Overflow(17) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・たーくん、とおくにいっちゃうの?」



ななみはしょんぼりとしてゆうこの母のエプロンの裾を引っ張った。



「え? ・・まあ・・・今までみたいにはしょっちゅう会えないかもしれないけど。 遠くになんか行かないよ。 ただ。 あのお姉ちゃんのおうちの人になるんだけどね、」



母は優しくななみの頭を撫でてそう言った。



「え、おねえちゃんのおうちのひとに?」



「ななみは小さいからまだよくわからないかもしれないけど。 『白川拓馬』じゃなくて『友永拓馬』になるんだよ。 名前が変っちゃうんだよ、」



「・・・このまえ、たーくんがちょっといってた・・・・」



「ななみのお母さんだって『白川ゆうこ』って名前だったけど。 今はパパと結婚して『志藤ゆうこ』になったんだよ。」


「およめさんだけがなまえがかわるんじゃないの?」


「・・普通はそういうことが多いんだけど。 お姉ちゃんのおうちはね、子供がお姉ちゃんだけだから。 お嫁に出すわけにいかないんだよ。 うちは。 和馬もいるし、こうやってななみたちも側に住んでくれてるしね。 寂しくないから、」


「え、たーくんがいなくなっちゃったら・・・さびしいよ、」


ななみはもう泣きそうだった。



「・・・おばあちゃんも。 寂しいけどね。 でも・・・拓馬は幸せになるためにこの家を出るんだから。 嬉しいよ。きっとお姉ちゃんの家族も・・拓馬を大事にしてくれる。 そうすることがみんなの幸せだから、」



小さな手を取りながら


母は自分にも言い聞かせるように優しく言った。





三が日が過ぎた後


父はまた入院することになった。



今回は抗がん剤の治療ではなかった。


体中の全ての機能が落ち始めて


普通の生活が難しくなってきていた。



すでにガンはさらに転移を繰り返し


父の身体を蝕んでいた。




拓馬と詩織の式が3月中旬に決まった。



千睦流の関係から準備が必要な披露宴は夏に行われることになったが


詩織の母の希望で式だけはできるだけ早く挙げることになった。


それも


気を遣ってのことか、挙式は白川家の近所の浅草神社で執り行うことを


喜和子は決めてくれた。




あとは


父に一日でも命を永らえて結婚式に出てもらうように祈るだけだった。




それからは


本当に怒濤のように時間が過ぎて。



友永家は友永家で


詩織の結婚相手について周囲に納得してもらうまで大変だったんだろう、


と拓馬は思っていた。



どうしてそれが推測なのか。



喜和子も詩織もそのようなことを全く自分たち家族に背負わせることがなかったからだった。


自分を婿に取る、ということに関して


白川の両親に最大限の配慮をしてくれたんだと思う。




「・・紋付はちゃんと虫干ししてあるか、」



母が父の病室を訪ねるたびにそう言われた。



まだ挙式までひと月も先だというのに。



「大丈夫。 ちゃんとしてあるから。 まだ少し寒いかもね、」



なんとか


二人の晴れ姿を見て欲しい。



家族はそれだけを祈った。



父に二人の晴れ姿を見てもらいたい…周囲の人達の願いは・・



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