樺沢は冷蔵庫からペットボトルの水を出してきて、少しのどを潤したあと
「ハル、今日はありがとな。 おれ、会社に電話すんの忘れてて。 ハルが電話してくれなかったら、お父さん無断欠勤するとこだったよ、」
つくづく暖人に礼を言った。
「お父さんでんわできそうもなかったから・・・・。 けいたい見たら『ホクト』って書いてあったから。そこにでんわしたらね。 ・・・うーんと・・・。 おじさんみたいな人がでた。」
暖人は何でもなかったかのように言ってから、またテレビに目を移した。
「・・・おじさん・・・・・」
樺沢はそこにあった自分の携帯の履歴をナニゲに見た。
発信履歴に
『ホクト 社長室直通』
の文字を見た時に、血の気が引いた。
ここにいる
『おじさん』
って!!!!
もう電話に出た人間が誰だかが
想像がついてしまって、
風邪のせいでなく青ざめた。
「アハハハっ!! 社長に~~?」
香織は会社の帰りにケーキを買ってきてくれて、暖人は美味しそうに食べ始めた。
「・・・まさか。 直通にするとは・・・・。」
樺沢はガラガラの声で首をぐるっと回した。
「まあまあまあ。 息子の必死な思いは伝わったと思うよ。 ハル~~、よくやったね~~~。 お手柄だよ~。」
香織は暖人の頭を抱きよせるように撫でた。
「あ~~、でも。 おかげで熱、下がって来た。 明日は行けるな~。」
伸びてしまったひげを撫でた。
「ちゃんと治した方がいいよ。 社長には前についててくれた秘書課の課長が代わりについてくれてるんだから。」
「熱出すなんて、大人になってから初めてだよ。 ちょっと出るだけでフラフラだな。 情けない・・・」
「お父さん、ゆっくりやすんだ方がいいよ。 いっつもいそがしいんだから、」
気遣ってくれる暖人の頭を優しく撫でた。
自分が子供を『養ってる』って思ってた。
自分が何とか子供を一人前にするために施してるんだと思っていた。
それは思いあがりで
自分も子供に育てられている。
『親』にしてもらってる。
二人で『助け合って』生きている。
「は? 個人面談? これから?」
「そーなんだよ・・・。 社長に昼休みの間だけちょこっと時間貰って。 今からハルの学校に行ってくる、」
慌しく仕度をする樺沢に志藤は言った。
「たいへんやな、」
「おれだけ日にちが取れないみたいでさ。 先生も今日特別に面談の日を作ってくれたから・・・・。 んじゃ、ちょっと行ってくる、」
バタバタと出て行った。
「すごいなあ・・・・あいつは。」
そこにいた香織はそんな志藤のつぶやきに
「なんだかね。 ハルが学校に行くようになってからますます張り切っちゃって。 忙しいのに学校の行事もなるべく自分がって。」
苦笑いで答えた。
「マジ、おれよりもいいお父さんやんか。 ゆうこに知れたらめっちゃイヤミ言われそう・・・・」
冗談ぽく言ったが
樺沢の奮闘ぶりには頭が下がる想いだった。
暖人が直接社長に電話をしたと知った樺沢は青ざめます…(@Д@; それでも父親として暖人のために頑張ります…
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