「まあ。 余計なお世話かもしれないんですけど。 何だか・・・構ってしまうというか。」
結城は頬杖をついて、少し気だるそうに言った。
どう考えても
それ以上の感情があるのがみえみえで。
玉田はいつものクールで内面を見せない彼には珍しく、その思いがダダモレな気がしていた。
「・・・もちろん、もう・・・『あの人』に対してそういう気持ちはないけれど。 ・・なかなか前に進めないんですよね、」
そして、こんなに自分の弱さを見せる彼にも。
「まだ『罪』が重くのしかかっているんじゃないの、」
玉田はそれを気にした。
「もう忘れるのが自分のためであり、家族のためであることはわかってるんです。 でも・・・人を好きになることを考えようとすると・・・『あんなことしておいて』と思ってしまうんです。 以前のおれは・・その繰り返しでそういう感情を抱くことをやめてしまっていましたから、」
なんだか
すごくかわいそうになって。
「間違いをしてこなかった人間なんかいないよ。 それが大きなものでも小さなものであっても。 それが本当のおまえなら・・・その全てを受け入れてくれる人が・・きっと現れる。 繕った上の幸せなんか。 いつか綻んでしまう。 おれも・・まあ・・・・人から見たら『大恋愛』でウチの奥さんと結ばれたって言われるんだけど。 まあ、結婚してみたら考えもしなかったことでケンカをしたりなんかしょっちゅうだし。 相手を理解できないこともたくさんあった。 子供が生まれたら、子供のことで意見がぶつかったりもあるし。 でも、お互いの全てをわかっているから、どこか深いところで繋がっていられると思ってる。 上辺だけの絆だったら・・・こうやって夫婦って壊れちゃうのかなって思うし。」
玉田は優しく諭すように結城に言った。
「まともな恋愛。 いっこもしてこなかったからな~~~~。」
つくづくそう言う彼に
「モテるヤツにそれ言われると。 おれなんかどーしていいか、わかんないって。」
笑った。
「いや。 恋愛はね。 『数』じゃなくて『質』ですよ。 おれなんか最低・最悪ですからね。」
結城はそう言った後、ふっとあゆみのことを思い出した。
「『おれが守ってやる』なんて気持ち。 ・・今まで一度だって思ったことなかった・・・・」
そしてまたひとりごとのようにつぶやいた。
まあ。
好きになっちゃってんだろうなあ・・・
玉田はそう思ったが
それを口にしたら、きっと彼が困ってしまうことが手に取るようにわかってしまって
口をつぐんだ。
恋愛なんか
顔を洗うのと同じくらい簡単だ
と言わんばかりの完璧なイケメンが、本当は不器用で自分の気持ちを表に出すのが苦手な
普通の青年のように思えて。
「何だか。 玉田さんには・・言わなくてもいいことまで話してしまいますね、」
結城はそう言って少しだけ寂しそうな笑顔を見せた。
「え・・・『ゆうき』で・・?」
有吏は驚いて茶碗を持つ手が止まってしまった。
「・・ウン。 ほんと旦那さんも女将さんも・・きちんと考えてくださって。 確かに『ルシエ』よりもお給料は下がっちゃうけど、その代わり行儀見習いをさせていただいているつもりで。」
あゆみは対照的にパクパクとごはんを食べていた。
「借金のことも。 少し見直したほうがいいんじゃないかって。 弁護士さんにも相談して下さるって・・。」
姉の話を聞いているうちに
すごく
すごく
胸が苦しくなった。
結城は『本音』を少しだけ玉田にさらけ出します。 そして有吏はあゆみから『ゆうき』で終日仕事をすることを告げられて・・・
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