「・・思い出したんですけど、」
ゆうこが子供部屋から戻ってきた。
「あたしの中学校の先輩で。 『保育ママ』をやっている人がいるんですよ。」
「保育ママ??」
「普通のお宅で子供を面倒見てくれるって・・・・行政が支援していて、子育て経験のあるお母さんがお子さんを預かってくれるんです。 よく保育園の空き待ちをしているお子さんを預かってるって言ってました。」
「え、ほんと? ねえ、ちょっと相談してみたら? とりあえず保育園にはひきつづき入園申し込みをしておいて。 その人、どの辺の人なの?」
「近所です。 そうですねえ、たぶん・・・樺沢さんのところなら自転車でも10分くらいで行けますよ。 あとで電話してみます。」
ゆうこは言った。
「ほらね~~~。 ゆうこちゃんはこの辺の人だし、子育て事情にも詳しいから。 もっとさっさと相談しておけばよかったのに。」
香織は樺沢の背中をドンと叩いた。
「もう、パニくっちゃって! どーしていいかわかんなかったんだよ・・・・」
「しゃあないなあ。 もう・・・」
志藤は実際この二人のツーショットを見たのは初めてだった。
なんだかんだ言って、この二人が付き合っていることは社内でもあまり知られていない。
それにしても。
カバがコブつきになってしまって。
姐さんはどうする気やろ・・・・
やっぱりそっちが気になってしまった。
「ママ、みてー。 はるとくん、おりがみじょうずだよ、」
ひなたは暖人に作ってもらったおりがみを自慢げに見せに来た。
「ほんとだー。 ちょうちょだね。 暖人くん、上手なのねえ・・・・。」
ゆうこは感心して子供部屋のほうに足を運んだ。
暖人は嬉しそうにはにかんで笑った。
「すっごく器用なの。 洗濯物畳んだりするのもね。 ちゃーんとできるし。 はみがきとかも言われなくても自分でちゃんとするし。」
香織のほうが暖人を自慢した。
「・・・奥さんが。 すっごくちゃんとこの子を育ててたんだなあって・・・・思う。」
そしてポツリと言った。
話を聞いた時はひどい母親だ、と思ったりもしたが
暖人が素直でお行儀のいい姿を見ていると
きちんと育ててきたんだなあ
今はそう思える。
「はるとくんのかばん、みせてー。 なにはいってるの?」
ひなたは暖人が持ってきたリュックに興味を示した。
樺沢はわが子とはいえ
なんだかどうしても隔たりが拭えずに
もちろんきちんと面倒を見ているつもりだが
『父親』として暖人が自分を認めてくれているのかが不安だった。
まるでヨソの子を預かっているだけのような感覚に陥ることもある。
「ひなたってば、ムリ言ったらダメよ。」
ゆうこは窘めたが、
「いいよ、」
暖人はリュックを開けて中を取り出し始めた。
素直でいい子の暖人に香織は樺沢の別れた妻を思います…
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