誰もいない休憩室は痛いほどシンとしていた。
結城は黙って有吏に缶コーヒーを手渡した。
「・・すみません・・・、」
彼の目が見れなかった。
「・・おまえが京都に行ってるとき。 部屋に泊まった、」
結城は、あっさりとそう言った。
有吏は目だけを彼に移した。
「・・・おれ。 あゆみさんにプロポーズした。 結婚して欲しいって。」
衝撃の告白にその目を見開く。
「結城さん・・・・」
「でも。 結婚はOKしてもらえなかった、」
結城はコーヒーを口にした。
「え・・・・」
「もちろん借金のこと。 それと・・・おまえのこと、」
結城は何も隠さずに彼に言った。
「おれ・・?」
思いもかけない言葉だった。
「彼女にとって。 一番はおまえなんだ。 それ以上におれがなれないってことだと思う、」
「な・・・」
言葉が続かない。
小さく首を振った。
「だけど・・・もうおれはそういう彼女のことが全部好きだ。 ずっと一緒にいたい。 ずっと一緒にいるためには・・結婚しかないから。 ・・・まあ、なんだかんだ言ったけど。 おれは最初からあゆみさんのこと好きだったし。 なんでこんなにアプローチしてもわかってくんないんだろうって思ってた。 で・・おまえが。 ウチの両親に向って『保証人になってください』って土下座するの見て。 なんか気持ちが揺さぶられちゃって。 やっぱ自分が彼女を守りたいって思えた。」
缶コーヒーを持つ手が震えてしまった。
「彼女がどんだけおまえのこと大事にしてるか・・・痛いくらいわかるから。 彼女も・・・おまえには何も言えなかったんだと思う、」
結城はポケットからタバコを取り出してくわえた。
それに火をつけようとしたとき、いきなり有吏がそのタバコとライターを奪った。
もうヤケになってそれに火をつけて、思いっきり煙を吸った。
初めて吸ったタバコは
あまりに刺激が強くて、ものすごいむせてしまった。
「おい、大丈夫かよ・・・」
咳き込んでも咳き込んでも有吏はタバコを吸い続けた。
結城はその異様な光景を傍観してしまう。
「・・・やっぱり・・・おれがいるから。 姉ちゃんは・・幸せになれないんだ・・」
咳き込んで出てきた涙と
感情が昂ぶって出てきた涙が一緒になって。
「おれ・・どんだけお荷物なんだ・・・・。」
情けなくて
どうしようもなかった・・・
姉が結婚に踏み切れないのは自分のせいだと思う有吏は・・・
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