「拓馬さんに恋してからの私は・・・きっと違う人になってる。」
詩織は拓馬に寄り添いながらつぶやく。
「こんなに人を好きになってもいいのって。 自分でも呆れるくらい。」
「おれも。 今まで・・つきあってきた女の子がいないわけじゃなかったけど。 結婚しようなんて気持ちになったことなんかなかった。 しーちゃんといると・・遠い将来まできっと隣にいるって・・想像できる。 おれは大工だし、友永の家にとっていい相手なのかって思うけど、」
少しだけ弱気なことを言う拓馬に
「もうそのことを言ったら、許しません、」
詩織は少し膨れたような顔をした。
「え・・」
「大工さんのどこがいけないんですか? 私は拓馬さんやお父さまのお仕事は本当に立派だと思っているのに。」
彼の手をこらしめるようにぎゅっと握った。
力仕事でマメができたゴツゴツの手のひら。
仕事中に怪我をしたのか、指や手の甲にも傷があって。
それでもスッと伸びた指ときれいな爪は、彼のその繊細な作品を生み出す源のようで
全てが愛おしい。
詩織はその手にそっとキスをした。
「しーちゃん・・・」
「あなた以上の人はいません・・・」
ポロっと涙が零れ落ちた。
拓馬はまた彼女をぎゅっと抱きしめた。
もう
どんな障害があったって
絶対に彼女と一緒になる!
その時の拓馬は
自分たちには明るい未来しかないと
信じていた・・・・
「もう本当にゴハンが美味しい・・・」
詩織は朝食で出された和食を口にしてしみじみと言った。
佐々木が作ったあったかい味わいの食器にぴったりの美味しい食事。
こんな趣が大好きな詩織はため息がでるほど幸せだった。
「玉子焼きがうまいんだよね~~。」
拓馬もこうして詩織と寄り添っていられることが幸せで
朝からテンションが上がりっぱなしだった。
昨日より彼女との距離が間違いなく縮まって、
身も心もしっかりと結びついた気がした。
ラブラブな時間を過ごす拓馬たちの一方で。
「ちょっと! おばあちゃん! たいへん! じじからけむりがでてるっ!!」
白川家にやって来たひなたは慌てて台所にいたゆうこの母のところにやって来た。
「ハア? けむり?」
「なんかもえてるんだよお、」
その意味がわかって
「あれは。 お灸って言ってね。 火をつけてその熱で痛いところを治すんだよ、」
と笑った。
「え~~~? そうなの~? なんか部屋じゅうヘンなにおいだよお・・・」
ひなたは鼻をつまんだ。
「おじいちゃん、この間から腰が痛いっていってね。 まったく病院に行かないから・・・。 ひなたからも病院行けって言ってよ、」
「も~~、しょうがないなァ、」
その時、
「熱い! 熱い! おい!! 早く取れ!!」
居間から熱さに耐え切れなくなった父の大声が聞こえて
二人は顔を見合わせて笑ってしまった。
もう幸せ一杯の二人でしたが、運命は意外な方向に向いて・・・
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