「ないね~~~。 こんだけ探してないんだからここにはないかな、」
香織も諦めかけた。
「ないのかなあ・・」
暖人も地べたにお尻をつけて座り込んでしまった。
樺沢はため息をついて、三つ葉を1本引っこ抜いた。
「いいじゃん、三つ葉で。」
暖人に差し出した。
「え~~? こんなにあるのに~。 いみないよ~~。」
「いいんだ。 うちは3人だからさ。 な?」
笑顔の父に思わずそれを手にした。
「なんか無理やり、」
香織は笑ったが
暖人は
「そっかあ・・・・。 そうだよね。 うちはぼくと、お父さんと、お母さんと3人だから・・・・。 三つ葉だ、」
嬉しそうにそれを手にした。
笑顔の二人だったが
ハッとして香織と樺沢は同時に目を合わせた。
お母さん
樺沢と結婚して8カ月。
ずっと今までどおり『かおりちゃん』と彼女のことを呼んでいた。
別に『お母さん』と呼ぶことを強要しなかったし、それでもいいと思っていた。
「よし! これを押し葉にするぞー。 ね、お母さん、これもってて!」
暖人は張り切って自分のタオルを香織に手渡して、バッグの小さなポケットにそれを入れてチャックを閉めた。
彼が意識をしていたのかどうかわからない。
それでも
こんなに自然に『お母さん』と呼ばれる日がくるなんて思わなかった。
香織が感無量の表情をして涙を堪えていることがわかった樺沢は黙って背中を優しく叩いた。
何かを言ったら
泣いてしまいそう
香織は黙って頷いた。
「よし! 昼はお父さんがチャーハンを作る!」
樺沢は勢いよく立ちあがった。
「お父さんがチャーハンつくるとさあ、台所すっごくきたなくなるんだよ~、」
暖人は笑った。
香織は鼻をすすって笑顔を作り
「そうそう。 ちゃーんと後片付けもしてくれないとね~~、」
暖人の両肩に手を置いた。
春の日差しが
まぶしいくらいで。
まだまだ冷たい風が吹いているけど
3人の心はあったかかった。
初めて香織を『お母さん』と自然に呼んだ暖人。 香織はこれまでのことを思い出し胸が熱くなります・・
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