やっぱ。
オヤジはオフクロの『味』にホレたのかな。
拓馬は今朝の話を思い出していた。
オヤジだけじゃなく
おれたち兄妹みんなオフクロのメシが大好きだ。
外食をしたり店屋ものを取ることもほとんどなかった。
家で食べる母の料理が大好きだった。
「どっちにしようかなあ・・・。どっちもかわいいけどな~~~、」
横ではひなたが拓馬がプレゼントしてくれたかわいいクリスマス柄のハンカチを並べて悩んでいる。
「ななみとひとつづつでしょ。 あんたが先に決めたらずるいじゃない、」
ゆうこがたしなめると
「え~~~、でも! どっちも欲しいんだもん!」
「わがままねえ、」
「ひなた、選ぶのが苦手なんだよ。 いつも悩んじゃう。 わがままじゃなくて、『正直』っていうんだよ、」
屈託なく笑うひなたを拓馬はぼんやりと見つめた。
ハンカチを両手に取り、真剣に悩むひなたの姿に
何だか心にひとすじの光が差した気がした。
どっちも欲しいんだもん
大人になればなるほど
口にできない言葉だ。
わがままじゃなくて正直
小学校3年生の子供なのに
人の心の本質がわかっているようで。
ぼんやりとした拓馬に
「・・・どうしたの?」
ゆうこは怪訝な顔をした。
「いや。 ・・ひなたは深いよなァって。」
「え?」
「なんでもない。」
と、また箸を動かし始めた。
欲しいものを手に入れるためには
たくさん我慢をしなくちゃいけないって
子供のころから思ってた。
詩織は自分の気持ちを拓馬にぶつけることができて
これからのことの不安よりも
前向きになれた自分が嬉しかった。
プロポーズの返事を
静かに
静かに
待つだけだった。
クリスマスが過ぎたら
年の暮れまではあっという間だった。
『どっちもほしい』 ひなたの言葉に拓馬は何か心に光が差したように…
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