そのほろ苦さゆえだったかもしれません。

大好きだけど、でも、
もう一度読み返すなら、ずっと先にしよう・・・という気持ちにもさせる、

その意味でも印象深い一冊です。