Today and tomorrow(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

ひと目で


ここが結城の部屋であったことがわかってしまった。



思わず襖を開けて中に入ってしまった。



ピアノに関するトロフィーや賞状やメダルがたくさん飾ってあって


整頓されたデスクには高校生の問題集・・・


主がいなくなっても


掃除がきちんとされていて


今でも誰かが生活しているかのようだった。



部屋の隅のピアノ。



少年の頃、彼がこれを懸命に弾いていた姿を想像する。



たくさんの思いがこの部屋に詰まっているようで


胸がきゅんとした。




その時



「見つからなかった?」



突然、後ろから声を掛けられて心臓が飛び出そうだった。



泉美が微笑んでいる。



「すっ・・・すみません!!! ファイルはあったんですけど・・ここの部屋の襖が・・少し開いていて・・・つい、」



慌てて何度も頭を下げた。



「いいのよ。 ここは比呂くんの部屋。 もうここに泊まることさえないけど。 掃除だけはいつでもしているの。」


泉美はその部屋に入って愛しそうに机を撫でた。



この人と


彼が。



またそれを思い出してしまい、あゆみは動揺が顔に出ないように唇をかみ締めた。



「・・・結城さんは・・・。 どんなお子さんだったんですか・・」



気持ちを切り替えるようにあゆみは泉美にそう訊いてしまった。



「え? 比呂くん? ・・もうほんっとかわいかったわよ。 幼稚園くらいの時は女の子みたいで。 色が白くて目がぱっちりで。」



彼から見せてもらったあのアルバムの写真を思い出していた。



「・・姐さん・・・比呂くんのお母さんは。 きっとこんなかわいい子を遺して逝かなくちゃならなくて・・どれだけ心残りだったかって。 そう思うたびに涙が出て。」



泉美も思い出したようにしんみりとして言った。



「それでも。 お母さんを亡くしてからも、比呂くんは明るくて、無邪気で。 男の子らしい男の子に育って。 けっこうやんちゃでね。 ピアノをしていたからそんな悪さはしなかったけど、たまに主人が呼ばれて学校に行ったり、なんてこともあったわ。」



「・・何だか。 意外ですね・・・。 今の結城さんからは想像がつかない、」


あゆみはふっと微笑んだ。



「・・そうねえ。 ほんと。 素直な子だったんだけど・・・・」


泉美は今の結城を否定するような言葉を発してしまったことにすぐに気づいて



「・・・あの子は。 頭のいい子だったから。 勉強はすごくできたのはもちろんなんだけど、人の気持ちを敏感に察知するナイーブなところもあったし。 お母さんに早くに死なれて、悩んだときに相談する人もなかなかいなかったし、」


と、庇う言葉を付け加えた。



その少し慌てたような口ぶりが


また色んなことを想像させるには充分で。




「比呂くんが・・幸せになることがあたしの望みでもあるから。 亡くなった姐さんのためにも・・・。」



泉美はひとり言のようにそう言ってまた部屋を見回した。




たぶん。


この人も胸が痛くなるほど悩んだだろう。




同じ女として気持ちがシンクロしてしまった。



泉美と結城のこれまでの絆を思うあゆみでしたが・・・



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