そして父の死から4年。
拓馬と詩織は幸せに暮らしていましたが・・・・
「おかえりなさい、」
出迎えてくれた彼女はいつもと少し違う気がした。
「今日はちょっと寒かったですねー。 先にお風呂にしますか?」
なんだか表情が明るい。
「・・なんか、あったの?」
拓馬は思わず詩織に聞いてしまった。
彼女は、ふふふ、と笑った後
「・・・今日。 病院に行ってきたんです、」
嬉しそうに拓馬を見上げた。
「え、病院?」
「・・・赤ちゃんが。 できました、」
そして少し恥ずかしそうにうつむいた。
「えっ・・・・・」
一瞬、息が止まりそうなほど驚いた。
結婚して5年目に入って。
子供がなかなかできなかった。
とりわけ友永家に婿に入った拓馬は一日でも早く跡取りを、と別にプレッシャーを掛けられていたわけではないが密かに悩んでいた。
あんな思いで婿に出してくれた父や母にも申し訳ない気がして。
「・・ほんとう・・?」
まだ信じられなかった。
「ええ。 7週目に入ったところだそうです。」
じわじわと嬉しさが湧きあがって来た。
「そーかあ・・・・・。」
彼女の肩に両手を置いてしみじみ噛みしめた。
詩織もまた拓馬が子供ができないことで肩身の狭い思いをしていたのではないか、と気に病んでいたので
本当に嬉しかった。
いや
それよりも彼との愛の結晶がようやくやってきてくれたことが何よりも嬉しい。
「・・・白川のお父さまに報告に行かなくちゃ。 きっと心配されていたと思います、」
「・・しーちゃん、」
こうして自分の家族のこともいつも一番に考えてくれて。
「・・ありがとう。 ありがとう、」
そっと彼女を抱きしめた。
「え~、ほんと? たーくんとしーちゃんに赤ちゃんが産まれるの?」
ななみはモーリスの相手をしながら嬉しそうに言った。
「まだまだ先だけどね。 冬ごろだよ、」
「赤ちゃん産まれたら、抱っこさせてね、」
「ええ、」
父の仏前に嬉しい報告をさせてもらい、母もホッとしたようだった。
「きっとじじも喜んでるよねー・・。 たーくんとしーちゃんの結婚式の時。 泣いてたもんね。 ななみ、じじが泣いているの初めて見たもん、」
ななみの言葉でみんなあの時のことを思い出した。
車いすでほとんど動けなくなっていた父だったが
最初から最後まで涙、涙だった。
「きっと。 嬉しくて泣いてたんだよね。 ね、おばあちゃん。」
「そうだよ。 じじは悲しい時やつらい時だって泣いたりしない人だったんだから。 嬉しくて、幸せだったから泣いたんだよ。」
拓馬の母はななみの頭を撫でた。
最大の親不孝をしてしまった、とずっと心のどこかで思い続けていた。
自分たちの結婚式で見せたあの涙が
『幸せの涙』
だったとしたら
ひょっとして
今
天の上で父は
気恥ずかしそうに涙を見せているんだろうか。
拓馬は少しだけそんな父の姿を想像した。
そして現在。 ようやく二人の元に新しい命がやってきてくれました。 拓馬はやっと父の想いに報いることができた気持ちでいっぱいになります。
長い間お送りしてきましたpart9、これにて終了となります。
読んで頂いてありがとうございました。
明日からのことについてはのちほどアップいたしますので、よろしくお願いします。
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