稲荷町の駅から歩いて10分。
走れば7分くらいでつきそうだったが、
香織はもう足が空回りしそうなほど、走ってしまった。
自宅マンションのエントランスに
小さな影が見えた。
香織はその姿を見て立ちすくんでしまった。
「・・ハル!!」
もう
気持ちをぶつけるかのように
大きな声でその小さな影に呼びかけた。
「・・・かおりちゃん、」
暖人はリュックをしょったまま香織のマンションの入口の階段で座り込んでいた。
香織はもう慌てて
彼に駆け寄った。
「・・・も~~~~~~。 心配したじゃん・・・・・。」
怒るよりも
何よりもハルが無事だったことが嬉しくて、ぎゅっと彼を抱きしめた。
「・・・ハル・・・・」
ホッとしたら
涙が出てきた。
「え・・・? 香織のところに・・・・」
樺沢は香織から連絡を受け、腰が抜けそうになるほどホッとした。
「学童クラブの帰りに・・・電車に乗ってきたみたい。 あたしが帰るのをずっと外で待っていてくれて・・・・」
暖人は香織の部屋に上がって、喉が乾いていたのか
美味しそうに冷たい麦茶を飲んでいた。
「電車に・・乗ってって・・・。 ハルはひとりで電車なんか、」
樺沢はまだ信じられなかった。
「1~2度だけどカバちゃんがいないときにウチに連れてきたこと、あったから。 学童クラブの帰り道に地下鉄の入口が見えて・・・。 リュックのポケットにこの前出かけたときにお菓子を買った残りの小銭が入ってたんだって。 それで・・・切符の買い方も駅員さんに聞いて・・・」
香織は暖人から聞いた話を樺沢に伝えているだけで
胸がいっぱいになってしまった。
「・・・今晩、ウチに泊めてもいい? 明日、あたしが送っていくから。」
「・・うん、」
まだ信じられなかった。
「あの人の、家に・・・・」
母も信じられないようにヘナヘナとイスに座り込んだ。
「わけは・・わからない。 だけど、今夜は彼女が泊めるっていうから。 もう少し・・・待っていよう、」
樺沢も小さな声でそう言った。
暖人が家族に黙って
香織の元に一人で出かけていった
その事実は
少なからず樺沢家の人々はショックを受けた。
暖人は香織のマンションまでひとりで来ていました…
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